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 突然かつあまりに衝撃的な出来事に、控えの間にて待機していた俺達召喚者組は情報が処理しきれずに固まってしまう。



 ……え?あの壮年の男性(ナイスミドル)、ここの皇帝だったの?


 ……え?今、ドラコーさんって皇帝陛下の事を指して『大叔父』って呼ばなかった?


 ……え?と言う事は、ドラコーさんって実は皇族で、結構やんごとなき身分のお方だったんじゃないの?割りと雑に扱ってた覚えが在りすぎるんだけど?



 そんな俺達とは別に、皇帝と言う地位に在りながら気さく過ぎる振る舞いを見せた(実際には一言も喋ってはいなかったが)彼の行いに、使節にして王族の一人であるレティシア王女と、今回の事で皇族(少なくとも血縁の一人)として認識されてしまったドラコーさんも、今後の話し合いをどうしたモノか、もたらされた事実をどう利用するべきか、と言ったベクトルにて頭を抱えている。


 そんな中、唯一皇帝陛下の登場にも動じずにハスハスを続行していたララさん(使用人さん達も皇帝陛下が入室してきた時には言葉を漏らして動揺を顕にしていた)が、相変わらずそのフサフサで夜以外は触ると大変な事になる尻尾を振り回しながらこの場にいる皆へと声を掛ける。



「…………ん。満足。

 取り敢えず、立ってないで座れば?吾達からも、そっちからも、話さなきゃならない事が在るんでしょ?」



 その一言に促される形で、部屋の中に設置されている椅子へと腰を下ろす面々。


 流石に、半ば機密染みた事をこれから話す事になるので、控えていた使用人さん達には退席して貰い、代わりにディスカーから同行してくれている使用人のお姉さん(未だに名前不明。流石に不便になってきた……汗)が茶器を使って追加された面子へとお茶を容れて置いて行く。


 そして、一通り容れ終えた彼女が壁際へと下がった事を皮切りとして、レティシア王女とドラコーさんが先程の件について口を開く。



「……先ずは、予定の通りに謁見の結果と、今後の流れをご説明させて頂きます。

 謁見の方ですが、こちらはほぼ恙無く終える事が出来ました。と言っても、ディスカー国王である父上からの親書を渡し、私の視点からどの様に会談が進んだのか、を伝えるだけでしたので、大した事は無かったですけどもね?」


「まぁ、表向きの用立てはソレだけでありましたからね。

 こうして、各方面にも、ディスカーからの使節が親書を持ってきた、と言う表向きの理由(カバーストーリー)を読ませる事が出来る様になったので、本格的にタキガワ殿には動いて頂く事になると思うのであります。

 期限は、約二月程。これは、使節が国内を視察し、各所との交流を図り、その上で諸々の手続きや会談を行ってギリギリまで逗留を延長しても怪しまれない水際の日程となっているであります」


「詳しい依頼内容自体は、ここまでに移動する間で陛下から教えて頂く事が出来ました。

 なんでも、短期的な政策としては、既にタキガワ様があの時に挙げられていたモノをもう少し煮詰めればどうにかなりそうだ、と言う事なのでもう達成した、と言っても良い状況に在るとの事でしたが、他にも外貨獲得の為の長期的な政策、ないし産業の様なモノを立案して欲しい、との事でした」


「まぁ、そちらはこちら側の情報無くしては立てようが無いでありますし、何より主目的でありました依頼の方は既に片付けられているのも同然。と言うよりも、既に達成しているのでありますから、時間的にはそれなりに余裕が在るのであります。なので、このドラグニティを知りながらでも適当に何か考えて頂ければ良いであります。

 ちなみに、報酬の方は確り払わせて頂くでありますよ。陛下もああ言っておられたので、文字の通りに『何でも』請求して頂いて良いであります。

 もちろん、これは既に達成している献策の方への報酬でありますからして、これから取り掛かって頂く方の報酬は、別途で望んで頂いて結構であります。

 取り敢えずは、こんな処でありますかね?」



「…………いや、まだ残ってますよね……?」



 急いで話をたたもうとしていたドラコーさんへと、ジットリとした視線を向けながら追及を始める。


 当然、それを嫌ってか、もしくは面倒に思っていたのであろうドラコーさんも、自身が話をはぐらかそうとしていた事がバレている、と悟っているからか、視線を泳がせて下手な口笛まで吹いてどうにか誤魔化そうと試みている。


 が、俺だけでなく加田屋や桐谷さんまでもが彼女に対してジットリとした視線を向け始め、ソレだけでなくレティシア王女までもが苦笑を浮かべながら手振りで『早く話してしまいなさいな』と促し、それでもまだ抵抗する彼女に対して止めを刺すかの様に、加田屋が無駄に軽快な動作にて泳いでいる視線の先に回り込んでジットリとした視線を向け続けた結果、無言の圧力に負ける形にてドラコーさんが口を開く。



「……分かった、分かったであります!自分と皇帝陛下との間柄と、このドラグニティに於いての自分の身分についても話すでありますよ!

