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「……それで?なんでまた、俺にドッキリを仕掛けようと企んだんだ?」


「……なんの事かな?」



 崩れ落ちる様に席に着く事になった俺だったが、容れて貰ったお茶を口にすると大分乱れていた精神が安定し、空回りしていた思考がキチンと回り始めた為に、先程の説明の違和感に気付く事が出来たので、取り出してストレートに加田屋を問い質してみる。


 もっとも、違和感とは言っても嘘を吐かれていると言った感じではなく、故意的に情報を隠蔽されている、と言った感じなので、恐らくは何かしらの思惑が在っての行動なのだろうとは思う。


 そして、アイツの事だから、俺にそうやって隠すと言う事は、ほぼイコールで俺の為に隠そうとしているか、もしくは俺が知らない方が良い方向に転がせる、と言う状態に在るからだろう。

 加田屋の事は信頼しているから、その点は疑わずに信じても大丈夫だろうと思う。


 ……思うのだが、だからと言って知らずに済まして良い事では無いと、俺の勘が告げている。

 と言うよりも、こんな茶番を仕掛けてくれたのだから、ソレを聞き出す位は許されても良いだろう。むしろ、ソレを聞き出すのは、俺に許された正当な報酬だとすら言えるだろう。



「バレて無いとでも思ったか?お前さんが無駄な事する訳がないだろうが。だったら、何かしら企んでいて、ソレを隠そうとしている、って処だろう?なら、さっさと隠している事をゲロっちまえよ。

 あくまでもゲロらないで隠し通すって言うのなら、こっちもある程度は手段を考えないとならなくなるんだけど、どうするよ?」


「…………いや、まぁ、確かに?隠し事はしているよ?それは、間違いなく。

 でも、それはあくまでも君の為を思ってだからね?君に危害が行く事は無いって保証出来るし、むしろ良い事だって約束出来る。それに、僕達にとっても良い事だって確約出来るから、誰にとっても良い事ずくめだ。それでも、聞きたい?

 聞いちゃうと、全部おじゃんになる可能性もなきにしもあらずなんだけど?」


「私も、タキガワ様はお聞きにならない方がよろしいかと思います。私からも保証させて頂きますが、今私達が進めているモノは、絶対的にタキガワ様の役に立つモノとなります。

 ですが、ソレをお聞きになられては、万が一の可能性としてタキガワ様が私達の計画をお止めになられるかも知れません。そうなると、私達も、タキガワ様も、全ての方が不幸に見舞われる、そんな事態になりかねません。

 ですのでどうか、今この場に於いては、その追及の手を止めて頂けると大変ありがたいのですが……」


「………………ふぅん……?」



 ものの試しで脅してみたら、思わぬ裏側がポロリと零れ出て来た。


 その事実に、思わず黙り込みながら、これからどうするべきかを考えてみる。



 取れる行動選択肢としては、主に二つ。

 一つは、このまま無理矢理にでも二人から詳細を聞き出す。

 もう一つは、二人の言う通りに追及を止め、二人の言う処の『俺にとっての良い事』が起きるのを待つ。



 仮に、前者の『無理矢理聞き出す』を選択した場合はどうなるか。


 言わずもがなで、二人が黙って進めている『なにか』についての情報を得られて、ソレが本当に俺にとって利するモノであれば手を加えて加速させ、そうでなければ事前に潰す事が出来る。コレが、メリット。


 逆に、二人からの信頼を失ったり、聞き出した後で進められていた『なにか』の性質を、根本的な部分から変えられてしまう可能性が残り続ける事。コレが、デメリットだと言っても良いだろう。


 この場合、一見メリットがデメリットを上回っている様にも見えるかも知れないが、その実として二人からの信頼を賭けでベットしている様なモノであるので、俺としては最終手段として取っておきたい。

 それに、俺としてもあまり進んで取りたい選択肢では無い為に、取り敢えずは一時保留しておいた方が良いだろうね。



 では、こちらも仮に残る選択肢である『黙って結果が出るのを待つ』の方を選択した場合。


 この場合は、俺は何もしなくても良い、と言う事がメリットだろうか?

 基本的に事を進めるのは加田屋達が全部やってくれるらしいので、俺は何もしなくても良いのだろう。ほぼ『果報は寝て待て』状態になると見て、間違いは無いと言えるハズだ。


 そして、デメリットも挙げるとすれば、俺自身が事に関わる事が出来なくなる、と言う点だろうか?


