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「……え~、では、コレより対策会議を開催致します……」


「「……わ~、ぱちぱちぱち……」」



 ドラコーさんの家に資料が届いた数日後。


 俺と加田屋と桐谷さんの三人は、閉めきられた部屋の一つに集まっていた。


 そして、俺の号令により、予め通達していた『対策会議』が開始された訳なのだが、皆一様にどんよりとした暗い雰囲気に包まれていた。


 それは、半ば無理矢理テンションを上げて、少々おどけて会議の開催を宣言してみた俺と、それに合わせてふざけてみた加田屋と桐谷さんの二人も共に、死んだ魚の目をしながら目元に黒々とした隈を作っていたからだ。


 何故、そんな死屍累々な状態にてこんな事をしているのか、と言うと話は簡単。


 俺達三人だけであの山のように存在していた資料を読み込み、情報の傾向を掴み、その上で使えそうなモノを集捨選択し、各自でモノになりそうなアイデアまで捻り出してこの場に臨んでいるからだ。


 何故に三人だけでやっていたのか?と問われれば、そちらも話は至極単純。



 あの資料の山に触り、理解出来た上で()()()()()()()()()のが俺達三人だけだった、と言うと事だったから。



 そもそも、ララさんは戦闘畑の出身のため、情報等の傾向を掴んだり、そもそもその手の解析作業自体がそこまで得意ではない。

 もちろん、俺がお願いすれば必死になってやってくれるのだろう事は分かっているが、だからと言って苦手な事を無理矢理やらせる事はしたくない。効率もよろしくないし、個人的にもして欲しくは無いからね。


 逆に、レティシア王女や使用人のお姉さんはその手の作業は慣れているみたいだったのだが、ララさんとは別の理由から泣く泣く断らせて貰った。


 レティシアさんは、俺達がこちらに滞在する為の表向きの仕事が在るし、その付き人としてお姉さんも同行してドラグニティ内部を飛び回る必要が在る。

 それに、何より資料の内容が内容だけに、そうホイホイ気軽に見せられる様なモノでも無かった、と言う事もある。


 何せ、こうして気軽に寄越されたとは言え、中身は丸っきり国家機密に相当するであろうデータの塊だ。

 悪用するとは思っていないし、そもそも帰ってから報告するとも思ってはいないが、だからと言ってドラグニティでは無い他の国の立場在る人間となっている二人に見せる訳には行かないだろう。常識的に考えて、不味い事にならない訳が無いからね。



 その点、俺達ならば一応はフリーだからね。



 ディスカー王国で召喚され、実際に世話になっている身では在るけれど、別段ディスカー王国に忠誠を誓っている訳では無いし、何より公式にディスカーでの地位が在る訳でも無い。


 故に、無いとは思うがオルランドゥ王から命じられれば目の当たりにした情報を開示せざるを得ない他の面々とは異なり、一応は対等に取引している立場上口をつぐむ事も不可能では無いからね。

 まぁ、口を開く(ソレをする)のに相応しいだけの対価を示されたり、拷問等の手段にて物理的に抉じ開けられたりした場合は話は別だけど。


 流石に、経験が無い、とは言えない俺とは違い、加田屋と桐谷さんに対してもソレを要求するのは話が違うし筋違いであるのも自覚しているからね。


 そんな訳で、部屋一つ占領しようとしていた資料の山々を三人で手分けして整理し、それぞれでジャンルを分けてデータへと落とし込み、その上でそれぞれの傾向と有用そうなモノのピックアップに今年の情報との照らし合わせを行い、更にはそれらを活用すればこんな事も出来る……かも?と言ったアイデアまでそれぞれで用意して来たのだ。


 他の人達の手を借りず・借りられずに、数日間ずっと付きっきりでそんな作業を行っていたのだから、そりゃ死んだ魚の目にもなるし、隈の一つや二つも出る。多少テンションがおかしくなるのも、当然と言うモノだ。多分。


 なので、そんな重労働から解放された直後にて、解放感から意識を喪失させる前に意見出しだけは済ませてしまおう、とこうして集まり、最初の変な開催の宣言となった訳なのである。



「……取り敢えず、俺から発表するぞ~……。

 まず、俺の担当として見てた気温・天候・地質・地形の類いの情報から鑑みると、こっちに例の小麦を持ち込むのは現実的じゃなさそうだなぁ……。

 アレを栽培しようと思ったら、それなりに水回りの良い土地じゃないと良くないんだけど、こっちは基本的に国土が荒野な上に、比較的肥沃な土地は既に他の産業で使われている。

