実験体の蜂起
窓から木漏れ日が差し込む。腕か縛られているようだ。少し頭を働かせて思い出す。ジュンが患者を使い、何か企んでいるのは間違いない。
『くそっ!』
外が騒がしくなってきた。悲鳴も聞こえる。また紛争だろうか、、、。いや、紛争?
『やめてくれ!一体どうしたんだ!うわああ!』
セリフから察するに、敵襲といった感じはなしない。何か、切れそうなものはないか。あたりを見回すとガラスの破片があった。
『これなら、、、』
ガラスを握り、なんとか紐を切った。窓から外を眺める。
『な、、、、。』
この村の村民がズラりと並んでいるが、様子がおかしい。近くの村民や、中立派の軍人を無差別に殺している。家やテントに火をつけていく。
村民が奇襲を受けるのはなんとなくわかるが、なぜ中立派もなすすべもなく襲わられている?
あたりを見回し、扉を開けて慎重に建物を出る。
中立派のテント村がひどいことになっている。
テントは壊され、食糧も荒らされている。
武器も奪われている。
なるほど、あの狂った村民に夜襲でも受けたのだろう。
首謀者は、おそらくジュンだろう。理由がよくわからない。
村を慎重に、探し回る。断末魔がそこかしこで聞こえる。話し声が聞こえてきた。
ジュンが、誰かと話をしている。
『かあさん、今回の薬は完全に狂わすことができそうだよ。』
『ジュン、ああいい子ね。愛してるわ。』
ジュンはかあさんと、口づけをする。ああ、そっちか。
『10年、実験を続けてきて、やっとここまで狂わすことができたわ。あのレプリカはちょっと使い物にならなくなったし、そのあとの実験体も後処理が大変だったわ。1体目は不完全だけど、よく役に立ったわ。でもこれからは、必ず失敗はしないわね。』
実験?あの薬はそんな前から?一体何が、、、
『じゃあ、かあさん僕はこれから同僚をやるよ。見られてしまったからね。』
『あら、大変。そいつも飲ませてしまえば?』
私のことだろう。参ったな。助けも見込めない。
逃げねば、、、
その時爆発が起きた。
『何?ジュン!怖いわ!』
『かあさんはこちらに!』
渡りに舟か。レプリカ解放軍の旗が見える。この事態をみて、一気に戦線を進める気だろう。
とにかく脱出を試みる。
♦︎
何時間歩いたか。
戦火からは逃れることができた。おそらく近くの従軍拠点までは、後10キロ。
『いやあ、従軍厳しいな。』
そうつぶやいて歩いていると、バイクが向かってくる。レプリカ解放軍の斥候だろうか、旗が見える。
『ここまでかなあ。。』
膝を折る。
バイクから降りてきた。
近づいて、銃を向けられる。
『く、クレハ!?』
少し老けたようだが、わかる。
アカネかあさんだった。




