陰謀
『はーい、次の方ー。』
私とジュンはメンタルケアで北方の紛争地域に残ることになった。
『息子が、息子が、、その一瞬で、うわあああ!』
メンタルケアをしていかないと、紛争で負傷していなくとも、自殺者が大量に出る、働けなくなる人が増えるとその地域の経済がうまく回らなくなり、治安が悪くなる。まあ、いろいろな理由はあるが、必要な仕事なのだ。外から見える傷ではないので、寛解したかもわからないので、かなり経過観察に時間が必要だ。なので、メンタルケア担当の従軍医師は半年以上は地域にとどまり誰がどのくらい経過観察が必要かアセスメントを取り、地域の医療機関に引き継いで、次の紛争地域に移る。
ただこういった田舎で、医療サービスの数も少ない地域だと、定期的に戻ってきて診察することもざらにある。
『今回は数が多いねえ。』
ジュンは困ったように笑う。ざっと200人ほどは並ぶ。対してメンタルケアはジュンと私だけで行う。メンタルケア担当は特に人が足りない。さっき行った事情で家を何年も開けることが多いので、結婚して家族を持つことも厳しく、なり手が少ない。進んでなろうとするのは、私のように目的がある人、あるいは、、、
『あいつの担当する患者、廃人になったり、かジュンに依存するケースが多いんだ。』
たぶん何かをメンタルケアを通じて行っているもの。
ジュンは学生の時からサークルを仕切る頼れるリーダーという感じだったが、少しサイコパスな側面もあると思っていた。まあ、いろいろあるのだが、今回のメンタルケアでその辺はよくわかるだろう。
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『とりあえず、午前は終わったか。クレハ、お昼にしよう。』
ジュンがクレハを昼食に誘う。外科的な処置のような緊急度は高くないので、比較的仕事は区切りをつけやすいのがせめてもの救いだ。
従軍テントは衣食住についてはかなり快適だ。
大きめのテントに簡易ベッドだが、1人1部屋はもらえ、タンスや机、冷蔵庫、電子レンジ、TVもついている。大浴場もある。
酒やタバコの嗜好品も発注可能だ。
唯一揃えられないとしたら、夜の接待を伴うサービスだ。ここについては各紛争地域に、仲介業者はいて紛争で職を失ったものの、生命線にもなっている。紛争が起きれば、中立派の介入はあるのでニーズが発生する。
『皮肉なものよね。』
クレハはウィスキー片手に思う。
紛争があれば、回る経済もある。今や、この国で1番金を持っているのは軍人だ。
ただ、通常のそれでは満足できない者もいる。
クレハは少し夜風にあたり、外に出る。
『?』
素朴な服装の女性がテントの敷地にいる。
明らかにプロでなく、この地域の住民だ。
彼女は一つのテントを目指して歩く。
クレハも後をつける。
女性は、テントに入っていった。
テントがはためく。
『、、、、、、!!』
ジュンが女性に錠剤を渡す。
『くすりくすりくすりくすりくすりくすり!』
女性が叫ぶ。女性は錠剤を10錠ほど一気に飲んだ。頭がガクンと下がったと思うと、女性は、
『親愛なる、ジュン様私にご命令を。』
ジュンに対して恭順し、指示をあおぐ。
『そうだね、僕はとにかく人出が欲しいんだ。明日、君の友人、男でも女でもいい。誰か連れてきなさい。』
『はい、わかりました。』
女性はテントを出ていった。
ジュンが出てくる。
クレハは鉢合わせてしまった。
『やあ、クレハ。見たね?』




