首都壊滅
アカネはバイクを飛ばした。クレハの日常を壊されたくない。その一心だ。
『今回の武力衝突は少し規模が大きいのかしら。』
首都の政をつかさどる庁舎に集中したのかと思いきや、商業施設、飲食店にも次々と火の手があがる。
『いったい何が目的なの!?』
『ママー、さっきのデパート燃えてるよ。』
レプリカ解放軍も、吸血鬼派も経済活動はある程度まわっている状況でないと厳しいはずだ。
彼らは武力衝突をし、相手方の勢力を削った後、奪った地域の経済復興と領土化することで、収入としている。もちろん略奪や、捕虜を奴隷として売り飛ばしたりするなどもするが何もない地域では、ない袖はふれない。略奪する金品も、奴隷の売り飛ばし先もなければただの暴徒でしかない。
ただ今回は暴徒というか、お互い総力戦なのか
首都を壊滅させようとしているのか、よくわからない。争いの目的が不明なのだ。レプリカ解放軍の旗、吸血鬼派の旗がそこらではためいている。
明らかに不自然なくらい旗があちこちにある。
しかも武力衝突が起きてない地域でも既に火の手があがる。
アカネとクレハはなんとか、首都を出た。
ただ油断はできない。首都壊滅が目的ならあたりの殲滅も行う可能性がある。この辺りを焦土と化し、誰も住めないくらいにするのであればだ。誰も住めなくするにしても、目的は?経済合理性はそこには無いように見えた。それぞれの力の誇示し、世論の印象操作なのか。
そうこうしてるとアカネとクレハは家に着いた。
誰にもつけられてはいない。バイクの車輪後を追われる可能性もあるので、アカネは家に設けてある見張り台に登り監視を始めた。カメラも設置してあるので、とりあえず監視には困らない。また万が一追いかけてくるようなら、避難用の高速小型船もある。海岸沿いに家を建てたのは、陸路だけでなく海路避難も想定しての事だ。
ショウイチにメールを送る。無事だけを伝えた。
5分後、ショウイチから返信があった。
どうやら首都は完全に破壊され尽くしており、
警察組織も完全に麻痺したそうだ。警察は首都からの脱出を行い、各自拠点への避難をするよう指示が出たようだ。首都壊滅に伴い、近隣の集落への飛び火による被害が既に出ているようだった。
『ソノエの施設は無事かしら。』
アカネは呟く。様子を見に行きたいが、クレハを危険にさらすことになる。
『ママー、ソノエお姉さん大丈夫かな、心配だよ。』
クレハはソノエ達を案じているようだった。
『クレハちゃん、少し見に行きましょう。パパにも連絡を入れておきましょう。』
ショウイチにメールだけ入れておく。
ショウイチの携帯が鳴る。
『あなた、ソノエの施設を少し見に行きます。クレハも一緒です。』
『あの、バカ!おい、キミシマ!一生のお願いだ!』
『なんすか?この非常時に。』
『車を出してくれ。アカネとクレハをピックアップしに行く。手伝ってくれないか?』
『それだと、命令違反じゃ、、。』
『アカネがクレハを連れて、海岸沿いのレプリカの施設の様子を見に行くってんだ。この状況だと、何があってもおかしくない。頼む、、』
『先輩、ご家族のピックアップっていうお題目なら同行できないですけど、レプリカの福祉施設の巡回っていう名目ならたぶん人命救助なんで、大丈夫っす!先輩にはアカネさんとクレハちゃんを養う義務が、ありますからこんなことで減給とかになってもきついっすよね!』
『助かる!』
ショウイチとキミシマもレプリカの施設に向かった。
アカネとクレハも向かう。
これ以上、悲しみや憎しみを連鎖しないために。




