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誤字報告ありがとうございますm(_ _)m

 

 俺達がドラグニティへと到着し、レティシア王女が皇帝陛下(名前?そう言えば知らねぇや)へと謁見してから一夜が経過した。


 あの後俺達は、面識の在る者との方が良いだろう、との陛下からの判断により、ドラグニティに滞在する間の案内人兼お目付け役として付けられたドラコーさんのお宅に泊めて貰う事となっていた。


 一応、外交官として働いているらしいドラコーさんは、本人曰く『そこそこの広さ』の家を持っていて、流石に俺達一行が全員上がり込むと多少手狭になるのだが、それでも暫くの間生活する程度であればどうにでもなる位のスペースは確保出来るだけの広さを持っており、到底『そこそこの広さ』等とは言えない様な規模のモノであった。


 しかし、このドラグニティに於いては、平均的な一家族が持つ家としてはまぁまぁ程度の規模のモノであるらしく、彼女の言う『そこそこ』と言うレベルは謙遜でも嫌みでも何でも無かった様子だ。

 もっとも、元々『家族向け』の建物に『独りで』住んでいた為に、設えられていた大半の部屋が使われる事無く余っていた、と言うのが実情であるみたいだけど。

 まぁ、そのお陰でこうして拠点を得る事に成功したのだから、特に何を言うつもりも無いのだけどね?


 ……だが、何を思ってわざわざ特定の相手もいないのに、家族向けの物件を契約したのかはいつか問い質して見たいと思わなくも無い。

 キッチンやトイレ等を含めずに純粋な部屋数だけで十近く在るのに、その上で地下室まで備えてある物件を契約する必要性が何処かに在ったんだろうか……?


 その辺りを問い質してみたくもあったのだが、なんとなくその辺に触れるのは『良くない』と俺の勘が告げていたので、敢えて触れる事無く口をつぐんだりもした。


 その他にも、基本的に使わないのに、購入時に張った見栄のお陰で矢鱈と綺麗な状態で使われていなかった台所があったり、その逆に掃除関連は得意でチリ一つ落ちていない綺麗な部屋へと通されたりした事を弄ってみたり、ドラコーさんからも



『そこまで言うのでありましたなら、そちらは当然作れるのでありましょう!?なら、自分の目の前で作って見せるのであります!!』



 と逆襲したつもりでいたにも関わらず、俺が用意しておいた食材で夕食を仕立て上げると、そう言えばそうだった……、と言わんばかりの表情にて床へと崩れ落ちていたり、と中々騒々しくも楽しい一夜が明けて現時点。



 俺の目の前には、資料である紙束が積み重なった山が幾つも連なり出来た山脈が高々と聳えていた。



 まるで、請求した俺に対しての嫌がらせなのでは?と勘繰りたくもなる程の高さを誇るその山々は、今もドラコーさんの指示により動く蜥蜴人の人々により増加を続けており、俺の目の前にて更に新たな山が一つ築かれて行く。


 朝食を終え、今後の予定を立てようにも、取り敢えず俺に関しては情報が来ないことには動けないんだけどね?と話していた時の出来事であった為に、特に心構え等が在った訳でもなかったので、こうして呆然と見守っているしか出来ないでいる、と言う訳だ。


 そうして作業が進む事暫し。

 漸く搬入が終わったらしい蜥蜴人の人達を労う為にお茶と茶菓子(蜂蜜とドライフルーツを使った自作お菓子)を出し、一休みして貰っている間にドラコーさんを別の部屋へと引っ張り込む。



「ちょっ!?ちょっと!何をするのであります!?こんな日の高い時間にそんな事をされると、自分としても困るでありますよ!?」


「……何を勘違いしているのか、そちらはそちらで聞き出したい処ですが、今回の本命は別口です。

 ……あれは、一体なんですか?間接的な嫌がらせですかね??」


「なぁんだ。移住を決断したのかと期待して損したであります。

 で、アレでありますか?アレなら、タキガワ殿が求められた報酬でありますよ?当然でありましょう?」


「…………え?アレが?アレ全部?一部が本命の資料で、他はフェイクの駄文だとかじゃなくて?」


「そんな事しなくちゃならない理由も、そんな無駄な事をする時間も無いのに、そんな事するハズが無いでありましょうに。

 それとも、そんな悪戯を通り越した悪意をぶつけられる心当たりが、タキガワ殿の方には在ると見ても良いのでありますかね?」


「そんな訳無いですよ。この国に到着したのだって昨日ですよ?

 なのに、そんな恨みを買う覚えが在る訳無いでしょうに。

 むしろ、そこら辺は『そうだったら良いな』と言う願望とでも言いますか、そうだったら大半は見なくても良いヤツなんじゃないかなぁ?と言う切実な願いと言いますか……」


「…………まぁ、その気持ちは理解出来なくもないでありますよ?

 自分も、この量は見てるだけで眠くなってくるのであります。

 でも、ソレを要求されたのはタキガワ殿本人なのでありますから、そう言われるのは如何なものかと思うでありますよ?」


「……ここまでの紙束の山を見せられては、そうも言いたくなると言うモノですよ……」


「ご自分で望まれたのでありますから、そんな事を言われても仕方無いのであります!

 さぁさぁ!時間は有限であります!早く目を通して、我らがドラグニティに潤いをもたらす何かを提案するのでありますよ!

