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「……あ~、眠い……。

 まさか、徹夜する羽目になるとはなぁ……」


「なんだよ、一日位寝なかった位でだらしない。体力が足りないんじゃないのかい?下半身のスタミナは足りてるみたいだけど、それだけじゃダメだぞ?

 それと、あの『合わせ』の技法も工房の連中に教えても良いよな?そうでもしないと出てこない発想だろうし、何よりそうした方が装備の質が上がりそうだしな」


「……まぁ、そこは、以前出した刀の課題をクリアした人から教える、って事で」


「……そんなに意地悪しなくても良いんじゃないの?

 まだ、まともに作って持ってきたヤツなんて居ないんじゃなかったか?」


「否定はしませんが、そこはある意味当然でしょう?

 俺の元居た国で古来に発明され、それ以降作業の効率化こそは在れど、基本的な部分は変わらずに継承されてきた技法の一つですよ?

 近代だと素材の劣化でまともなモノを造り上げるのは困難になっていましたけど、最盛期は幾つも重ねた死体を纏めて両断して尚刃零れ無し、って位の銘刀すら産み出した程のモノなんですから、そうそう簡単には体得出来はしないでしょうよ。

 あの『合わせ』にしても、折り返し在りきでの技法になるので、流石に教えても意味が無いでしょうからね。まだダメですよ」


「…………いや、流石に、それは変態の域に行き過ぎだろうよ……。

 何を動機にどれだけ技術を追求すれば、そこまで徹底的に洗練出来るんだ……?」


「さぁ?何せ、狭苦しい島国で、外に出る事を考えずにひたすら殺し合いしていた様な国と民族でしたからね。根本からして頭可笑しかったとしても、俺としては不思議じゃないですねぇ……」


「……なにも、そんなに遠い目をしながら、自分の故郷と民族を扱き下ろさなくても良くないか……?」


「まぁ、事実ですからねぇ……。

 俺達がこっちに喚ばれる直前だって、表向きは平和を謳ってはいましたが、実際には戦争してた様な国ですからね。やっぱり頭可笑しいと見て間違いは無いでしょう。多分。

 …………っと、そうこうしている内に、到着しましたね」


「そうだな。

 この時間なら、多分居るとは思うけど、居なかったら嬢ちゃん探さないとならないからな。

 流石にそれは面倒臭いから、居てくれると楽で良いんだけど、どうかねぇ……」



 完成品を抱え、ルルさんに運搬されなが目指していたのは、俺達が何時も使わせてもらっている食堂。


 時間的には、普段朝食を頂く頃合いではあるし、以前まだ深谷達がこの城に滞在していた時に何かと絡まれて以来、もう一つ在る来賓をもてなす用の食堂(ララさんからの情報)には近付いていないので、ほぼ確実にいるとすればこちらのハズだ。

 まぁ、居ない可能性も否定は出来ないのだけど。



「…………さて、っと。

 上手いこと居てくれるかなぁ~……あ、居た」


「おっ!本当だ。居た居た」



 食堂の扉を開いて中を見回すと、普段使っている机を占領して食事をしている何時もの面子を発見する。


 挨拶代わりにルルさんに抱えられたままで手を掲げると、どうやら向こうも気が付いたらしく、手を挙げたり、目礼してきたり、尻尾や耳を振り動かしたり、翼を動かしたり、と各自それぞれの動作にて挨拶の代わりとして返して来た。


 そんな皆の方へと、ルルさんに指示を出して移動し、同じ机の空いていた席へと腰掛ける。



「や、皆一日ぶり。桐谷さんは昨日ぶり。元気してた?

 あ、俺はこのスクロア肉のハンバーグセットで」


「ははっ!流石に、一日顔を合わせないだけで、そこまで変化するモノじゃないんじゃない?

 ……それと、また朝から重いモノを注文するね?僕にはちょっと無理かな。それと、大分疲れた顔してるけど、大丈夫かい?」


「まぁ、それもそうか?

 とは言え、こちとら徹夜でぶっ通しでの作業終わりでな。流石にガッツリ行きたい気分と腹具合なのさ。

 それでも、獣人(そっちの)二人と比べれば、全然軽いだろうに。見ろよ、あの肉の山。夜でも流石に食いきれるか分からんぞ?

 もう結構眠いから、早めにやることやって、食い終わったら風呂入って流石に寝るよ」


「……まぁ、そこはノーコメントって事で。

 それで?やることって?何か抱えてるみたいだけど、それ関連なのかい?」


「そう言うこった。

 ……て、訳で、はい、コレ」


「…………あ、私?

 え?なにコレ?」


「造ったから上げる」


「…………え?はい?どう言うこと?

