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愛を知りたい

セラピーの日。

『それでは、セラピーをはじめます。あなたはまずこのセラピーを通じて、どうなりたいですか??』


『俺は、、、。』


リュウヤは言葉に詰まる。

アスカの顔を思い出した。同性に告白されたのははじめてだが、、人に好かれるというのは悪くない。でも、あるトラウマで年下の同性に愛情や友情含め、好意をもたれると過去がフラッシュバックする。気がつくと、その同性に対して暴力をふり、嬲り、慰み物にしてしまう。

そうやって、女性としか話せなくなってしまった。


『俺は、同性の友達が欲しい。そのためのトラウマを克服したい。』


アカネも少し離れたところで対話を聞いていた。この先リュウヤは何を語り、どうトラウマを克服していくか。緊張しながら耳を澄ましていた。


セラピストはリュウヤに問う。

『では、あなたのトラウマについて教えていただけないでしょうか。』


リュウヤは語りはじめた。


♦︎


17歳のある日だった。

その頃俺は、普通に吸血鬼として学校に通っていた。一個下の弟がいた。名前はテル。俺と同じストレートヘアの黒髪で、兄の自分から見ても顔立ちは美しいと感じた。


弟と俺はそこそこ仲が良かった。


同じ部活に入り、日々共に汗を流していた。


部活の合宿があった。山間の合宿所で、一週間籠り練習漬けでかなりきつい合宿であった。


なんとか合宿最終日まで頑張ることができた。

ちょうど合宿最終日が弟の誕生日で部員全員で疲れながらもサプライズでお祝いをした。


弟は嬉しそうであった。あんな嬉しそうな弟の顔は見たことがなかった。


そして、部員が用意した、血液パックを弟は飲んだ。

弟はその場で嘔吐した。結論から言うと、弟はレプリカであった。


家族で話し合って、弟の希望もあって同じ学校かな通い続けることになった。


レプリカでも家族だ。そう思っていたが、世間の差別はひどかった。弟は部活のレギュラーを外され、練習にも参加さぜてもらえず雑用ばかりだった。俺がそこで顧問やみんなにかけえばよかったのだが、

『弟がレプリカか。かわいそうだな。紛い物で。』と心ない言葉をかけられる事が増えた。


弟を庇えば自分も同じような目に合う。

部活では弟に対するいじめも始まった。

弟の飲み物に下剤を入れられたり、トイレに閉じこめられてバケツ水をかけられたり、練習と称して60キロ以上はあるレンガを、正座させられて太ももに乗せられたり。他にも、、、

『う、、、、。』

リュウヤは吐きそうになる。

『言いたくないことは大丈夫ですよ。』

『はい、大丈夫です。』


さっき言ったことは序の口で、生ゴミを食べさせられたり、ホースを口に括り付けて水を胃が膨れ上がるまで飲まされ、全て吐いたり、、

見ぐるみ全て剥がされてベルトで何度も何度も、、


そんな光景を見ながら、何も出来なかった。

だが、一方で自分のある思いが駆け巡っていた。


『オレモアノイジメニクワワリタイ。』


家に帰ると父と母は心配していたが、何も言えなかった。


ある夜、弟が部屋に尋ねてきた。弟は俺に泣きついてきた。助けて、助けて助けて。と何度も。

兄貴は俺のことが嫌いなのか、愛してくれないのかと。

弟を突き放し、頬を思い切り叩いた。

『マダタリナイ。』

そう心の声が聞こえてきた。さらに引っ叩いた。

快感だった。泣きじゃくる弟を見るともっともっとめちゃくちゃにしたくなった。

腹を蹴り、近くにあったビニール紐で首を絞めたり、ライターで耳たぶをあぶったり。

止まらなかった。まだ、まだ、まだタリナイ!!

ひとしきり暴力を振るい、弟の部屋まで半殺しにした、弟を引きずり投げ入れた。

『明日も可愛がってやるからな。』




その次の朝だった。弟が自室で首を吊っているのを見たのは。


それから、年下の同性を見るとめちゃくちゃにしたくなる。自分を抑えられなくなる。何で俺にもっといじめさせてくれなかったのか。


弟を死においやってしまった後悔より、暴力に対する渇望が上回っていた。







それ以来年下の同性に友情や愛情を含めた、好意を抱かれると自分の欲望が抑えられなくなった。

同時に血を吸うことも出来なくなっていた。


♦︎

リュウヤは泣いていた。

セラピストは否定せず、リュウヤの話を聞いていた。

そして、、

『弟さんに重ね合わせると欲望が止まらなくなるんですね。弟さんがもし今生きていても暴力を振るいますか?』


『振るいます。自分の快楽のために。』

『では、あなたは年下の同性にも暴力を振るいますか?』

『わかりません。』

『弟さんの事は愛してましたか?』

『今も、愛しています。生きていて欲しいです。』

『それはどうしてですか?』

『暴力を振るわれるのが、自分に対する愛だと感じたからです。だから、自分なりに愛したい。』


アカネは驚いていた。触れたことのない価値観。

暴力が愛であると。


セラピストは語る。


『リュウヤさん、もしかしてご両親やそれに近い方から暴力を日常的に受けてませんでしたか?』


リュウヤは思い出す。


風呂に入るときに脱衣所で傷だらけの自分が鏡に映っていたことを。

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