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23

 


「…………う、うぅ……?もう、朝、か……?」



 窓から射し込んだ朝日に顔を照らされ、呻き声を挙げながら目を醒ます俺。


 その姿は全裸のままであり、身体は昨晩のアレコレによってちょっと『見せられないよ!』なレベルで汚れていた。


 目を醒まして早々に、そんな状態を確認してしまい辟易していると、隣からジーっと俺へと目掛けて視線が向けられ続けていた事に気が付く。


 そちらへとこちらからも視線を向けてみれば、そこには昨晩情を交わし、番となる事を了承した(させられた?)相手であるララさんが、俯せの状態で身体を伏せながら、肘を使って上体を起こしてこちらに向けて視線を投げ掛けている姿が目に入って来た。



「……ん。起きた。おはよう、旦那様♥️」


「……その『旦那様』っての止めませんかね……?」



 俺とは根本から造りが異なる顔の奥、愛しさや慈しみと言った感情と熱が込められ甘く蕩けている瞳を向けられ、無性に気恥ずかしくなった俺は、震える手を(・・・・・)苦労して(・・・・)伸ばし(・・・)半ばそこに漂う甘い空気を誤魔化す為に後頭部を掻き回す。



 そう、一度は直したハズの、何不自由無くなったハズの、今は持ち上げるだけで震える腕で、だ。



 まぁ、とは言っても、別段昨日使った[スキル]の効果が切れただとか、症状が再発した、と言う訳ではない。

 単純に、ララさんとの激闘(意味深)を繰り広げたお陰で、全快していた俺の身体が再び全壊したと言うだけの話だ。


 ……いや、最初は、俺の方が押していたんだよ?

 ララさんも、これまでの『求愛期』で群がって来ていた連中を悉く袖にしていたと言う事もあり、まだ経験が無かったみたいで、序盤は俺の方が翻弄していた……と思う。多分。


 しかし、中盤からは彼女も慣れて来たのか、それとも愉しむ事を覚えてしまったのか、自分から互いに反応の良い所を探り合う様な形となり、徐々に俺の方が押され始める事となってしまった。


 そして、終盤に差し掛かる時には、既に俺の反応の良い所を全て把握されてしまい、主導権の殆どを彼女に握られる様にまでなってしまった結果、本当に日の昇るギリギリの所まで夜戦(意味深)を続ける事となってしまっていたのだ。


 改造人間の範疇に在る俺とは言え、そこまでの激戦を長期に渡って繰り広げる事になってしまっては、流石に身体にもガタが来ると言うモノだ。

 まぁ、以前とは違い、今の処動作に違和感が在る訳でも、痛みが伴う訳でもないので、暫くすれば直るのだろうけど、未だに我が息子は白旗を揚げてグッタリとしたままであるので、こちらの戦力が回復するのは何時の事になるのやら、である。


 何せ、最後は文字の通りに搾り取られたので、こうして早朝に朝日が射し込む中、肩回りや腰回りに生えている獣毛と真っ白な背中のコントラストや、肘を立てていても身体とベッドとで挟まれて柔らかくその形を変える胸だとか、ユルユルと振られる尻尾によって見え隠れするお尻だとかを目にしても、朝特有の反応すらも返して来ないのだからやはり弾丸が尽きたと見るべきだろう。

 (本体)としても、それらを見ても『綺麗だなぁ』とは思うが『劣情を催す(致したい!)』と言った感情が沸き起こって来ない以上は、恐らくは『賢者タイム』かそれに近しい状態となっていると考えて間違いは在るまい。多分だけど。


 むしろ、今まで関係を持った相手(商売人のお姉さんや部隊にいた姐さん等)には抱いた事の無い、こうして視線を合わせているだけで胸の内側が温かくなると同時にむず痒くなる様な、そんな不思議な感覚すらも沸き起こって来ていたりする。



 ……イマイチ理解に困る処ではあるが、コレが世間一般的に言われる『恋』だとか『愛』だとかと呼ばれるモノなのだろうか?

 だとしたら、存外に悪い気分では無い、かな……?



 なんて思っていると、ふと自身の身体の汚れや寝汗と言った要因から来るベタベタとした気持ちの悪さを思い出し、それらを処理する為の『何か』が無いかと周囲を見渡す。


 すると、入り口の扉の下に、何か白いモノが差し込まれているのが目に入った。


 未だに余韻を楽しんでいるのか、それともそう言う気分なのかは不明だが、まるで猫の類いの様に自身の身体を俺へと摺り寄せてスキンシップを図っており、少なくとも今すぐにベッドから出る気配を見せていないララさんに頼むのは憚られたので、震える足腰に鞭打って自ら何かを見極めに赴く。


 遠目に見た通りに、どうやら紙片の類いであったらしく、手前へと引き抜いて何も書いていなかった表面から裏面へと引っくり返す。


 するとそこには



『扉の横に、水を入れた桶と清潔な布を用意してあります。身支度や身繕い等にお使い下さい。また、念のために『救世主』様用の衣服も一組添えてあります。必要に応じてお使い下さい。

 汚れ物がございましたら、後で回収に伺いますので同じ様に扉の横に置いて頂けると幸いです。


『救世主』様付きの使用人より。


 追伸、昨晩はお楽しみでしたね』



 と書かれていた。


 ……恐らくは、俺の部屋へと入って行くララさんの後ろ姿を目撃していたか、もしくは俺がララさんの番候補で在りながら関係を断っていた理由が身体の不自由であり、それが解消されていた事を知っていた使用人の誰か、なのだろう。

 決して、昨晩この部屋から聞こえてきた情事の音だとか、俺達が挙げていた矯声を聞いて気を利かせた、とかでは無いハズだ。

 ……頼むから、そうであって下さいお願いします。

 俺の尊厳だとか諸々の為にも、そうであって下さいお願いします神様!!


