失われた歓楽街
砂場町は戦場と化していた。双方、武器という武器は持ち合わせていないが、投石やビンなどを投げたり、殴りあいなど大混乱状態であった。
店のショーウィンドウは割られ、レジ金の略奪なども起きていてさながら内戦状態である。
負傷者、死亡者多数。
そのうち手製の火炎瓶を投げ込むものも現れた。
レプリカも吸血鬼も体が燃え盛るもの、投石で頭がかち割れたもの、下敷きになり内蔵破裂を起こしたもの、悲惨な現場だった。
店にも火炎瓶が投げ込まれてビルにどんどん延焼していった。
警察だけでは武力衝突を止める事ができず、
機動隊が出動した。
機動隊にも火炎瓶が投げ込まれ、多数の犠牲者が出た。
『発砲許可が出た!一斉に撃てー!!!』
銃でレプリカも吸血鬼も撃たれていく。
『うわああああ、痛えよお。』
『だれかー、だれかー助けてくれえ、、、。』
一斉射撃で鎮静化に向かうものの、レプリカ、吸血鬼ともに勢いがあり、警察、機動隊ともに多数の犠牲が出ている。
戦車も出動し、レプリカ、吸血鬼無差別に砲弾を撃ち込み、ようやく事態は収拾した。
犠牲者は数万人単位。延焼により、砂場町はほぼ壊滅状態に陥った。
♦︎
数日後。
廃墟と化した、砂場町にアカネはいた。立ち入り禁止区域なので、遠巻きに変わり果てた町を眺めていた。いろんなことがあった。かつて自分をいじめていた、シュンとキミノリと再会し彼らが死ぬまで気づかなかったこと、ソノエがいた中華料理屋で食べた餃子定食、何よりサトウと結ばれた場所だった。
ちなみに、サトウはここ数日、武力衝突の事後処理に追われている。逮捕者が多数出た為、取り調べの人員が足りていないようで休日返上で仕事に打ち込んでいた。せめて差し入れと思い、毎日昼食はお手製のおにぎりを持っていっている。警察内ではサトウとアカネの仲はかなり有名だ。
『ひゃー、健気や!サトウは幸せもんやな!』
『戦場に舞い降りた天使だ!サトウ、大切にしろよ!』
サトウはからかわれている。アカネはそんなサトウの様子を見て、微笑む。
そんはほのぼの現場の帰りに砂場町に立ち寄った。当然だが、一気に現実に戻される。
一体どこでボタンを掛け違えたのか。ライとは近くにいたのに、なぜ止められなかったのか。もっと寄り添ってあげられれば。アカネは悔いていた。
自分はこれからどうするのがいいのか。今回の件があって、仕事も肩叩きにあい、日中を持て余している。サトウを支えるというのを自分なりに当面のミッションにはしているが、事件の関係者なのに、そんな裏方にいていいのか。今は世の中は大変だが、今までで1番穏やかに過ごせている。
サトウのご飯を作り、ソノエの施設にいき、子ども達と遊んで、、
仕事については、しばらくは気が向いたら探そうと思っている。こんなご時世だから、レプリカを雇う気概のある会社もないし、何より少し休みたい。
いろいろ思案にふけったのち、帰ろうとしたところ5人ほどの男達に話しかけられる。
『アカネさんですよね?俺達、レプリカ解放軍に加わっていただけませんか?』
アカネにとって、青天の霹靂であった。




