友人の死と友人の正体
テツノスケ、ショウ、ミャーコ、レイコと私で
吸血鬼の拠点に向かうことになった。
「クレハちゃんはすっかり元気になった感じかしら?」
「まあ傷はよくなったし、前線に出るくらいはできるようになったわ。」
「よ、よか。ったねクレ、ハ。」
「しかしよお、今度は吸血鬼派の拠点とはなあ。」
「テツ。吸血鬼派の拠点は結構、この前いった北方よりかは待遇がいいらしいよ。
居酒屋も多いと聞くぞ。」
「それはいいなあ!テント内だけで飲んでもその地方の風情を感じる野が難しいからなあ。」
そう、従軍医師に必要なのがストレスコントロールである。ただでさえ、前線にでていて
いつ襲われるかもわからない状況だ。だからこそ、息抜きが大事である。
誰もジュンについては触れない。かつてのサークル仲間が裏切り、
心穏やかではないはずだが、そのことに目をむけるとそれはそれでストレスとなる。
従軍医師のミッションに、仲間の裏切りは関係ないのだ。
ただ、こういった当たり前の感情に向き合うことも許されていないというのもあるのか、
従軍医師はメンタルに耐えきれず、やめてしまう医師が多い。
稼ぎはいいので、開業資金の為に期間限定でいようとか、あまり労働意欲の高くない医師が
季節労働的に働くという感じで、やっているケースが多い。
何はともあれ、かつての仲間の裏切りについては皆、思うことがあるはずだ。
ジュンの場合は、薬の実験の為に前線に立っていたのだろうか。
クレハはつくづく思う。自分は極度に他人に依存しないタイプだと。
友人ではあったが、自分の人生においてジュンが必要な人物かと言われると
必要ではないし、なんならまあ処分せよと言われたら躊躇無くできるだろう。
そのくらい、クレハは自分の人生において他人に依存するとか心の支えとか
そういった物に対する感覚がない。
常に人生は一人である。一人で切り開きそのときそのときに必要な
人物と伴走することはあるが、別に心を委ねる必要はない。
たぶん育ちのせいなんだろう。
父は家にあんまりいなかったし、母は小さいころにいなくなった。
先般、その母には銃を向けられたばかりだ。
そのことに悲観はしていない。というか悲しいという感覚がよくわからない。
ただ、クレハにも知的好奇心がある。わからないものはほじくり返してでも
知りたい、という欲求が。おそらく、従軍医師を行っているのも、
そういったことに出会える一番刺激的な仕事だからだ。
「おー!ついたぞ!」
吸血鬼派の拠点に到着した。
♦
「ここでは、主に吸血鬼派の治療にあたる事が多いらしいぞ。当然といえば当然だが。」
ショウが確認する。
「さあ!仕事すっぞ!!けが人やメンタルケアが必要な吸血鬼はたくさんいるらしいからな!」」
そこから先は数日間は寝る暇、食う暇もないほど従軍医師は忙しい時間を過ごすことになった。
先般の北方地域よりかは安全地帯だが、だからこそ腰をすえて医療にかかりたいという
需要が多いのだろう。
「ふー。やっと一息つけそうだな。」
テツノスケがたばこに火を付ける。
「し、かし、。。この、まちは、べん、り。」
「そうねえ、ご飯もすぐ買えるし、正直テントのご飯って飽きるのよね。やっぱり
その地方のものを食べたいというか。」
レイコがつぶやく。
「じゃあちょっと繰り出す?今日の診察は終わったし。」
全員で街に繰り出すことにした。
♦
「ふー食った食った。」
「しかしミャーコはほとんど食べてないけどおなかすいてないの?」
レイコが尋ねる。
「昔から小食だよな。ミャーコは。」
「う、ん。あ、まりたべなくても、、、なんとか、なる。」
ミャーコは答える。
「さあ帰って、寝るか。明日も患者は俺らを待ってるぜえ!!」
歩いていると突然、あたりが閃光に包まれた。
「う、、、何が???」
目が慣れてくるとクレハの目の前は街が焦土担っている光景が広がっていた。
誰が運んでくれたのか、クレハとテツノスケ、ショウは建物のかげにいた。
レイコとミャーコは・・・・・・
レイコは下半身がどこかにふっとんだ状態で両目からは血を流し絶命していた。
どう考えても即死だ。
ミャーコは・・・・・・・・・
「よ、わったねえ。」
顔の皮膚の半分がはがれており、そこから見えたのは
鋼鉄の皮膚と、機会じかけの目玉であった。




