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旧友の逢瀬

アカネは思わず隠れる。ソノエは気づいていない。絵に感動している、といった表情には見えない。ソノエは絵を見ては、ため息をつき、目をカッと見開いたかと思うと、床に視線を逸らし、唇を噛んでいる。悔しそうにすら見える。


ソノエに見つからないように、アカネは後ろをつけていった。一枚、一枚同じような表情でソノエは絵を見ている。大広間に出た。そこには、ライの雑誌に載っていた絵が載っている。圧巻だ。照明の演出もあるからだろうか。海の中にいるような感覚すら覚える。他の閲覧しているお客も絵の世界観に没入しており、悦に浸っている。


そんな中、アカネはソノエの表情を読み解く。

何か信じられないような表情で絵を見ている。

この世界に絶望したような、唖然としている。

もう取り返しのつかない場所まで来てしまったような、そんな絶望感。かつて確かに希望はあったのに。アカネは既視感を覚えた。何か見たり、感じたりしたことがあるような。


ソノエは顔を伏せて会場を後にする。涙が溢れているように見えた。ここまで悲しみに暮れてる人をアカネは知っている。そう、それは自分自身だ。


ソノエを付ける。

会場近くの路地裏にある、隠れ家的な喫茶店。

ソノエはそこに入っていった。


アカネも見つからないよう入った。

ソノエは、誰かと待ち合わせしているようだった。


1人の男性が入ってくる。

『え、、、、?』

飲み屋で会った初老の男性だ。男性は店を見渡すとソノエの席に向かう。


ソノエと男性は向き合う。何か話をしているが聞こえない。男性はそのうちテーブルの下で足をソノエに絡ませる。ソノエは顔が赤くなる、、ような仕草をする。ひとしきり2人は会話をした後に、

男性はソノエに分厚い封筒を渡した。封筒の中から紙が一枚落ちる。遠目でもわかった。あの封筒は全てお金が入っている。ソノエと男性は口づけを交わし、男性が先に出て行った。


アカネは茫然とする。すると、男性がアカネに気づいた。


『キミはオカベさんとこにいた、お嬢さんじゃないか。』


まずい!ソノエにも見つかる!そう思った矢先、ソノエはアカネを見ていた。


『じゃあ僕はこれで。』

男性は足早に立ち去った。


ソノエが近づく。

アカネは冷や汗が止まらない。見てはいけないソノエと男性のやりとりを見てしまったことくらい直感で理解できたからだ。


『アカネ、久しぶり。今のやりとり見てた?というかこんな喫茶店ならわかるよね。今日の夜、私の働いている中華料理屋に来てくれないかしら?来てくれたら、悪いようにしないから。』

アカネの頭には柄の悪いスーツの男性が思い浮かぶ。

『来ないと、、、イヤよ。アカネ。』

ソノエはそれだけ伝え、喫茶店を去った。




アカネには逃げる選択肢はなかった。

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