 と言っても、大した事は話せないでありますよ?それでも構わないでありますか?」


「えぇ、嘘さえ吐かなければ、話せない事は話さなくて結構です。

 ……嘘さえ吐かなければ、ね……?」


「……なんだか、意味深な台詞でありますなぁ……。

 とは言え、本当に大した事は話せないでありますよ?

 自分は確かに皇帝陛下の、皇族の血を引いていると言えば引いておりますが、それも自分の祖父が皇族の出身であり、現皇帝陛下の兄に当たったからであります。

 当時は比較的世間は穏やかで皇位後継者に大層な資質は求められておらず、皇位による統治を厭った自分の祖父が臣下へと降ったことにより現皇帝陛下が皇位に就かれた、と言うだけの話であります。少なくとも、自分の家にはそう伝わっているでありますし、当の本人である祖父もそう言っていたであります」


「……世間が穏やかだった……?

 随分と、昔の話みたいな気がするのですが?少なくとも、ここ百年位の話では無いですよね?」


「まぁ、自分達竜人は長生きなのが特徴の一つでありますからなぁ。普通に千年位なら生きるでありますよ?」


「……oh……」


「……アレ?言ってなかったでありましたっけ?

 まぁ、良いであります。それで、自分の身分的な事柄でありましたよね?それも、大した事は無いでありますよ?

 貴族制のディスカー王国であればまた話は違ったかも知れないでありますが、我らがドラグニティは特権階級は皇帝陛下のみで、他は手柄の大小や多少の身分の差は在れど、明確に序列付けられた階級制度と言う訳では無いであります。

 なので、ディスカー王国では自分の家は公爵位に相当するかも知れないでありますが、別段特に何か特権を持っていた訳でも、豪邸で贅沢三昧していた訳でも無いであります。

 ……まぁ、こうして外交官として外に出られる程度には、キチッとした教育を受けられた事は、特権であったと言えば特権であったかも知れないでありますけど、強いてあげれば、と言う程度でありますので、特に覚えは無いでありますなぁ……。

 もっとも、血縁故に皇帝陛下へのお目通りが比較的しやすく、陛下からも密命を下され易いのが特権と言えば特権でありますが、その分下手な外交よりも繊細な神経を使う場面に出会す確率も高いので、特権と呼んでも良いのか微妙だと思うでありますよ?」


「……じゃあ、お貴族様みたいな、使用人さんずらーっと!みたいな生活はしたことが無い?」


「無いでありますし、寧ろ憧れるでありますね~。

 そんな、分かりやすく裕福な生活なんてした事は無かったでありますから、いつかしてみたいものでありますなぁ~。

 まぁ、正真正銘の皇族であれば、ソレくらいの生活はしているかも知れないでありますけど」


「……まるで、自分は皇族ではない、みたいに言っている様に聞こえますが?」


「まぁ、実質的には違う様なモノでありますよ?

 一応は血縁とは言え、既に臣下に下って三世代目であります。

 故に、既に位置付けとしてはもう傍流も良い処でありまして、自分の父の代にて既に皇位相続権は消滅しているのであります。

 未だに本人が現役では在るので雑な扱いをされる事は無いでありますが、そろそろ長寿な竜人でも世代交代の為に引退を余儀無くされる頃合いであります。なので、そろそろこうして陛下に比較的気軽に謁見を申し込める、と言う特権も使えなくなるでありますなぁ」


「……へー。まぁ、その辺はどうでも良いか。

 俺への依頼にも、あんまり影響しなさそうな雰囲気だし、その辺は突かなくても良さそうな隅なんで、基本的にはノータッチで行く感じで。

 じゃあ、早速俺への報酬を使わせて貰いますけど、良いですよね?具体的には、この国で現時点で行われている主な産業と、過去に試みられた試作、並びにこの周辺で良く食べられたり産出されたりするモノのリストとサンプルをお願いします。

 公開しても良いモノ、公開したいモノ、公開したくないモノ、文字の通りに『全部』お願いしますね?」


「……え?あそこまで聞き出しておいて、最後の最後でそんな返し方普通するでありますか……?

 と言うか、報酬の使い方が予想外すぎるのでありますが?

 普通、そうやって使う……?」



 なんでも、と言われていた報酬により、最も重大な情報を求めた結果、何故か怪訝そうでかつ不満そうな表情をされてしまったが、特に『無理』とは言われなかったので多分大丈夫だろう、と判断した俺は、ソレによってもたらされるであろう情報にて何処まで出来るのかを若干不安に思いながら、部隊にいた時の記憶までも引っ張り出して万全に事を運ぶ為の覚悟を決めるのであった。




 ……なお、この際の報酬により、このドラグニティの上層部に於いての俺の位置付けが『有用かも知れない人材』から『下手をしなくても危険過ぎる要注意人物』へと変更される事となるのだが、ソレを俺が知るのは大分後になってからの事である。

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