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 俺がかなり強引に迫られ、ルルさんを番として認定させられ……認定してから数日が経過した。



 その間、特に何が在った……と言えば在ったのだが、あまり大した事は起きてはいない。

 ほぼ日常の延長線上で括れる様な諸々の出来事であり、特筆すべき点が在った訳でもないので大雑把に流れで説明すると、



 1・まず、俺の行った事(向こうの世界の知識や技術を広める&活用法を伝授する)が周辺へと広がる。


 2・それにより、そうして伝えられる物事に興味があったり、もしくは問題を抱えていてその解決を望む処から相談が寄せられる様になる。


 3・それに対応し、技術の伝授や問題の解決等を、いつもの面子(俺、ララさん、加田屋、桐谷さん)にて行う。



 と言った感じだ。


 お陰で、自分からわざわざ出向いてアレコレと余計な事をしなくても済む様になったし、問題が在れば向こうから来てくれるので時間を効率的に使える様になってきた。……様な気がする。多分。


 オルランドゥ王から寄せられていた最初の依頼であった為に、こうして活動をしていたのだが、その成果として早くも工房産の武具の性能が目に見えて跳ね上がり、下手なダンジョン産の装備を上回る様になったり、厨房の料理人達が俺が呟きにて漏らした技法や料理や食材等を駆使した新たな料理を作り上げたりと、中々馬鹿に出来ない結果が出ていたりする。


 そのお陰か、その評判を聞いて俺達に話を持ち掛けて来る様になった処もある以上、やはり『業績』と呼ぶに相応しい実績なのだろう。多分。


 ……まぁ、憧れを抱いていた『まったりスローライフ』とは似ても似つかない様な状況になってしまいつつあるのも、否定はしない。否定は、だけど。


 そんな訳で、この世界に来てからまだ一月も経ってはいないながらも、中々に忙しくも騒がしい日々を送っていた日の事であった。


 突然、俺は部隊にいた時に戻されたんじゃないだろうか?と言う錯覚を抱く羽目になったのは……。






 ******






 その日も、俺達の朝は、相変わらず裸のままで始まった。


 ここ最近は、ララさんに一方的に翻弄されるのではなく、要所要所にて反撃する事に成功しだしていた為に、より一層の激戦へと変わりつつあったが、やはり結果としては情けない限りではあるものの、負け越していると言うのが現状だ。


 そんなララさんの最近のお気に入りは、俺の寝顔を見ている事らしく、ここ最近は目を覚ますとララさんの顔が目前に在る事が多くなっていた。

 しかし、俺の方でもソレに慣れつつあったので、特に驚いて飛び起きる事もなく目を覚まし、身繕いをする為に軽く服を羽織ってから、何時も道具が用意されている扉の脇を首だけ出して確認する。


 すると、何故か今日に限って何時も用意されていたカートが置かれておらず、それと同時に身繕いの為の道具(水の入った桶、身体を拭く為の布、汚れ物を入れる為の籠等々)も無い。


 この世界に呼び出されてからは、基本的に用意されていたそれらが今朝は無い事に疑問を覚えながらも、取り敢えず身を浄めない事には外に出る事も出来ないので、不審に思いながらもそのまま頭を引っ込めた。



「なんか、何時も置かれている諸々が今日に限って無かったんですけど、使用人の人達のお休みとかだったりするんです……どうしました?」



 部屋の中へと振り返り、空手である事を説明する為に言葉を掛けながらララさんへと視線を向けたのだが、彼女の視線がこちらに向いておらず窓の外へと向けられており、纏っている空気が何時もの朝の気だるげで緩んだソレではなく、かつての戦場にいた兵士達の様に引き締まり張り詰められたソレである事を悟った俺は、警戒体勢へと移行しながら途中でセリフを切り替える。