 一応、それっぽい存在と顔合わせをした経験の在る以上、存在自体は否定しないが特に信仰している訳でもないので、必死では在りながらも何処か適当にお祈りを済ませた俺は、扉の向こう側に人の気配が無い事を確認した上で扉を開き、素早く周囲を確認する。

 そして、メモに在った通りに置かれていたカートを部屋の中へと引き込み、積まれている物品を確認する。


 メモに書かれていた通りの品々が積まれていた事に安堵しながら、チラリと視界に入って来た時計で時間を確認すると、昨日桐谷さんが俺を起こしに来たのと同じ時刻が迫りつつあった。


 なので俺は、未だにベッドで蕩けていたララさんを起こし、身支度する様に促すと、交換条件として出されたキスをキッチリとこなしてから最大限急いで身を清め、汚れ物をまとめてカートへと押し込み、着替えを済ませてから部屋を後にするのであった。


 ……なお、ヨタヨタと歩いていた為か、俺よりも後に部屋を出てきたララさんに捕まり、当然の様に運搬されてしまうのであった。無念。






 ******







「……鍛治場、ですか……?」


「はい。もちろん、例の<能力>付与が出来ている鍛治場の方を、お願いします。見せられない、と言うのであれば諦めますが」



 俺の言葉を受けて、考え込むレティシア第二王女。


 ソレを、固唾を飲む……と言う程には緊張せずに見守る俺達。


 早朝からしてこんな事をしている理由としては、割りと単純。


 俺達が食堂に集合して食事をしながら、今日はどうするのか、を話し合っていると、丁度そこにレティシア第二王女が入って来たので、朝の挨拶をするのと同時に、取り敢えず許可だけでも取っておこう、と言う考えから言うだけ言ってみた、と言う感じだ。


 だから、別に俺達(と言うより俺)としては、ここで『NO』と言われたとしても、鍛治関連の事柄を後回しにするだけなので、別段断られたとしても大したことは無い、と言うのが特に緊張していない理由だったりする。

 もっとも、この国の抱えている問題だとか、世界情勢的に鑑みると、多分ここで断る事は無いだろうけど、ね?


 なんて事を内心で考えながら黒い笑みを浮かべていると、考え込んでいたレティシア第二王女が一つ頷いてから顔を上げ、こちらへと視線を向けてくる。



「良いでしょう。昨日、早速厨房に革新を起こしたとの報告も受けていますし、ソレを実績として鑑みるのであれば充分資格は在ると言っても良いでしょう。昨晩の『はんばーぐ』でしたか?大変に美味でした。国王陛下も、絶賛されていましたし、功績と見るに充分でしょうね。

 故に、このディスカー王国第二王女として、タキガワ様に正式に立入の許可を出すと共に、技術革新の依頼を正式に出す事とします。これで、よろしいですか?」


「えぇ。ちなみに、他にも何人か連れて行っても?」


「余計な事はさせず、何が起きてもタキガワ様が責任を取って頂けるのであれば、何名でもお好きな様に」(ニッコリ)


「あっはい」



 思った以上にアッサリと許可が出て、多少の欲目が出た俺は、俺と同じ様に[鍛治]系統の[スキル]を取っていた連中でも連れて行こうかな?と思い立ち、軽く聞いてみる。

 が、こちらの背筋に鳥肌が立つ程の威圧感を纏った笑顔を向けられ、思わず気の抜けた返事が溢れ出てしまう。


 しかし、一応俺の責任の元であれば連れて行っても良い、との事だったので、これから朝食の席に着く王女様へと暇を告げると、加田屋と共に[鍛治]系統を持っている者がいないかの聞き取りを始める俺。


 その結果、[鍛治]を所持しており、その上で俺達の行く鍛治場に興味が在る、と言う者が何名か居た為に、そいつらを連れてララさんの案内によって鍛治場へと向かって行くのであった。


 ……なお、追加された面子の中に、ララさんに向けて『そう言う視線』を向けている奴らが居たので、思わず殺気を向けてしまったのは余談だし、桐谷さんに朝食の席で俺とララさんに『何か在ったのか?』と聞かれた時には口から心臓が飛び出る程に驚いた、と言うのはまた別のお話。

 あの時は、マジで『心でも読まれたのか!?』と驚き過ぎて言葉が出なかったからね。いやぁ、心臓に悪い悪い。


 ……マジで、気付かれてはいない、よね……?

次に目を着けたのは鍛治場

はてさてどうなるかなぁ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっふ……エロい…… 大丈夫ですかララさん、割ときわどいところ攻めてますよっ!! 体験を話すような形にしても、文章力の高さでえっちぃのが隠せてない気がしますよぉっ [気になる点] サブタイ…
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