解放軍の敗北
私達は強襲された、吸血鬼派のエリアで医療キャンプを行い、
負傷者の手当を行っていた。
「いつ、敵襲がきてもおかしくないエリアだな、テツノスケ。」
「ショウ、大丈夫か最近顔色悪いぜ。」
それもそうだ。まともな神経なら死地にありながら、
そこからでることも叶わず、そこで働けと命ぜられているからである。
加えておそらくショウはそこまでの命の覚悟がないまま、従軍医師になっているようだ。
「・・・従軍医師?開業するまでのアルバイトみたいなものさ。」
そんな話を居酒屋でしていた。それでこんな状況に置かれているのである。
むりもない。私もここまでひどいとは思わなかった。
「て、テツノスケは強いんだな。そのあまりこの状況でも動揺していない。」
「俺には従軍医師である理由があるからな。ほら、次あっちいくぞ。」
テツノスケの従軍医師である理由は気になるところが、そんなことより
負傷者の手当が優先である。
本当に人手が足りていない。この負傷者すべての救急対応を行った後は
どのくらいかかるのだろうか、メンタルケアの業務が待っている。
そんなときだった。
「敵襲ーーー!」
♦
私は司令の指示にしたがい、まずは強襲拠点の占拠を第一ミッションとして
団を動かした。
どうやら医療キャンプが展開されてるようだが、お構いなしに兵を投入する。
「あの子、たぶん医療キャンプで仕事しているような格好だったわね。」
実の子どもではあるが、レプリカ解放の大義とあの子の解放の為にも
情けは無用だ。よしよしどんどん、吸血鬼派の負傷兵が倒れていく。
この調子なら今日の午後にも占拠はできそうだ。ここを拠点に吸血鬼派を
どんどん追い詰めていく。
「よし!前線をすすめる!」
戦車を進めて占領後の奇襲に備える。旗をたてるよう指示し、占拠したことをアピールする。
よし、前線を進めた。捕虜もそれなりに捕らえた。
このまま、更に進めるか?兵の状況を各隊の隊長に聞き取る。
「は!このまま進めても問題ないです!」
よし、一気に。一気に、吸血鬼派を崩す。
♦
私達はレプリカ解放軍の強襲にあった。急いで逃げる。
負傷兵をおいて、バンに乗り込む。
「おい!おまえら負傷兵をおいていくのかよ!」
「ショウ!この人数ではむりだ。撤退してだな・・・・。」
「医師としてはずかしくないのかあああああ!!!!!」
「クレハ、ショウはもうだめだ。おいていく。」
ショウは限界を迎えてしまって、混乱状態だった。
「この畜生どもがああああああ!!!!!!」
ショウはその後、すぐ投げられた手榴弾の餌食となった。
四肢はばらばらになり、首が宙に舞うのを見た。
「クレハは落ち着いているな。」
「テツノスケも慣れているわね。どんなメンタルしているのよ。」
「ん。まあ、俺は子どもの頃、ゲリラに育てられたからな。こんなの日常茶飯事だ。」
さらっと、重たそうな過去を伝える。
「クレハはなんでそんな落ち着いている?俺みたいな育ちなのか??」
「うーん、なんというか。あの解放軍に実の母親がいるからかな。」
「それはなかなかだな。父親は??」
「父親は、普通の吸血鬼。警察で働いているよ。」
「なるほど、ミャーコはその辺のつてか。」
「ところで順調なくらい、撤退がすんなり行っているのはどうしてかしら?」
「なんだかね、吸血鬼派のそういう作戦らしいよ。強襲される5分前くらいに
迅速に伝令がきたわ。」
ああ、そういうことか。もしかしたら、あの団に母がいたら死ぬか捕らえられるかは
するかもしれないな。
♦
「敵襲--------!」
私達は一転してピンチに陥っていた。
背面からの伏兵によって次々、兵が倒れ、戦車が壊され、作ったキャンプを
燃やされていく。はめられたか。
初めての失敗である。立て直し方がわからない。前線の方からも敵がやってくる。
はさみ撃ちだ。
近くで手榴弾が破裂した。
爆発には巻き込まれなかったが、爆破された何かの破片らしきものが私の頭に直撃し、
私はそのまま意識を失った。