 雨もそこまで多くは無いみたいだし、川の近くに新しく拓いたりだとか、運河を造るだとかは現実的じゃないし費用対効果もよろしくないから無理だろうね……」


「……向こうでしたみたいに、品種改良してこっちでも作れる様にしてみたりだとかは……?」


「……ソレをやっても良いんだけど、そうするとこっちでのぶっつけ本番になるから、流石にそれはやりたくないし、どうなるのかも分からないから却下~……」


「……じゃあ、次に私の担当していた畜産だとか漁業や食品系の加工業だとかの観点からの報告だけど、やっぱり二次的な加工食品等を流通させようって考えは無理っぽいね~。

 加工する為の技術もそうだけど、何よりモノが基本的に日持ちしないし、そもそも加工出来るだけのモノも無ければ、仮に加工出来たとしても流通させられるだけの移動手段も販路も無いみたいだから、注力するだけ無駄になりそう……」


「……仮に、ディスカー王国との販路を無理矢理開いたと仮定した場合も、やっぱり採算は取れないと見た方が良い感じですかね……?」


「確かに、滝川君の発言力なら、一時的には開けるかも知れないけど、それも長続きするとは思えないし、そもそもディスカー王国で需要の在る様な商品をこっちで作れるのか、って言うと微妙だからね……。

 なんでこの国、文明的な衰退具合ではディスカー王国よりはましなのに、食料関係はディスカー王国よりもガタガタなんだろうね……?

 やっぱり、立地的に畑を広げられなかったからなのかな……?」


「……そこは、どうなんだろう……?

 対魔物戦線の最前線が近かった事で人の手が周囲の土地に入らなくなり、その結果荒野化・砂漠化が進んだ、って可能性は否定しないけど、だからってそれだけが原因なのかな……?」


「……まぁ、そんな、考えても分からない事を気にする様な段階じゃないんだから、考えるだけ無駄じゃろ。

 ほれ、加田屋も早く報告しておくれ。でないと、そろそろ本格的に意識が途絶えかねん。

 ……三日位なら寝なくても平気な俺をここまで疲弊させるって、マジで呪いの類いでも掛かってたんじゃ在るまいな?あの資料の山って……」


「了解~……。

 じゃあ、僕が調べていた工業、鍛冶、建築、その他諸々の物作り系統の方面に関してだけど、そこまでじゃない、って結果だね。

 ……いや、より正確に言えば、鍛冶を除いたその他はそこそこって感じで、鍛冶を初めとした冶金業は『そこまでじゃ()()()()()』って言う表現が正しいのかな……?」


「……随分と、勿体振った言い方をするんだな……?

 それに、何かしらの含みの在る台詞に聞こえるんだが……?」


「まぁ、そりゃ、ねぇ……?

 他の分野では、独自の路線で技術を確立しているし、他の国と競合状態になったとしても多分どうにかなるんじゃないの?って言う程度には技術力は在るみたいだよ……?

 でも、鍛冶はもう無理だね……。そこだけは断言出来るよ。

 何せ、僕らが伝え教え、ソレを受けたドワーフの職人達によって実際に量産され、その上で最前線にて一定以上の成果を出してしまっているディスカー王国産の武具に、もう殆どのシェアを食われてしまっているから、ココから逆転させようと思うと、もう僕達が肩入れして入れ知恵する位しか価値筋は無いんじゃないかな……?」


「…………あぁ、そう言う事ね……。

 まさか、そんな影響を及ぼして来るとは、流石に予想外だったな……」


「まぁ、良かれと思ってやった事だし、やってなかったらもっと被害が出ていただろうから、あんまり気にする事は無さそうだけど、面倒にはなったかなぁ……?」


「そうだねぇ……。

 流石に家畜は直ぐには増えないし、そもそも牧草地として使えそうな処はもう畑になっているみたいだから使えないから、食肉をどうこうするのも難しそうだし、どうしようか……?」


「…………まぁ、その辺は、俺が出しておいた魔物の間引きとその素材の活用法とかで食肉は増えるだろうから、やっぱりアプローチとしてはそこら辺に絞った方が良さそうかね……?」


「「…………異議、な~し……」」


「……じゃあ、取り敢えずは次回までにこの近辺で良く獲れる魔物の情報とそれが食肉可なモノか、もしくは既に食べられているのか、またはその人気と性質を調べておくって事で。

 以上、解散……!俺は、もう、寝る……!!」


「「……うぇ~い……!!」」



 俺の解散の号令により、全員が全員深夜帯のテンションに差し掛かった状態にて適当に返答をしてから、それぞれに振り分けられている部屋へと向かってフラフラと歩いて行く。


 その間にも俺は、そう言えば魔物の肉って固かったっけ……?だとか、アレってあの時のアレだけだったら良いな……だとか、でも味は良かったよなぁ……だとかを倩と考えつつ、技術的に出来るか分からないけど、熟成肉とか出来たら面白そうだな、と最後に考えながらベッドへと倒れ込み、服を着替えたりだとか、何故か隣にララさんが潜り込んで来たりと言う事を考える間も無く、僅か数秒にて意識を喪失させて夢の世界へと旅立つ事になるのであった。




 ……なお、そうやって眠っている間に、ララさんによって少々『イタズラ』されてしまったりだとか、翌日の昼過ぎまで寝続けたりしたりだとかしたけど、それはまた別のお話である。

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