 ついでに、こっちに移住を決めるのであります!」


「……随分とまぁ、ぶっちゃけた話をしおるのこの女性は……」



 呆れつつ半分、非難半分の割合にて視線を目の前でニヤニヤと笑っているドラコーさんへと向けつつ、取り敢えず一番手前の山の天辺に在った紙束を手に取り目を通す。


 どうやらそれは地理的なモノを記した資料であったらしく、軽く斜め読みをしてみた限りでは、大雑把にこのドラグニティ帝国が存在している土地と、その周辺の国々の土地がどの様な土壌で、どの様な気候帯に在るのか、雨季は一年の内のどの辺りでやって来て、そこではどのくらい続くのか、と言った事が書かれているみたいだ。


 ……そして、その情報の細やかさと専門的な用語の多さに、言葉だけでなく文字も読める様にしてくれていた神?(的な存在)に若干の感謝の念を送りつつ、このレベルでの詳細な情報を丸っと投げて来るなんて、余程信頼しているのか、もしくは最初から自陣営に取り込む気満々だ、と言っている様なモノでは無かろうか?

 そうでもなければ、こんな国家機密レベルの情報を、そう易々と山が幾つも出来る程に投げて来るハズが無い。


 少なくとも、普通はもっと情報の水準を落として純度の低い資料を渡すハズだ。少なくとも、俺の様なまだ陣営に付く事を拒んでいる様な相手には、これだけ価値の在る情報は普通渡しはしないハズなのだ。

 もしかしたら、実績を上げるだけは上げさせておいて、全部終わったらサクッと暗殺してお終い、とか言うオチを狙っている可能性も否定出来ないが、それでもここまでやる必要は無いだろう。ハッキリ言ってリスクとメリットが完全に釣り合っていないのだから。


 なんて事を倩と考えながら、取り敢えず目を通したその紙束を元の位置に戻し、他の山の天辺から一つずつ手に取って順に目を通して行く。



「…………主な畜産、食料の好まれる傾向、生産量の高い麦と収穫の時期に、現時点での作物の収穫見込み一覧。

 他にも、現制度での税収一覧に、採掘される予定の鉱石の種類と採掘量の予想と、それらを消費して制作し納付される予定の武具や道具の一覧、その他諸々エトセトラエトセトラ……。

 それに加えて、今年の分だけじゃなくて、過去の情報等も含めて丸っと渡して来たって、コレマジで何考えてるんだ……?マジもんの国家機密じゃねぇのよ……?」


「ソレを要求されたのはタキガワ殿でありますし、ソレを渡す事を承認したのは陛下でありますから、自分が口を挟む余白は無いであります。なので、自分に言われても知らん!と言うのが正直な処でありますな。

 まぁ、それだけ信頼されたと見るのが良いのでは?もしくは、意地でも逃すつもりが無いと表明されたと取って、諦めるのも一つの手でありますれば♪」


「…………なんで、そんなに嬉しそうと言うか楽しそうなんですかね……?俺の(残り少ない)人生掛かってるんですけど……?」


「いえ?別に?

 ただ、もしそうなった場合、比較的陛下と近しい関係性に在り、その上で主要な皇族から外れた存在であり、かつタキガワ殿と比較的親しい間柄で面識も在る者が『確実に!』世話係兼伴侶として半ば強制的に寄り添う事になるのは間違いないと思われるのでありますが、その場合の人事は確実に自分になるハズであります!

 なれば、優秀な伴侶と共に毎日あの様な美味を味わえるのかと思えば、自然と楽しくもなると言うモノであります!」


「…………そこは、強制的に良く知らない、好きでもない相手とくっ付けられる、って事を絶望する処じゃないんですかね……」


「……?いや、全く?

 自分としましても、タキガワ殿の事は嫌ってはいないであります。むしろ、好きな部類でありますよ?それに、知らない間柄でも無いでありますし、何よりタキガワ殿って実は結構戦えるでありますよね?なら、産まれる子供も当然強いハズでありますし、何よりタキガワ殿の資質を受け継ぐ子ならば将来安泰は間違いないであります!

 なので、自分としては願ったり叶ったりなので特に不満は無いでありますよ?」


「………………本来なら言われても嬉しい台詞のハズなのに、何故か素直に喜べないんだよなぁ……」


「……ん!それは、当然。タキガワはこっちに残らないし、何よりタキガワの子を産むのは吾。これは、確定事項!」


「ちょっと!?そこは、向こうにいた時からの知り合いで、向こうに戻ってからの伴侶として内定している私の役目でしょ!?」


「……うーん、取り敢えず、男に戻れるか分からない僕も、ここに参戦するべきかなぁ……?」


「……こ、ここは、私も参戦しないと印象が薄れる事に……!?

 ……で、ですが、婚姻も結んでいないにも関わらず、男女の秘め事を口にするなんて……!?」


「……はい、そこの四人~。下らない事に参戦する位なら、この資料の分別手伝ってね~」


「「「「は~い」」」」



 ニヤニヤ笑いを浮かべ、本気なのかどうなのか定かではない事を口にするドラコーさんの言葉に巻き込まれる様にして駆け込んで来た面々に対し、半ば呆れから溜め息を吐きながら、もののついでに、と資料の整理へと巻き込んで行くのであった。

ブックマークや評価、感想等を貰えるとやる気がもりもり沸いてくる……ハズ!多分!

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