 ……って、重!?結構重いけど、何が入っているのかな!?」


「いや、適切な重量になってるハズだけど?少なくとも、拵えの類いは要望通りになってるハズだよ?取り敢えず、開けて見てみれば?」


「…………え!?これって!?」



 訳が分からない、と言う顔をしながらも、俺に促されるままに包みを開いた桐谷さんの表情が驚愕に染まる。


 そして、驚愕からか、もしくは興奮からかは不明だが、抑えきれていない手の震えをそのままに、包みの中に在ったモノを取り上げる。



 白銀の中に黄金を融かし込んだ様な眩い光沢を備えた、中央が厚く表面は丸みを帯びたカーブを描き、相手からの攻撃を受け流し、捌き落とす事に特化した拵えとなっている。


 形状は分類上四角形に入るのだろうが、上を向いた三つの角と、一つだけ大きく離された角を持つそれは歪な菱形と呼ぶのに相応しい。


 大きさは、人の胴体部分をすっぽりと覆い隠すのに十分に過ぎる程には大きく、それでいて使用者たる彼女の望んだ取り回しを殺さないであろうギリギリの範囲に収められていた。


 縁の上部には、一定の間隔にて突起が備え付けられており、そこに相手の刃や爪、角や牙と言った武器を受け止めて絡め取り、逆に破壊する為のソードブレイカーとなっている。

 そして、その反対側の下部の角には、普段は内側へと仕込まれ、有事には握りの部分に仕掛けて在るギミックにより操作出来るスパイクが仕込まれており、引き倒した相手へと止めを刺す際の一助となる仕組みを組み込んである。


 重量も、彼女からのオーダーの通りに比較的軽量に抑えてあるが、本人もそこは理解しているハズなので、真っ正面から相手の攻撃を受け止める様な真似はしないだろう。




 エルダートレントを土台として、ミスリルベースのアダマンタイトとの混合鋼をふんだんに使用し、仕上げにオリハルコンによるコーティングを三重に施した、分類としては騎士盾(カイトシールド)に当たるであろその盾は、自惚れで無ければ正しく彼女からの要望をそのまま形に出来ているハズの逸品として出来上がっていた。




 震える手のままに、俺とルルさんの合作を手に取る桐谷さん。


 流れる様な華麗な動作にて盾を取り上げて前面へと構え、若干腰を落として相手からの攻撃を受け止める為の構えを見せる。


 その後、仮想敵からの攻撃を受け止める事をイメージしたのか、僅かに盾を傾けた直後に盾を払い、連動して尖った下方の角を地面へと倒れたであろう仮想敵へと容赦無く振り下ろす。


 まだ使い方を教えていなかった為に、本来ならスパイクが飛び出したであろうタイミングにて飛び出させずに済んだが、そうでなければ床へと大穴を空ける羽目になっていた事は間違いがないので、思わず出かけた冷や汗を腕で拭い、床の無事を心の底から祝わずにはいられなかった。



「……取り敢えず、アンケートで答えて貰った通りに造れてると思うけど、どんな感じ?違和感とか在るなら、言って貰えれば調整するけど?」


「………………」


「……あの、桐谷さん……?もしも~し?」



 見たところ、試しは終った様子だったので使ってみた感想を聞いてみるべく声を掛けたのだが、何故か彼女からの返答は何も無く沈黙を貫かれてしまう。


 流石に、初のプレゼント、と言う訳でもないが、それにしても女性に贈るモノにはちと血生臭過ぎただろうか?


 内心で戦々恐々としていると、それまで俯き具合に顔を伏せていた桐谷さんが、当然顔を上げると瞳を爛々と輝かせながら詰め寄って来た。



「凄い!凄いよ滝川君!私、ここまで手に馴染む得物って初めて握ったよ!

 まさか、あの時の質問で、こんなに凄いのが出来上がるなんて思っても見なかったよ!このグリップの処なんて、私の手に合わせて、わざわざ削り出ししてくれたんでしょう?そうでもないと、ここまでピッタリしっくり来るのなんて有り得ないでしょう!?」


「……お、おう。気に入って貰えたのなら、良かったよ」


「本当だよ!こうして使ってみたから解るけど、多分コレって色んな<能力>が付与されてるよね?しかも、一つは身体強化系の奴が確実に」


「まぁ、正解かね?

 俺が[探査(サーチ)]を仕掛けて見た限りだと、<身体能力強化・大>の他に、<不壊>、<全属性耐性・特大>、<魔法反射・大>、<防御可能範囲拡大・極>が付いていて、計五つ付いてる事になるね。

 と言っても、俺以外まだ正確に鑑定したりはしていないハズなんで、確率で間違ってる、ってパターンも有り得るんて、確認を取る場合は悪いけど自分で用意して貰う事になるがね?」


「……それだけの強力な<能力>が複数付与されている上に、希少なオリハルコンをこんなにもふんだんに使われているってなると、もうお値段だとか稀少価値だとかの方も、知りたい様な知らなくても良い様な……!?」


「その辺はあまり気にせずに、桐谷さんの為に造ったのだから使い潰さない程度に使って貰えると、贈った側としては気が楽になるんだがね。

 ……それとも、気に入らないから返却するかい?」


「…………そう言うことなら、喜んで使わせて貰おうかな?

 それと、以前の約束、覚えていてくれたんだよね?

 嬉しかったよ、ありがとう!」



 そう言って彼女は、ようやく溢れんばかりの笑顔をこちらへと向けてくれたのだった。






 なお、当然の様に、同席していた他の面々からも、要望がもりもりに詰め込まれた『おねだり』をされ、それぞれに製作する事を約束する(させられる?)羽目になるのであった。

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[一言] 胴田貫ヤベエ(´▽`)
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