さよなら、ありがとう
『う、、、。』
アカネは目を覚ます。あたりは真っ白。他にも、そのあたりに多くの人が倒れている。
『ここは、どこ、だ?』
あたりを歩いてみる。少しいくと、鉄柵のようなものが見えた。
『なんだろ?あれは、、。』
『うわああもういやだああああ!』
男が鉄柵に近づき、よじ登ろうとする。
その瞬間、
『バチっ!』と大きな音とともに男は黒焦げになっていた。
『アカネ、目が覚めたアルか。』
ライであった。
『鉄柵には近づくな。あの男みたいに黒焦げある。』
『ここはどこなの?』
さっきまで熱帯のジャングルにいたはずだが、、
『北極圏に近いところね。北極圏周辺にこのような監獄があるのは聞いたことがある。帰らずの監獄、と呼ばれてるアル。』
『帰らずの監獄、、、。』
アカネの背筋が震えた。
帰らずの意味を次の日から知ることとなる。
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投獄1日目。
看守らしき男が広場にやってくる。囚人が5人ほど連れてきた。
他の囚人が遠巻きで広場の様子を見ている。
『今からこの5人の重罪の囚人達に刑を執行する!』
『刑の執行、、、?』
『アカネあまり見ない方がいい。囚人達のメンタルを壊す意味もあるからな、、。』
用意されたのは、透明なショーケースのような部屋。囚人達はそこに入れられる。
天井からは大量の水をいれられ、蓋がされる。
5人の囚人達は1つしかない空気口を取り合う。
足を引っ張り水底に体を引っ張られ、囚人が囚人の首をしめ殺し合う。
空気口に近づこうとする囚人がいると、別の囚人が邪魔をし、共倒れで窒息死する。
最後の1人は無事空気口から息を吸うことができた。
看守が空気口の入り口に何か仕掛けた。
生き残った囚人が水の中で嘔吐する。
『毒ガス、、アル。』
そのまま囚人は血を吐き、動かなくなった。
『この者達のようになりたくなければ、脱走を考えないことだ!』
看守はそれだけ言い捨てて、ショーケースと死体の処理を始めた。
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投獄2日目
アカネとライ、マオハオは他の囚人と労働を課せられる事になった。
労働は死体の焼却、そして穴をほりひたすら埋葬していくという仕事だった。
マオハオが死体を引きずり、焼却していく。
燃えカスをライが焼却炉から出して、アカネが穴を掘っては埋めていく。
『死体は見慣れているが、この仕事はきつい、、』
マオハオは呟く。
死後何日も経過している死体もあり、腐乱臭がひどい。焼き場では、嘔吐している囚人もいる。
焼き場から埋めたて場所まで運ぶのもかなりの重労働だ。1箱30キロある遺灰を1日何十往復もする。休憩もなく、吹雪いている中の作業である。凍傷で指が動かず、そのまま倒れるものもいる。
箱を落とすと、看守に連行され戻ってくることはない。埋め立て作業も積雪をかき分けて穴を掘る為、かなりの重労働だ。堀り終わって、穴から這い上がれないものはそのまま遺灰とともに生き埋めになる。
アカネもライも死なない為だけに働く。
何も見返りがなく、水も食事もなく死を回避する為だけに働く。
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投獄7日目
アカネもライも骨と皮だけになり、気力だけで労働をこなしていた。アカネはライを助ける為だけに働いていた。
『ライを、ライちゃんを助けないと。。でもどうやって、、、。』
『マオハオは大丈夫アルか、、、?』
ライはここ数日で少し不思議に思っていることがあった。遺灰の量が明らかに減っている。
ライは、看守の目を盗み、死体が積み上がっている集積地を見に行った。
『ここからなら、見れるが、、。』
音が聞こえる。ぐちゃぐちゃ、バリバリ。
肉を引き裂き、喰らうような音。
ライは驚愕の光景を見た。
そこは、死体焼却担当の囚人達が死体の肉を喰らう光景だった。調理ができる環境ではないので、腐った死体をそのまま皮膚から喰らい、あごの力で無理矢理肉を引きちぎる。
ライは嘔吐した。
『ま、まさか、、。』
マオハオがいた。マオハオも死体を食らっていた。目を血走らせながら、肉を食べ血をすすっている。一瞬こちらを見た。ライは背筋が凍ったような感覚だった。無我夢中で、走り去っていた。
『はあはあ、』
見た光景を忘れる為か、遺灰の収集に集中することにした。
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投獄12日目
『皆のもの、ここに課せられた義務を怠った不届きものに対する制裁を行う!』
看守が広場に来た。囚人を10人ほど引き連れて。
マオハオがいた。
『このもの達は、死体焼却を怠り、自らの食欲を満たすべく死体を食らっていた。これは極刑に値する。』
ショーケースにまたもや囚人が捕らえられる。
か
ライが飛び出そうとする。アカネが慌てて引き止める。
『アカネ、離せ!マオハオがマオハオが死んでしまう!』
アカネはライの口を防いだ。アカネの目からは涙が流れている。
『ライちゃん、今行ったらあなたも殺されてしまう、、行ってはダメ!』
『んー!んー!』
ショーケースにガソリンがまかれる。
ライはアカネを振り解き、ショーケースに近づく。看守がライを組み伏せた。
『マオハオー!!逃げるんだ!マオハオー!!』
アカネもショーケースに近づくが、看守に取り押さえられた。
ガソリンが充満した部屋に火のついたマッチ棒が投げ入れられる。
『マオハオー!』
組み伏せられながら、届かない手をライは伸ばす。
マオハオはライの方を見ながら、涙ながらに口元を動かした。
『ありがとう。』
ショーケースの中は火の海と化した。
『いやああああああああああああ!』
マオハオとアカネは首元に手刀され、意識を失った。