 加田屋からの説明を聞く限りでは、事に俺を関わらせるつもりは元々無かったのだろう。

 故に、成果として事が結実するまでは、俺に対して『どんな結果を目指しているのか』『誰が関わっているのか』『何を必要としているのか』『いつ頃になれば終わるのか』『何を成せば終わったと言えるのか』と言った情報は一切入って来ない、と見なければならない。


 それなら別に良くない?と思う人も多いのだろうが、俺としては過程の情報が入って来ないとなると結構気分的によろしくないので、十二分にデメリットになってしまう。達成具合だとか、進捗率だとかが一切分からないとなると、なんとなく不安になってくる質なのだから仕方無い。



 こちらの選択をした場合、現時点ではデメリットを上回るだけのメリットが在るとは言い辛い。

 何せ、向こうの選択をするのとは異なり、最終的に得られる成果を明確に『コレだ!』と知る事が出来なくなる。

 そうなると、本当に事が全て終わるまで傍観するしか無くなるし、ゴールが何処に在るのか知ることも出来なくなるので、二人の事も少なからず疑いの目で見続ける事になるだろう。




 ……こうして二つの選択肢の先を予測してみたが、どちらもどちらでメリットもデメリットもそれぞれに存在しているので、一概にどちらが良いのかハッキリとしてくれない。

 むしろ、どちらを選んでも、俺主体で事を進めるのか、もしくは俺が一切関わらずに事が進むのを傍観するか、の違いしか無い様にすら感じられる気がする……。


 はてさて、どちらを選んだモノだろうか、ねぇ……。




 そうして一人無言で頭を悩ませる事暫し。


 溜め息を一つ溢し、すっかり冷めきったお茶の残りを一息で飲み干してから、二人に対して結論を告げる。



「……取り敢えず、お前さんの事を信用して黙って見てる事に決めたよ」


「…………良いのかい?

 自分で言っておいてアレだけど、こう言うのって割りと好きじゃなかったよね?ハッキリ言えば、嫌いな方じゃなかったっけ?」


「まぁ、あまり好きくはないな。本音を言えば。

 ……でも、お前さんだとか、レティシア王女だとか、その他の協力者だとかが俺の事を考えてキチンと計画してくれているんだろう?だったら、きっちり結果さえ出してくれるのなら、俺は余計な口出しも引っ掻き回しも無しにして、黙って事が終わるまで見てる事にするよ。

 でも、最後の仕上げの段階まで入って、事の結実まで秒読み、みたいな段階になったのなら、流石に残りの時間位は教えてくれるんだろう?お前さんも知っての通りに、俺の残りの時間はそこまで多くは無いのだから、それに間に合う様には頼むぞ?」



「………………そっか…………はぁ~~~~~~~~良かったぁ~~~~~……」



「……本当に、良かったですね、カタヤ様!」


「いや、本当に滝川君が受け入れてくれて良かったよ!この盤面で実力行使に出られたらどうしようかって、ずっと冷や冷やしてたんだよねぇ。もう、背中から脇やら、冷や汗でびちょびちょだったんだからね?」


「……もう!そう言う事を直ぐに口になさるのも、あまり淑女としては感心しませんよ?所作や外見の方は大分女性らしさが出る様になったのですから、言葉遣いも治して行かないとなりませんよ?」


「……そう言えば、なんでまたお貴族様のご令嬢みたいな格好してたんだ?似合ってるし、この場でドッキリを仕掛ける為って事は理解出来るけど、何故にそのチョイス?

 それともアレか?もしかして、男だった時から隠し持っていた、ドレスを着てみたかった衝動の発露とかだったらするのかね??」



 俺からの返答が望んでいたモノであったからか、安心して息を吐き、レティシア王女と二人で良く女子がする様にキャッキャと騒ぎながら小さく跳び跳ねている処に、思っていた事をポロリと口に出してしまう。


 すると、加田屋はまず右の耳に小指を突っ込んで詰まっていたり異常が無いかを確認すると、今度は左耳でも同じ様に確認をし、それからまるで信じられないモノを耳にした、とでも言いたげな様子でレティシア王女の手を握りながら迫っていった。



「…………ねぇ、王女様?僕の聞き間違いかな?今、滝川君が『似合ってる』って言った様な気がするんだけど?気のせい??」


「いいえ!タキガワ様は、確かに貴女に対して『似合ってる』とお褒めになって下さいました!」


「だよね?だよね!?そうだよね!!?

 って事は、僕にもワンチャン在るかも知れない、って事で良いんだよね!?まだ、希望を捨てないでも大丈夫なんだよね!?!?」


「ええ、ええ、もちろんですとも!計画が達成し、タキガワ様の問題を見事解決して見せた暁には、必ず好機が到来するハズです!

 その時さえ逃さずにキッチリ狙い撃ち出来れば、まだまだ可能性は残っているハズですよ!しかも、私の見立てではかなり高めな割合で!」


「……そっか……そっか、そっかぁ!じゃあ、気合い入れて行かないとね!何が在っても、どんなことが起きたとしても、必ず目的を遂げないとね!王女様も、協力お願いしますよ?」


「えぇ、それはもちろん。私にとっても、あの問題は看過出来かねますからね」


「「ふふっ、ふふふっ、うふふふふふふっ!」」



 最初こそ、異様な雰囲気にてレティシア王女に迫っていた加田屋だったが、どうも二人の間でなにか在ったと言う訳でもなかったらしく、さっき泣いたカラスがもう笑った、では無いけれど、既に先程までと同じ様な状態に戻って二人で笑い合っている処を見ると、そこまで重大な事柄では無かったのだろう。

 聞こえて来た会話も、俺にはイマイチ理解できないモノだったしね。

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