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 ランタンによって照らされた薄暗がりの中に、岩壁へと振り下ろされる鶴嘴の金属音と、振り下ろされた鶴嘴にて砕かれる岩の破砕音が響き渡る。


 一度鶴嘴を振り下ろしては、周囲に飛び散った鉱石を集め、その中に混じっている諸々に一喜一憂する事暫しの間。


 露出していた鉱床を掘り尽くした俺達は、取り敢えずは満足するだけの成果を手にする事に成功していた。



「ふぃーっと!これで、漸く目標の量が溜まったな!これだけ在れば、暫くの間はアレコレ作っても足りるだろ!足りなくなったら、場所は分かってるんだからまた取りに来れば良いんだし、結果は上々、って処だな!

 あたしの言った通りに、今日は来て良かったろ?ん??」


「確かに、それに関しては否定出来ませんねぇ~。

 ミスリルにアダマンタイトに魔力鉄!おまけに、少量とはいえオリハルコン!これは、夢が膨らみますねぇ~!

 さぁ~て!この後向こうに帰ったら、何を作ってやろうかな!!」


「そうそう!素材を見て、次に何を作ろうか考えている時が、一番楽しいんだよなぁ~!

 あ、それと、他の皆にも言っておくけど、生産系の職人なんて寝ても覚めてもソレばっかり考えていて当然なんだから、タキガワがこうなっても別段どこもおかしくはなってないからな?むしろ、こうならなかった方がヤバい事態って可能性が高いからな?マジで」



「…………ん。了解。判断基準の一つにしておく」



「「「…………え、えぇ~……??」」」



 本日の成果を選別し、その上で帰ってから何を作ろうかと考えていると、何故か不承不承何かを承諾するララさんの声と、困惑した様子を隠せないと言わんばかりに戸惑いに満ち溢れたセレティさん、レティシアさん、桐谷さんの三人の声が追随する様に聞こえて来た。


 聞いていなかったので何故そうなったのかは定かではないが、場の様子から察するに恐らくはルルさんが何かを言って、それに反応する形で声が挙げられた、と言う処だろう。多分。



 まぁ、誰も俺に確認を取りに来ないと言う事は、俺には関係無い事だったんだろう。

 それに、俺の方にも情報の伝達等をしてこないって事は、緊急の用事って訳でもないと言う事だ。


 なら、放置しておいても大丈夫だろう。

 本当にヤバい案件なら、誰かしら言うハズだからね。



 そんな風に結論付けた俺は、掘り出した鉱石を用意しておいた手の平サイズのハンマーにて叩き、状態や品質の審査を始める。


 一応、[探査]や[解析]等にて判別や審査をする事も可能だが、それだと何となく詰まらないし、何よりそう言う技術を習ったのだから一度は使ってみたいじゃない?と言うノリにて、こうしてカンカンやっている、と言う訳だ。


 恐らくは、ここに加田屋がいれば賛同してくれたのだろうが、残念ながらあいつは今日は別行動なので、ここに賛同者はいないと見て間違いないだろう。

 やってみると、意外と楽しいんだけどね?コレ。


 そうして、あからさまに鉱石だと解る部分は軽く叩き、その際に返ってくる手応えや音から純度等を推し量り。

 そうでない場所は少々強めに叩く事で割り砕き、内部に隠れている鉱石を表面へと露出させると共に、小粒なモノが残されていないかのチェックも同時に行う。


 ソレによって荷物の圧縮も同時に行い、採掘を終えた際に出来ていた小山の殆どを解体してリュック一つ分にまで減らす事に成功していた。



「……良し!重量はともかくとして、取り敢えず嵩は減らす事に成功したけど、どうします?一応、持ち込んだ運搬用のリュックにはまだ余裕は在りますし、この地図にも、もっと深くまで潜ればまだ採掘出来そうなポイントが在る、って書かれていますけど、行くだけ行ってみます?」


「……あー、そう言えば、そんな話も在ったっけなぁ……。

 確かに、取り敢えずの目標量は確保出来たけど、それでもギリギリって程度だし、まだ運べるのなら採りに行くのはアリ、かね?

 ……どうする?消費する側のあたしとしては、もっと確保出来るならしておきたいから行くのは全然アリだけど、皆はどうしたい?『行く』か『行かない』かで答えて頂戴な」


「……ん。吾としては、『行かない』と答えたい処。タキガワの負担になるし、魔物も強く多くなる。危険度も高くなるから、出来れば連れて行きたくない。でも、タキガワは行きたそうにしているから、吾の答えは『行く』で」


「……ウチとしては、どちらでも、かね?行くなら行くし、行かないなら行かない。まぁ、棄権と取ってくれても構わないよ」


「なら、私は『行かない』と答えましょうか?タキガワ様のお身体も心配ですし、何より帰りの時間も考えますとこれ以上潜るのは建設的では無いかと」


「じゃあ、私もレティシア姫と一緒で『行かない』かな。出来れば、滝川君がしたいことはさせてあげたいけど、それでもさせてあげられる事とそうでない事は在るのだから、今回は諦めてくれはしないかな?

 流石に予定がカツカツ過ぎて、行ったとしても碌に採る時間は無いと思うよ?」


「……ふむ?取り敢えず、『行く』に票を入れてるのは今の処あたしだけで、セレティが棄権の無効票。レティシア姫とキリタニが『行かない』派で、ララはタキガワに合わせる、と。

 じゃあ、後は意見をハッキリさせてないタキガワの番だね!