 そんな俺へと、雰囲気が変わった事を察知したのか、チラリと視線を向けたララさんは、すぐに窓の外へと戻しながら短く告げる。



「……ん。雰囲気が、おかしい。それに、空気が不穏に過ぎる。こんな空気、臨戦態勢にでもなっていないと、そうそう起こる様なモノじゃない。それに、何か外壁の方が騒がしい。何か在ったと見るべき……」


「……了解しました。じゃあ、身支度を整えて見に行きましょう」


「……ん。分かった。正直、タキガワを危ないかも知れない処に連れて行きたくは無いけど……」


「これは、不可抗力でしょうに。

 下手に置き去りにされるより、ララさんの近くの方が安全。なら、一緒に行くしかない。ほら、簡単でしょう?」



 そう言いながら、非常時用に、と部屋の中に作って置いておいたタオルを水差しの水で濡らして彼女へと差し出す。


 ソレを無言のままで受け取った彼女は、既に兵士の顔付きとなって手早く身体を拭いて行く。


 同じく俺も手早く身体を浄め、最悪の状況を見越し、最大限のパフォーマンスを発揮できる様に三つの[スキル]を発動させ、身体を戦闘行為も可能な様に直しておく。


 そして、互いにきっちり服を着て、それぞれが用意していた道具類を持ち、ララさんが俺達が造り上げた刀(例の傑作。ここ数日中に装飾も含めて完成させていた)を腰に下げたのを確認してから、事態を把握するべく部屋を出るのであった。






 ******






「まずは、確実に情報を得るべきです!オルランドゥ王の処に行きましょう!」


「……ん!確かに、王なら何が在ってもソコにいて、確実に情報を握っているハズ!こっち!着いてきて!!」



 準備を整え、廊下を駆ける俺達。


 忙しなく、慌てた様子にて使用人さん達が行き交う中を、流石に速度重視の為に抱えられること無く自らの足で駆けながら、速度を緩めること無くすり抜ける様にして進んで行く。



「……の方でもまだ……!」


「……は……人出てる……」


「早く!怪我人…………だぞ!!」



 擦れ違い様に、血相を変えて行き交う使用人さん達の言葉を漏れ聞きして情報収集をついでに行うと、どうやら何かしらの大規模な事件が発生しそれで怪我人が発生しているらしい、と言った事が予想出来る。

 もっとも、あくまでも予想は予想だから、外れていてくれた方が有難い。


 今更人が死んだ死なない程度で動揺なんぞしやしないけど、それでも無いに越した事は無い。


 そんな思いと共に廊下を駆け、階段を登り、部屋を通り抜ける事で漸く豪奢な扉の前へと到着する。


 扉の向こう側からは、人々の行き交う熱気と指示を出す怒号が響いているが、それに構うこと無く扉を押し開け中へと踏み入る。



「……なっ!貴様、何者だ!」


「無断での入室は認められていない!即座に立ち去れ!!」


「この一大事に、衛兵は何をしている!!」



 入室と共に俺達へと向けて放たれた声に、俺の隣のララさんが殺気立ち、それに反応して内部にて控えていたのであろう騎士の人達が腰の得物に手を伸ばす。


 まぁ、アポ取った訳でもないのだから、この反応はある意味当然よなぁ、とつらつらと考えている俺の横で、殺意も敵意も隠そうともせず、牙を剥き出しにして唸り声を挙げながら腰の刀へと手を添えるララさん。

 ……多分、俺に向けられた殺気に過剰反応しているんだろうけど、流石に今は止めてくれませんかねぇ!?話が進まないんですけど!?


