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都合のよい話

放課後、寮のリビングにて。


「アカネ、なんか元気なくて心配だわ。」

キミコはアカネの身を案じている。


「あの転校生と何か関係アルかね。」

「でも、サエが教室に入る前からなにか様子がおかしかったぜ。」

「僕もそれを少し感じた。そもそも今日の朝ご飯の時点から元気ないし、、、。」


「ソノエはアカネが話しをしたくなるまで待った方が良いと思うの。私たちも自分のトラウマを

のぞき見されるのはつらいでしょ。」

「そうアルね。私の夢病も許諾書を事前に取っているし。こういう個人にまつわることは

本人の意思だと思うアル。」


レプリカはみな、何か暗い過去を持っている。ただ、すべてのレプリカがアカネたちのように

サポートを受けているわけではない。福祉ワーカー含め、自分の凄惨な過去を第三者にさらけ出すのが

苦痛なレプリカもいて、当然同じ当事者だからといって何にでも立ち入っていいわけではない。


アカネがやってきた。

「やあ、みんな。なんだかお昼寝したらすこし元気になったわ。」

「そうそれは良かったアル。季節の変わり目だからちょっと体調も崩しやすいアル。」

ライはニカッと微笑んだ。


「うん、なんとなくみんなも察しているとは思うんだけど・・・・。」

「アカネ。私たちは友達よ。だけどね、友達だからすべてを打ち明ける必要はないと、ソノエは

思っている。アカネが話したいなら話してくれれば聞くし、助けてほしいなら助けるし。

でもアカネ話をしたくないし、放っておいてほしいと思えばそれを素直に伝えてくれればいいのよ。

私達に遠慮はいらないわ。みんな同じように凄惨な過去を乗り越えて、今ここにいるのだから

境遇は違えど同じような悩みを抱えているのよ。」

ソノエはそっとアカネを抱きしめてささやくように伝えた。


アカネは何も言わず、ソノエの腕の中で肩を振るわせて涙を流していた。




サエが転校してきて数日が経った。

アカネもサエには近づくことなく、サエも誰とも話すことなく淡々と日は過ぎていった。

「おーい、アカネ!すまん、今日の掃除当番変わってくれないか??」

「リュウヤまた??」

「ごめん、ごめん、実は今日、アスカの誕生日でさ。買い物につきあってやりたいんだ。」

「あーなるほど。それは行ったほうがいいね。」

「今度埋め合わせするからさ。あと、今夜はアスカの誕生日パーティだから早く帰ってこいよ!」

誕生日パーティ。前の暮らしだったらそんなささやかな喜びを味わう暇すらなかった。

今は幸せである。将来はどうなるかわからない。だからこそ、この限られた時間を

味わう。そう決めたのだ。


放課後、アカネは掃除を終えて、ゴミ捨て場にゴミを捨てにいった。

「ふーやっと終わったわあ。早く帰ってシャワー浴びたいなあ・・・。」


後ろから影が近づく。


「アカネ・・・・・。」

サエであった。



「・・・・・サエ。久しぶりね。」

「アカネ。元気だった??」

「今更何のよう?あなたにとって汚れたまがい物だから近づきたくもないはずだと思っていたけど。」

「私もそのレプリカになったから今さらと思うけど・・・・。」


アカネは黙っている。

「今ならあなたの気持ちがわかると思うの。あのときは助けてあげられなくてごめんなさい。」

アカネは握り拳を作り、力をいれているからか、拳がふるえている。


「だからね。またあなたとやり直したいの。ほら、あなただって嬉しいでしょ。昔の友達と

また出会えたのよ。お姉さんとまた、その部活を・・・・・。」


「ふー。サエあなたもレプリカになったのね。それは大変だったと思うわ。

何があったかはわからないけど、後天性ということはそれはそれは凄惨な過去を引きずって

ここに来たんだと思う。だから同情はするわ。でも私はその凄惨な過去の一部である

あなたをまた友達になりたいと思う?クラスメイトして、話をしなくてはいけない時は

話をするのはできるわ。だってそれは私に必要なことだもの。でもね、私の安らぎの時間や

空間に、もうあなたは立ち入ることができないと思うの。そう思っていてもあなたは私とやり直したいのかしら?」

つとめて冷静に話しをする。


「そうね・・・お姉さんがバカだったわ。ごめんなさい。あなたの気持ちも知らず。

これからはクラスメイトとしてよろしくね。アカネさん。」

その言葉を聞いてアカネは黙ってその場を離れた。


「アカネ!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。あなたとはもうお友達になれないかもしれない・・・・でも何があってもあなたを災厄からは守りきるわ。それがお姉さんができるただ一つのことだから・・・。」


アカネは寮に戻った。

「さあて、アスカの誕生パーティだね!!!」

寮の扉を開くと、リビングには床に座り込んだアスカがいた。

「アスカ?どうしたの??」

「キミコさんが・・・・キミコさんが・・・・。」


リビングに入る。

寮メンバーとカンナさん、カナエさんもいた。

キミコだけがいない。

「カナエさん、キミコはどこ??」

「アカネさん、落ち着いてきいて頂戴。」








テレビニュースが流れている。

「本日、午後4時頃、○○町の路地にて17歳くらいの女性が血を流して倒れているが発見されました。

被害者の名前はキミコさん。キミコさんは腹部に包丁のようなものを突き立てられており、

病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。」



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