あの子がいない世界
「ライ?どう思う??」
「なんだろうな。怪しいアル。ソノエがその男性と恋仲・・・札束・・・・そして
悲しそうに絵を見ている姿。なんだろうなあ。。」
アカネは冷や汗をかきながらライに電話をしていた。
「個人的には近づかない方がいいと思うアルが・・・。でも謎の男というのは、、
少し行かないと行かないで怖いアルな。。。。」
「そうだよね、そうだよね。。。。」
アカネの顔は青白い。なぜいつも自分はこう日常が壊されるような事に片足をつっこんでしまうことに
なってしまうのか。自分の運の悪さを恨む。これが引き金で、また・・・。
ただ今回は巻き込むような友人は病院にいるし、安全だ。日常を壊そうとしているのは
自分の友人だ。今回こそ、自分が被害者になるのか。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖い??
火事も自分が焼かれればよかったと考えたはずだ。今回は自分の命が消えかけているのだ。
だから、今回で自分の惨劇は自分で幕引きできるのかもしれない。
死を受容しているのかもしれない。そう考えると恐怖と穏やかさとか安心する気持ちが
共存していることに気付く。
「ライ、私いくよ。ソノエと向き合わないと。ソノエは私の友達だから。」
むろん、もはやそんな気持ちはなくなっている。
友人に裏切られ、転校先でも事故で友人の大半を失った。今はライという存在がいるが、
友情というより縁がなんとなく切れない、というか孤独を埋めてくれる存在だから連絡を取り合っている。
ソノエはなんというか、今のソノエを取り戻したいのではなく、あのひとときの幸せを過ごした
思い出のひとかけらを失いたくないだけなのかもしれない。自分のためにソノエと会って
その結果、死を迎えてしまうならそれでいいのかもしれない。
アカネは砂場町にいた。
「まあちょっと大げさかもしれないけど。。。あの男2人からは、何かきなくささを感じるのよね。」
中華料理屋に到着する。扉をあけてると、マスターが出てくる。
「あーこの前のお嬢ちゃんか。いらっしゃい。何にしますか??」
「では餃子定食で。」
「あいよ。ついでにどうだい???唐揚げもサービスするよ。」
「ぜひ、ありがとうございます。」
餃子を焼く音と、唐揚げが揚がる音が聞こえてくる。
ドアが開く。あのおっかない男2人入ってきた。ああ、やはり今日私はソノエに消されるのだろう。
定食がきた。
餃子を食べ、揚げたての唐揚げとごはん、味噌汁をほおばる。
今日は味を感じることができる。自分の運命を受け入れたからか。
一通り食べ終えて、ウーロン茶を流し込む。
「ごちそうさまでした。」
食べ終えて1時間が経つ。ソノエは来ない。
2時間経つ。デザートの杏仁豆腐を食べて過ごすが来ない。
意を決して、マスターに尋ねる。
「あの、ソノエは、まだ来ないんですか??」
マスターは答える。
「ソノエって誰だい??」