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いつまでも勉強だね!

テルはなかなか子どもができない父さんと母さんにとって奇跡であった。


俺は生みの親の事をよく知らない。


生まれてすぐ、今の父さんと母さんのところで暮らしていた。


引き取られてからテルが生まれるまでも、

生まれてからも惜しみなく愛を注いでくれた。


愛に満たされている家庭。

愛の形?愛とはなんだろうか。


『セラピストさんが受けた親からの愛情表現ってなにか質問していいですか?』

リュウヤは尋ねる。

『私は、例えば泣いていたら慰めてくれるとか、です。』

『それがセラピストさんの愛の形かあ。。』

『なあ、アカネ。泣いている時によく俺のかあさんととうさんは、俺が泣き止むまで顔を殴り続けてくれたんだ。おかげで俺は強い子になったよ。これは愛じゃないのかなあ。テルとケンカしたら、3日くらい物置に閉じ込められて、トイレにも行かせてもらえず、ケンカしない方がいいことを教わったよ。門限に1分でも遅れたらさ、カッターナイフで身体中を切り刻まれた後、塩を塗り込んでくれたおかげで時間を守る大切さを教わったよ。俺はそうやって、体でいろいろ教わって愛だと感じていたんだよ。ものすごく愛してくれた、、、。』


アカネは問いかける。

『リュウヤ、ではなんでいまそんな涙を流しているの?』


『あ、なんでだろう。涙が止まらないなあ。ふふふ。』

最初はリュウヤは笑いながら泣いていたが、

そのうち嗚咽をしながら、しくしく泣く様に変わっていった。


アカネも涙を流している。



リュウヤが泣き止むタイミングで

セラピストが声をかけた。


『リュウヤさん。その時のお母さんとお父さんに、今ならなんて声をかけますか??』





リュウヤは涙をぬぐい答えた。

『かあさん、とうさん、俺を殴らないで。倉庫に閉じ込めないで。カッターナイフで傷つけないで。もっと抱きしめて、辛い時は慰めて。俺を、俺をちゃんと愛してください。』


アカネは思わず立ち上がり、リュウヤを抱きしめた。

『リュウヤくん、リュウヤくん、辛かったね、悲しかったね。気づいてあげられなくてごめんね。』

アカネは涙が止まらない。

『あ、あ、あ。う、う。うわああああああああああんー!!』

リュウヤは泣きじゃくっている。


♦︎


リュウヤは自ら親に愛されてなかったことを認めることができた。


セラピストからは、

『少しずつ人を愛し、人に愛されることを今から覚えていきましょう。』とだけ伝えられた。


『愛し方か、、。よくわからないな。』

リュウヤは呟く。


病院から出てきた2人を寮のメンバーが出迎えた。

アスカもいる。


『以外と元気そうアル。』

『ソノエは、リュウヤとまた会えてうれしい。』

『ナンパ坊やもすっかり元気で何よりよ。』


『みんな、心配かけたね。まだまだ練習しなきゃだけど。』

『練習って何をアル?』

『人を愛することをさ。』

『まあ、じゃあリュウヤさんの情事をこのワタクシしっかりと観察してあげますわ。』


アスカが意を決して、リュウヤに話かける。

『もう大丈夫なの?』

『ああ、まだまだ練習しなきゃだけど、お前を襲うことはないさ。』

『襲ってもらうのは嬉しいんだけど、、、』

そのセリフを聞いて、キミコは鼻血が噴水のように出ている。


『その、僕の告白の返事はどうなのかな?男だとやっぱりダメだよね。』

アスカは顔を伏せる。


リュウヤはアスカの肩に手を置き答えた。

『俺は人の愛し方も愛され方もまだよくわからねえ。だから、アスカのことをどうこうは言えない。男とか女とかはあんまり関係ないとは思うけど。。よければ俺を好きでいてくれないか?愛されたいし、愛せるようになりたい。だから友達からってことじゃ、ダメか?』


アスカは満面の笑みで答えた。

『本当にリュウヤさんは、ナンパ野郎だね!』

アスカはリュウヤの頬にキスをし、

『バーカ!ずっとずっと好きでいるから、覚悟してよね!』

と伝え、走っていった。ライとキミコは追いかける。

『アカネ、アスカも寮に入るんだって。ソノエは、アカネのライバルが増えて悲しいわ。』

『だから、そんなんじゃ、、』

『そういや、アカネ。』

リュウヤが声をかける。

『セラピーの時、抱きしめてくれてありがとうな。あれはなんなんだ?愛の形、、なのか?』

アカネは顔が真っ赤になる。ソノエは怒りに震えている。

『ソノエは許しません!リュウヤ待ちなさーい!!』

『ええ、なんでー!』

ソノエはリュウヤを追いかける。


アカネはその光景を見て微笑む。


私達はいつでも愛し方、愛され方をいくつになっても学べる。知らなければ、知ることを怠らない。1人で無理なら誰かに聞けばいい。



『みんなー、待ってよー!』

元気なアカネは澄み渡る青空の中、

寮のメンバーを追いかけていった。


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