 さっきの口振りからすると多分『行く』方なんだろうけど、自分の意見位は自分で言わなきゃね!さぁ、どうするんだい?」



 そう水を向けられたので、採掘した鉱石をリュックへと放り込む手を一時的に止めて興奮によって湯だっていた頭を冷まし、暫し考え込む。


 ついでに、今身に付けている装備と物資の残りと言った諸々も加味した上で、答えを出す。



「……じゃあ、ここは敢えての『行かない』に投票で。

 一応、多数決だったみたいなので、取り敢えずこれで帰還に決定ですかね?じゃあ、決まったならさっさと帰りましょうか」


「……意外だね。てっきり、『行く』って言うかと思ってたけど?」


「まぁ、確かに素材はもっと欲しいですし、もっと下の階層ならどんな素材が採掘出来るのか、とかの興味は在りますけど、今の装備やら時間やらだと少し厳しいと思いますし、何よりランタンの油がそこまで沢山は無いですからね。

 素材が足りなくなったらまた来れば良いのだし、下の階層の素材も次に採るつもりで予定を組めば良い。

 次に出来るのであれば、次にやれば良い。そうでしょう?なので、今日はここで帰っておきましょうか」


「おっ!?まさか、そっちから次の『デート』の予約をしてくれるとは思わなかったね!嬉しい事言ってくれるじゃないのさ、旦那様?

 じゃあ、取り敢えず今日は帰るとするか!帰ったら、一緒に水浴びでもするか♥️」


「……ん♥️なら、吾も参加しないと、ね……♥️」


「な、なんて羨まけしからん事を!?

 滝川君!わ、私も!私もそれに参加しても良いよね!?

 私だって、滝川君の恋人なんだから、ね!?」


「……じゃあ、ウチは遠慮しておこうかね……。

 流石に、ウチはそこまでオープンになれる程に若く無いからねぇ……」


「……タ、タキガワ様との水浴び……!?

 …………くっ!この王女と言う身分を、今ほど邪魔だと思った事は在りません……!」


「……はい、そこー。まだダンジョンから出てもいないのに二人は盛らない。桐谷さんも、そんなに必死にならない。

 セレティさん。何度も言ってると思いますけど、俺は貴女が気にしている程に年齢差を意識した事は無いですからね?本当に。

 それと、レティシアさんもなにマジな顔して、この世界を呪う様なセリフを吐いてるんです?と言うよりも、そこまで好意を向けられる理由が未だに理解しかねるんですけど……?」



 少し前とは逆に、周りがヒートアップしているのを俺が宥めてクールダウンさせ、皆でダンジョンの出口を目指して進んで行く。


 行きにも使った帰り道と言う事もあり、道順を皆が理解していたり、元々『勇者(笑)』が掃討した後を更に掃除して進んでいた道でも在ったので、帰りは行きの半分以下の時間にてサクサクと進んで行く。


 そして、半ばまで進み、行きには無視した下層へと続く階段の内の一つへと差し掛かった時、慣れ親しんだ一つの声と、聞き覚えの在る複数の声が言い争っている様な会話が聞こえて来た。



「――――だから!僕の言う通りに、もっと準備をしておけば、あんな処で撤退しなくて済んだハズなのに、それでも僕のせいだって言うのかよ!?」


「そうだろがよ!?お前が、あそこで敵を倒していれば、こうして撤退しなくて済んだんだよ!!」


「そうだ!それに、お前ばかりマナポーションを使うから、皆の分が無くなったんだろうが!!」


「それを準備しなかったのは君達だろう!?そもそも、僕が使った分は、僕が個人で入手して持ち込んだモノだ!それを提供しなきゃいけない道理は無い!それに、君達が毎回毎回適当な事ばかりして、ソレのフォローを僕に押し付けていた癖に何を偉そうに!!」


「だったとしても!皆で一丸のチームとして動く必要の在った場面で、ソレを乱した君の罪は重いぞ!その責任はどう取るつもりだ!」


「それこそ知ったことか!!君らこそ、最初に僕に言った事を覚えていないのか!?

『君に面倒は掛けさせないから、頼むから協力してくれないか?』

 そう言って、半ば無理矢理協力を取り付けて来たのは君らだろう!?その癖して、いざ蓋を開けてみれば、僕の方から無理矢理頼み込んで連れてきてもらった、みたいな扱いをしてくれて、その挙げ句にバカみたいに攻め急いで結果撤退する羽目になったんじゃないか!!それで責任を取れ、だと!?ふざけるのも大概にしてくれないか!!?」


「なんだと!!!???」



 殺意すらも滲ませた怒号が周囲へと響き渡り、無関係だったハズの魔物すらも引き寄せ始めている事が気配からも察せられたので、取り敢えずその不毛な言い争いをやめさせるべく、俺は皆へとお願いして目の前の階段へと飛び込むのであった。



 ……しかし、加田屋の奴め。今日は用事がある、とか言う話だったから諦めたって言うのに、偶然とはいえなんでまたこんな処で遭遇する羽目になるのかね?呪いの類いでも掛かってるんじゃあるまいか……?

取り敢えず明日も更新予定

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