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 ララさん率いる騎行隊の華麗なる強襲により、階段前の広場に集まっていた魔物共は呆気なく蹴散らされてしまう。

 それにより、逃げようかどうしようか、と悩んでいた俺はその機会を逸してしまい、目を血走らせながら駆け込んで来た女性陣の手によって捕獲されてしまった。


 その際



『自分達に散々心配を掛けさせたのにも関わらず、本人は知らない泥棒猫(女の子)とイチャイチャ(偏見です)していた事は重罪に値する。よって三日三晩程付きっきりで『お付き合い♥️』して貰うべきなのでは?』



 との、実質的に俺に対する腹上死(死刑)宣告がなされかけたのだが、俺の必死の説得(隣の女子(笑)は加田屋だし、こっちも必死に生き抜いて来たのだからそんな事はしていない等々)によりどうにか回避する事に成功した。

 ……まぁ、その代わりに、女性陣それぞれに対して後日埋め合わせをする事を約束する羽目になったのだけどね?


 ちなみに、埋め合わせが『後日』になったのは俺の身体のダメージが思ったよりも多く蓄積していたから。

 流石に、後数ヶ月程度、とまでは行かないだろうけど、多分残りは多くて二年位かなぁ?下手をすれば、もっと残ってないかも?もっとも、あくまでも『現時点で』と注釈が付くから、この後必要に駆られて使う様な事になれば、もっと縮むだろうけどね?



 もっとも、そんな事は敢えて言い触らしはしないし、何より今は全く関係の無い事だから割りとどうでも良いことなのだけど。



 なんて事を内心でのみ溢しつつ、ララさんとレティシア王女による報告を、ベッドの上にて聞いて行く。



「……さて。私としましても、色々と言いたい事はありますが取り敢えずはこう言わせて頂きます。

 ……ご無事で何よりでした。心配、したのですからね……?」


「…………ん。正直、カタヤと消えた時は、吾の心臓が止まるかと思った。お願いだから、もうこんな事は無い様にして……!」


「……善処はしますが、ほぼ不可抗力だったと言う事は覚えていてくれませんか……?」


「「それでも(です)……!!」」


「…………了解」



 出来ない約束はしたくない派だったのでどうにかはぐらかそうとするも、二人が強行に押してくる為に渋々承諾させられてしまう。


 その事で多少不機嫌になり掛けるも、俺から言質を取れた、と喜んでいる二人の様子にそんな下らない感情も萎んで行き、まぁ良いか、との心境に至った俺は手振りで二人に続きを促す。



「……んんっ!失礼しました。では、続けさせて頂きます。

 まず、救世主タキガワ様のご友人であり、今回の被害者でもあるカタヤ様を無理矢理ダンジョンへと連れ出した『勇者』フカヤ達ですが、あのトラップが発動した後、あろうことかタキガワ様達の救助へと向かおうとする私達を引き留め、自分達を護衛させてダンジョンを脱出しようと企むだけでなく、私達に自分達と性的な関係を持つ様に迫って来ました」


「……ん。あの男の気持ち悪さは、今でもまだ覚えている。思い出しただけで、鳥肌が立つ。

 ……でも、あの『自分達の言う事を聞いて当然』『自分達に跪いて当然』と言わんばかりの態度と自信は何処から来るのか不思議で仕方がない。あの程度の強さしか無いのに、何処から湧いてくる……?」


「その疑問点には甚だ同意しかありませんが、本筋からは外れてしまうのでそこまでにしておきましょう。

 さて、先程の続きですが、当然私達はその申し出を一考の価値も無いモノとして速攻で却下。同時に、実力行使に出てきた『勇者(笑)』一行(愚か者共)を蹴散らしてタキガワ様とカタヤ様の探索を開始致しました」


「……ん。正直、気が動転していたし、何より何処に飛ばされたのかも分からなかったから、虱潰しに探す羽目になった。大変だった……」


「……大変だったのは分かったので、話の途中で抱き着いて旋毛の匂いを嗅ぐのは止めて貰えませんか……?

 話に集中出来なくなりそうなんで」


「…………ん。無理。吾は、癒しを求めている……!」



 以前並みに絡み付いて来るララさんを振りほどこうとして、矢鱈とフサフサとしている感触だったり絶妙に柔らかい感触だったりが手を襲い、ララさんの口からも甘く蕩けた様な声が溢れて来る。


 流石にこのままではララさんに押しきられて喰われそうなのでレティシア王女に助けを求めるが、彼女は僅かに頬や耳元を赤らめながらも何事も無かったかの様に報告を続けて行く。



「……先程のララの報告で、残りの全ての説明が付けられた様にも思えますが、一応その後の流れを。

 取り敢えず、第二階層を虱潰しに捜索した私達は、その後三階層へと降りて捜索を続行致しました。そして、埋まった地図の範囲からして大体半分程の探索を終えた時点でララが急激な反応を示しました。私達はそれを追い掛けて行き、例の階段を発見。

 その後については、タキガワ様も知っての通りとなります。

 ……それと、ララ。後でソレ代わって貰っても良いですか?私も一度試してみたいので」


「………………ん。少しだけ。少しだけなら、許す」


「……いや、そこは俺に確認を取って下されよ。それに、ララさんもそんなに渋々嫌々許可出さなくても……」


「それは、少々難しいかと。何せ、求愛期の獣人は独占欲が強まりますので、『群れ』の下位のモノが勝手な行動を起こすとそれだけで何が起きるか分かりませんからね。下手をすれば、殺し合い……とまでは行かなくとも、流血沙汰になる可能性は高いかと。

