夢病
ライが立て篭もって2時間が経っていた。
『キミの要求を言いたまえ!』
応援の警察がスピーカーを使って呼びかける。
ライは呟く。
『だからアカネと話がしたいんだってさ。』
鼻で笑う。
『ちょっと爆破するか。』
病室を一つ爆破する。
『ぎゃあああああああああああああ!』
人質の肉片が外にまで飛び散る。
生首がスピーカーで呼びかけている警察官まで飛んでくる。
『ひっ、、、!!』
『はっはっは!警察も腰抜けだなあ!生首くらいでびびってしまってさ。』
ライは既に要求を伝えているのに、なぜ動けないか。それは1時間前の出来事に遡る。
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『要求はアカネとの対話だ!連れて来い!』
ライは叫ぶ。
『私、ライちゃんと話するよ!サトウさん、お願い!』
『アカネいいのか、罠かもしれないぞ、、』
サトウはアカネの肩を掴む。アカネが震えているのが分かる。怖いのだ。当然だ。自ら死地に赴くようなものだ。
『怖いけど、、ライちゃんは、、友達だから!』
アカネの決断を阻むものは何もない。サトウも覚悟を決めて、中に入っていった。
『え??』
そこには、火傷で顔がぐちゃぐちゃになる前のライが何人もいた。皆、スタンガンを持っている。
『いやああああああああああああああああ!』
アカネは嘔吐する。ショック症状で意識を失ってしまった。
『くそ!なぜだ?』
サトウはアカネを引きずり出す。
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アカネは意識を失ったままだ。
サトウは思案にくれていた。
ライはアカネがスタンガンを見ると、レプリカのショック症状になる事を知っている。だが、要求はアカネとの対話である。矛盾が生じているのである。ライは話しをしたいのに、会うことを拒んでいる。そして突入しようものなら、人質は全て殺す。でも要求を実現しないと1時間に1部屋爆破する。
『何をしたいんだ。ライは、、』
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アカネは夢の中にいた。そこは、アカネが半殺しに会っている、1ヶ月の出来事が繰り返されていた。雨露にさらされながら眠り、学校にいけばシュンに半殺しにされる。サエもヒョウカも怯えている。そしてカナエに助け出されるまでを。
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サトウはとにかく情報を集める為に、ライとアカネの関係について洗っていた。
レプリカはサポート対象なので、役所の福祉課にデータがいろいろあるのだ。ただそのどれもが、友人であり、同じ寮生である事しか書かれていない。
『くそっ!これじゃダメだ。』
サトウは焦っていた。キミシマが来た。
『サトウさん、カナエさんなら何か分かるかもしれないっすよ!』
『連絡先は分かるのか?』
『今、役所に問い合わせてます!』
サトウは一つ不審な点を感じていた。それは、アカネのワーカーなのに、ここ最近のアカネの危機的状況への介入がないこと、アカネが知っている番号だと連絡が取れない事である。
『キミシマ役所はどうだ?』
『ダメです!アカネさんの番号と同じです。』
『カナエの住所は?』
『それがあたったのですが、ずっと帰ってないみたいで、、』
キミシマへのタレコミを最後に消息を絶っている。
『くそっ!』
ふと、サトウはライの病気について目に入った。
『夢病、、、、か。学園時代に一度発症しているか。学園時代?』
サトウは夢病について調べる。
『なるほど。自分のトラウマの夢か。治療は、第三者がダイブする。ダイブした、第三者にまれに感染する。その際は、夢病の宿主がダイブすることにより、、、、。』
サトウは立ち上がる。
『キミシマ。夢病の治療器具を用意だ。アカネを連れていく。』
『はい?』
『早くしろ!人質の命がかかってんだ!』
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サトウの読みはあたった。
なんなく、ライの元へ行くことができた。
『サトウさんだっけ?さすがアカネの彼氏だね。よく見抜いたね。僕がアカネの夢病に入りたがっていることに。』
ライは治療器具を装着する。
『さあ、君たちは病院の外へ。大丈夫。アカネは私の殺害対象じゃないから。』
サトウとキミシマは出て行く。
ライはアカネの頬を撫でる。
『ごめんね、、アカネ。私、、、、。』
ライは涙する。
涙をぬぐい、自分のベッドに横たわる。
『アカネ、夢の中でキミに真実を告げるよ。アカネと私だけの秘密を。』
ライはアカネの夢にダイブした。