 そんな俺の声無き嘆きが届いたのか、それまで無駄に広い部屋の最奥にて様々な指示を出している途中で固まっていたオルランドゥ王と、その隣で資料と思わしき書類を捲っていたレティシア第二王女が慌てて仲裁に入ってきた。



「止めぬか!?そのお方は『救世主』タキガワ殿であるぞ!その様な無作法を働いて良い相手ではない!!」


「そうです!剣を納めなさい!!貴方達に最近支給された装備品の数々を、実際に造り出した本人へと向けるとは何を考えているのですか!?」



「「「し、失礼致しました!!?」」」



 二人の言葉により、慌てて剣を納めて頭を下げる騎士達。


 その様子に、まだ不満そうなララさんの腕を軽く叩いて宥め、苦笑を浮かべて気にしていない事を示す。



「気にしないで下さい。この場において悪いのは、先触れを出さず無理矢理押し入ったこちらですから。彼らは、自らの忠誠心と職務に従っただけですので、後で罰則を、とかも止めて下さいね?

 取り敢えず、何やら騒ぎになっているみたいですけど、それについての情報を貰えますか?」


「……相変わらず、懐が広く、それでいて単刀直入ですな。分かりました。彼らには、重い罰則は課さない事は約束致します。

 それで、情報でしたな?では、現状をご説明致しますので、こちらまでお願い致します」



 それに対して安堵の表情を見せたオルランドゥ王が手招くのに従い、部屋の奥へと入って行く。

 そして、彼の前に据えられていて机の上に広がっている一枚の地図へと、自然と視線が吸い寄せられた。



「……これは……この周辺の地図、ですかね……?」


「その通りです。ご覧の通りに、我が国の首都である『王都ディスカー』とその周辺を表した地図なのですが、そのディスカーを囲っているこの城壁のすぐ近くに新しくダンジョンが発生してしまったのです。場所は、地図に書き加えられている地点となります」


「……俺達の居た世界の小説やゲーム等では、そのダンジョンから魔物が溢れて来て一大事、って言うのがお決まりでしたけど、もしかしなくても……?」


「……えぇ、現時点ではほぼその通りとなっております。

 ダンジョンを番兵達が確認すると同時に、魔物が内部より大量発生し、それに対処しているのが現状です。我がディスカー王国も、最精鋭の英雄達はその悉くを前線へと送り出しておりますので、正直な事を言えば戦力は厳しいと言わざるを得ないでしょう。

 ……それこそ、今回召喚した者達に『協力』して頂く必要に迫られる程度には、です」


「……成る程、ねぇ。なら、そっちに投入するのは戦闘系特化(のうきん)の連中だけで良いですよね?

 俺と同じく生産系持ちの皆は、後方にて確実に[スキル]を生かして支援しつつ、可能な様なら戦闘に参加する、って感じで良いですよね?」


「……それは、もちろんそうですが……」


「……もしかして、参加するのが予想外だった、って感じです?」


「……えぇ、まぁ、正直に言えば、ですが」


「少なくとも、私は父上とは違って参加自体はして貰える、かなぁ?とは期待していましたよ?ただ、ここまで全面的に、と言うのは予想していませんでしたけど」


「まぁ、なんたらとハサミは使い様、とも言いますし、そろそろ穀潰し共にも働いて貰わないと、ねぇ……?

 と、言う訳で、取り敢えず他の皆を一回適当な処に集めて貰っても?そこで、軽く事情説明してから割り振った方が良いでしょう?」


「えぇ、そうですな。現時点で把握している限りですと、後方での回復系、取り分け戦闘中にも使えるポーションの消耗が激しくなっているとの事ですので、出来ればタキガワ殿にはそちらに回って頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」


「了解です。じゃあ、取り敢えずはそんな感じで。俺は先行しておきますね」


「では、こちらで手筈を整えます」


「ならば、私が同行致しましょう。その方が、面倒も減るハズですので。よろしいですよね?父上、タキガワ様」


「了解。じゃあ、行きますか」



 そうして俺は、騒がしかった部屋からレティシア王女の先導によって外へと出ると、現在置かれている補給所へと向かう為に足を進めるのであった。



 ……しかし、ダンジョンって、そんなに急に発生する様なモノなのだろうか?

 もしそうでなかったとしたらどうなるのか、ねぇ……?

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