レプリカ解放軍
施設に向かうバンの中。
『アカネ、早まったことをするなよ、、、、。』
ショウイチは祈りながら向かう。
『先輩!着きましたよ!』
施設にはとっくに火の手が上がっていた。
『キミシマ、、、クレハを頼む。』
最悪の事態を想定する。幼いクレハには見せたくない光景だ。
施設の扉をあける。守衛室がある。警備員は、、
頭に風穴が開いておりもの言わぬ肉塊に成り果てている。警報音が鳴り響く。死の間際に警備員が鳴らしたものだろうか、ただ首都壊滅の後ではそのあたりのシステムも機能してないだろう。
部屋を見てまわる。部屋には誰もいないが、ひどい有様だ。ベッドは切り刻まれたのか、銃で穴を開けられたのか、羽毛が飛び散っている。棚は倒されたり、服が引き裂かれていたり荒されている。
部屋にいないなら講堂か食堂か。
食堂の扉は透明なガラス戸だ。ここからでもはっきり見える。血がべったりついている。
ショウイチは銃を構えて恐る恐る入る。
『、、、、、、!!!!!』
施設の子ども、そして施設長。武装した男達の遺体の山だった。腐食が始まってないのと血の渇き具合を見ると、1時間も経っていないように思えた。
テラスに向かう扉が開いていた。
恐る恐る向かう。外に出ようとすると銃弾が足元に飛んできた。
『そ、そんな、、、。』
♦︎
アカネはソノエを抱きしめて、声をあげて泣いていた。自分は友達をみんな、助けることがかなわなかった。結局、このレプリカ差別に向き合わず目の前の幸せを第一優先にしたツケなのか。結婚、出産、育児。個人としての幸せばかり目を向けて、私に鎖のように絡まるレプリカである自分というアイデンティティにまつわる問題を先送りにした罰なのか。
キミコの殺害、街の消失、ライの自殺、そしてソノエ、、
何もかもなかったかのように扱ってきた、この10年。私は罰せられたのか。
ソノエはそれでも、最後に『ありがとう』と言ってこの世を去った、、
私はまだ彼ら、彼女らにお礼を言われるようなことはしていない、、、!!!!
私の頭の中で何か声が聞こえてくる。
『アカネ、、戦って。』
誰の声だろうか。
『アカネ、私はあなた。あなたは私。あなたと私はこの運命に抗うしかない。だから、アカネ戦って。』
幻覚だろうか。
ライが目の前に見える。まだ火傷を負う前の姿で。しかしそこに少女のような幼さはなく、真っ直ぐアカネを見る。
『アカネ、戦って。』
『うわああああああああああああああああああ!』
アカネは叫ぶ。
そんな時、後ろから武装した集団がアカネに近いていた。近くにはヘリコプターの音と、空中浮遊による強い風が発生していた。
『レプリカ解放軍です。アカネ様、お迎えにあがりました。』
♦︎
ショウイチはアカネを連れ去ろうとする一団に牽制で銃を向けられる。
『アカネを、アカネをどうするつもりだああああああああああああああ!』
『この方は、この戦に必要なお方。よって迎えにきた。アカネ様の親族とはいえ邪魔するなら、
撃つ。』
『アカネ、アカネ!』
『し、ショウ、、イチ、さん。』
アカネは虚ろな表情だ。
『ママー!』
『アカネさーん!』
キミシマとクレハも来る。
『く、レハ。』
アカネにとって命よりも大切な子ども。
『アカネ様、クレハさんはどうしますか?』
近くの兵士に耳打ちされる。
『クレハは巻き込まない。私がこんなバカげた世界終わらせるから。』
ママ!ママ!行っちゃ嫌だ!クレハを置いてかないで。
我が子にそう言われて、アカネは涙する。
友だけでなく、家族から去ろうとしている自分を罵倒したくなる。でも、ソノエのような犠牲はもうごめんだ。
『クレハ、ショウイチさんごめんね。あたし行かなくちゃ。。』
『ママーーーーーーーー!!』
『アカネーーーーーーーー!!』
アカネを乗せてヘリは飛びたった。
赤く染まったこの空を見上げて、クレハはずっとずっと
ママ、ママと叫んでいた。




