伏線
タクトの遺体は損傷がひどいらしい。
焼死体で丸焦げで顔の判別はつかない。所持品で判断するに、タクトとのことだ。
発見されたのは、砂場町の空き地だ。
ドラム缶から火が上がっているのを見た勤務明けのキャバ嬢が発見したそうだ。
『サトウ刑事、これは、、丸焦げですね。』
部下のキミシマが吐きそうになりながらサトウに伝える。
『酷いもんだ。両手は手錠、その上全身ガムテープでぐるぐる巻き。生きたまま焼かれたんだろうよ。』
サトウは遺体を調べる。何か落ちた。
『ふむー。これはなんとも。鑑識に回せ、、』
『こんな殺し方、怨念のこもり方が半端ないですね。』
『ああ、この男の関係者から当たっていくのが近道かもな。』
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アカネはオカベから、タクトの訃報を聞いた。
『昨日会ったばかりなのに、、。』
流石に落ち込む。
『タクトさん、生きたまま焼かれたんだとさ。酷いことを、、、』
いつも落ちついている、オカベすら慌てふためいているのか、口調に違和感を感じる。
『あ、怖かったね。ごめん、ごめん。タクトさんとは付き合いが長くてね。ついつい。』
『友人を亡くす痛みはよくわかります。私も似たような経験をしてますから。』
『そ、そうかい。アカネさんも大変なんだな。』
不自然に言葉が詰まって返事をしているように、アカネは感じた。流石に動揺しているか。
アカネは砂場町を彷徨う。いろいろありすぎて少し疲れたのか、公園のベンチに座る。
そこへ、男が2人近づく。
『アカネさんでしょうか、昨日の砂場町で起きた事件について少しお話しを聞きたいのですが、よろしいですかな?』
刑事が2人、アカネの前に立つ。
『なんでしょうか。』
『アカネさんとタクトさんの関係についてお伺いしたいのですが、、、。』
アカネはタクトとの関係を話した。飲み屋での浅い付き合いなのと、行方不明者を探すことに協力してくれる関係だったこと。
『なるほど。タクトはセミナー講師に、社団法人の代表。このあたりから洗っていくのがいいか。
ありがとうございます。大変参考になりました。
ちなみに行方不明者というのは?』
アカネは言葉に詰まる。
警察は信じてくれるだろうか。妄想を吐く人間と思われないだろうか。でも、隠して怪しまれる方が嫌だ。
『実は、、、。』
アカネは中華料理屋やライの事についても話をした。
『ありがとうございます。貴重な情報を。』
『すみません、変ですよね。私。』
『いえ、変かどうかは事実を洗っていかないとわかりませので。後、他に何かあればこちらにご連絡ください。』
サトウはアカネに名刺を渡した。
『あ、ありがとうございます。』
拍子抜けだった。肯定も否定もせず、エビデンスに基づいて判断すると。
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『サトウさん、アカネさんが言ってたことってなんかSFチックですよね。』
キミシマが苦笑する。
『あのな、キミシマ。俺らは事実や証言に基づき、捜査を進める。一見変に見えることが真実に繋がることもあるんだ。肝に銘じておけ。』
キミシマを叱りつける。
『さあ、中華料理屋、入院中のアカネさんの友人、セミナー周り、バーあたりを徹底的に洗うぞ。』
はい!とキミシマは返事をした。
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オカベはバーで一杯やっていた。
『アイツが焼死体か。まさかな。まさか、あの事を知るやつはいないはず。なぜ、、なぜ殺された?、、まさかな次は俺か?ハッ!まさか。』
オカベの手は震えていた。