 さて、では最後になりますが二つ程。一つは、あの事件の切欠となった『勇者(笑)』一行の処分について、です。

 流石に、異世界からの招き人とは言え、これまで多くの女性に無理矢理関係を迫ろうとし、自身の実力以上の功績を求めて周囲に被害を出しただけでなく、私達の希望である救世主様を危険に晒す事になったので陛下も厳罰に処する事を決められた様子です」


「……流石に、あの程度で処刑とか言われると、こっちの寝覚めが悪くなるですが……?」


「私個人としましては、そのくらいの事はしてやりたいと思っていますが、流石にそこまではしない様です。

 精々が、重犯罪者達が送られる魔物も普通に出現する鉱山に送られるか、もしくは前線の騎士団への慰問に送られるか、と言う程度になるのではないでしょうか?私も、陛下からはそう聞いています」


「…………ん。それは、中々えげつない。重罪を望んだ吾が言うのもなんだけど、陛下もかなり思いきった判決を出した……」


「えぇ、そうですね。ある意味、斬首されるよりもキツい刑罰だと言われていますからね……」


「…………え?どう言うこと……?」



 納得していると言うか、どちらかと言うとつい先程まで憤っていたハズの相手にたいして憐れみや同情と言った感情を向けている二人に対し、一人だけ話が呑み込めていなかった為に敢えて口に出しながら首を傾げる。


 確かに、現代っ子でモヤシ……とまでは行かないだろうが、それでも筋骨隆々のゴリマッチョって訳でも無い深谷達では鉱山での重労働は厳しいモノになるだろう。

 それに、前線にてストレスや諸々の溜まった騎士団に対する慰問と言うのも、精神的に厳しいモノが在る……かも、知れない。多分だけど。


 でも、だからと言って、寸前まで過激な思考に走っていたこの二人が、端から毛嫌いしていた深谷達に対して同情心を示す事態となるとは、一体何をさせられると言うのだろうか……?


 それとも、この世界の住人では無い俺にはまだ理解出来ない、現地人にのみ通じる隠語の様な意味合いでも在ったのだろうか……?


 そんな俺の内心を察してか、二人掛かりにて色々と説明してくれたのだが、その内容は俺の想像を上回るモノ……と言うよりも、敢えて想像しなかった方面のモノが事実として突き付けられる事となった。



「……つまり?そのレベルの重罪人は、基本的に男ならば鉱山へ、女ならば犯罪娼婦として娼館へと送られる事になるので?そんな処に特に外見が劣る訳でもなく?若くて細身の深谷達を放り込めばさぞやむくつけきガチムチのアニキ達が『可愛がって』くれるだろう、と?

 それと同じ様に?前線の騎士団への慰問って言うと、基本的には娼婦や男娼が行う事で?基本的には『そっち系』のアレコレがメインになるために?あいつらを『買う』のがガチムチのハードゲイになるか、それともゴリラも真っ青なアマゾネスになるのかは置いておくとしても?ほぼ確実にそう言う連中の『お相手』をする羽目になる、と言う事で合ってる?」


「「……まぁ、大雑把に言えば(ですが)……」」



 顔見知り程度とは言え、一応はクラスメイトだった連中に下されたあんまりと言えばあんまりな刑罰に、思わず絶句しながら放心する。


 確かに、一時期はマジでぶち殺してやろうか!?とも思っていたが、だからと言って処女を散らす様な羽目になれ!と願った事は流石に一度も無い。

 ……成る程、確かにコレは死ぬよりも逆に辛い刑だ、と納得した俺は、残るもう一つの報告についてレティシア王女へと促す。



「……ま、まぁ、あの連中はもう放っておくとして、残りの報告についてお願い出来ますか?」


「……了解しました。最後に、カタヤ様についての報告になりますが……」



 レティシア王女が報告の題目について言及したのとほぼ同時に部屋の外が騒がしくなり、思わず彼女も報告の手を止めてしまう。


 そして、廊下の騒がしさが頂点へと達し、俺の部屋の前にまで到達したその時。

 特にノックや誰何の声が掛けられる事もなく、唐突に部屋の扉が押し開かれる。


 すわ敵襲か!?と半ば反射にて身構えた俺の視界へと、つい今しがた話題に登った加田屋が、何故かミニスカートにキャミソールと言う『THE・女子のオシャレ私服』と言った風体の格好をしながら立っていた。


 そして、普段の通りに見えながらも、若干の自棄っぱちが感じられる笑顔を浮かべつつ、顔の横で横向きのピースサインをしながらトンでもない事を抜かしてくれるのであった。





「やっほー!滝川君!調べてみて貰った処、どうやら普通の手段ではもう元には戻れないっぽいから、コレからは女の子として生きて行く事になりました!つきましては、格好からソレらしくしてみたんだけど、どうだろうか!?

 僕としては、そこまで悪くない出来だと思うけど、でもやっぱりこの手のトンでもイベントは自分には起きて欲しくは無かったって言うのが本音だよチクショウめが!?」





 ……思わず、確認の為にレティシア王女へと視線を向けるも、する予定だった報告の通りの内容であったらしく、ただただ無言のままに首を振られるのであった。



 ……正直、俺も友人が女の子になるなんて衝撃の場面を目にする事になると思って無かったよ……。

 え?マジでどうにもならないの!?ガチで!!??

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