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始まり

『ソノエ、元気かしら?』

アカネはソノエに会いに来ていた。ソノエは病院から、市街地から少し離れた海沿いにある、療養施設に移っていた。ソノエがいる施設は、レプリカ専用の療養施設でソノエのように精神がズタズタにされて、自立するのにかなりの長期間を要するレプリカが住んでいる場所だ。ソノエは庭で海を見ながら絵を描くのが好きで一日中庭にいる。

発見時のように、ひたすら寮メンバーを描くのでなく、思い思いに好きなものを描いている。


アカネの問いかけに返事をする。

『アカネお姉ちゃん、こんにちは!』

ソノエは薬のせいなのか、不明だが幼児退行を起こしていた。


それでもアカネは少しずつ、ソノエが元に戻っていることに喜びを感じていた。医者の話だと、元に戻る可能性は限りなく低いと言われながらも、

ここまで話ができるようになったのは奇跡だと言われた。

『今日は何の絵を描いているの?』

『海だよ!!綺麗な海。』

ソノエは鼻歌を歌いながら絵を描く。


『アカネさん、いらしていたんですね。』

施設長だった。40代くらいと聞いたが明らかに30代前半くらいに見える若々しい女性の施設長である。

『ソノエさん、少しずつ良くなっていますね。後数年は必要ですが、自立出来そうな状態になりつつありますね。』

そう、当初は食事、排せつ、入浴全てにおいて介助が必要だったが、今は自分でできてかつ幼児退行しているが、話もできるようになった。


『アカネおねえさーん!』

『あら、みんなこんにちは!!』

ソノエがいる施設は子どもも多い。子どもは無邪気だ。

『鬼ごっこして遊ぼうよー!』

『えー、今日はおままごとを一緒にするの!』

『はいはい、今日は一日いるからみんなで遊びましょうね。』

『わーい!』


先のライによる、殺害事件と立て篭もり事件ですっかり、世間のレプリカに対するあたりは強くなってしまった。最近では、レプリカ対吸血鬼のデモ隊がぶつかることもある。


すっかり傷心のアカネもここに来ている時は、嫌な事を忘れることができる。


♦︎

『ふあー!遊んだね!アカネお姉ちゃんもヘトヘトだよ。』


『はいはい、みんなそろそろお風呂の時間ですよ!』

『えー!もっとアカネお姉ちゃんと遊びたい!』


『また来るからね!今日はここまで。』

『はーい。』

子どもは素直だ。だが、彼ら彼女らもレプリカという事で心に傷を抱えたのだ。


レプリカになるかどうかは、16歳で決まる。

がしかし、最近だと科学技術の進化により、新生児の段階で判別が可能になった。ここの子ども達は生後すぐに親元を離れている分、アカネのようないじめは受けていないのかもしれない。だが、親を知らないというのもそれはそれで悲しいことなのかもしれない。ここの施設の職員はみな、レプリカだ。レプリカだからこその痛みもわかる。だからこそ実の子ども以上に愛情を注ぐ。


だが、それでいいのだろうかとアカネは思う。

彼ら彼女らはいずれ、吸血鬼の社会と混じり合う。その時にレプリカである辛さとはじめて向き合う。そこは、配慮こそあれど、遠慮がない世界。いじめや差別は全然ある。


リアルな世界から隔離された世界。それを幸せと感じるレプリカもいれば、リアルに絶望するレプリカもいる。


『アカネ。』

サトウが車で迎えに来てくれた。そう、絶望ばかりでもなく、大切な人もできる。

そういうリアルも感じれるレプリカが増えますように、アカネはそう祈った。


車にのり、サトウがラジオをつけた。



















『速報です。本日17時頃、砂場町でレプリカとレプリカ反対派勢力による武力衝突が発生。死者も出てる模様です。繰り返します、、、。』

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