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「……まぁ、出来てしまったのであれば仕方ありません。念のためオ・グ・ララにも確認して貰いましたし、私の護衛にも確認させましたが、どうやら嘘ではなく本当に出来ている様子ですし、良しとしておきましょうか」


「……いや、なんでそんなに渋々なんですかね?俺が言うのもなんですけど、一応は出来たんだから良かったじゃないですか」


「いえ、ね?もし出来ていなければ、これまでの召喚者(貴方達)の所業を槍玉に挙げて、今後は異世界からの召喚を行う事を全面禁止にし、今の処無駄飯喰らいでしかない上に、多数の犯罪者予備軍を抱える貴方達もついでに追放してしまおうかと思っていたのですが、結果的に実行出来なさそうなのでつい、ね……?」


「…………いや、『ね?』じゃないが。それに、そっちの都合で勝手に呼び出しておいてその扱いはどうよ……?」


「あら?それこそ、国家全体の利益の為ですもの。必要な犠牲、と言うヤツですよ。まぁ、そうやって追放した方が不利益になりそうな事が確定してしまったので、やろうとしても出来ないでしょうけど」


「流石に、ちょっとぶっちゃけ過ぎでない、王女様?それに、ちょっとばっかり俺に対して毒吐きすぎでは?そんなに俺の事嫌いですかね?」


「フフフッ!さぁ、どうでしょうね?

 ですが、今まで散々迷惑を掛けられた末に漸くお越しになった『救世主』様に苛立っているだとか、元々私の友人で専属でもあったオ・グ・ララが貴方にベタ惚れなのが面白く無いだとか、本当に『救世主』呼ばわりされるだけの事が出来るのか疑っているだとか、そんな個人的な感情は関係在りませんもの。えぇ、当然、関係在りませんよ?」


「…………めっちゃ私怨じゃないですかね……?」



 半ば駄弁りに近い会話を、レティシア第二王女と繰り広げる俺。


 なんでそんな事になっているのかと言うと、つい先程までやっていた教授にて、取り敢えずやってみたらなんか出来た、と言う俺を色々と調べてみた結果、本当に[マナ]を各種へと変換する事が出来ていた俺に対し、何かが吹っ切れたらしい彼女が突然絡み出した、と言うのが現状の原因(?)だ。


 俺としては、一応父親であるオルランドゥ王とは『ソレなりの関係性』を築けた自信は在るのだが、その娘であるレティシア第二王女に対してはつい先程言葉を交わした程度でしかない為に、こうして絡んで来られるとどう対応して良いものか判断に困ってしまう。

 特に、彼女の様に整っていて可愛らしい容姿の女性に絡まれると、どう反応したものか、悩ましくなってしまうのだ。



 新雪にも似た透き通る様に白い肌。


 強い意志を秘めた宝石の様に蒼い瞳。


 天使を輪を幾重にも浮かべる黄金の如く輝く金髪。


 驚く程に発育が良く起伏に富んだボディライン。


 若干吊り目気味では在るが『綺麗』と言うよりも『可愛い』と表現されるであろう系統の整った容姿。


 王族と言う貴顕であるが故の豪奢な衣服。



 それらが全て整った異性が、下手をすればソレなりに付き合いのあった桐谷さん並みの距離感にて接近しつつ絡んで来るのだ。

 流石に、学年通りの年齢ではないとは言え、部隊に居たのは割りとガサツで姉御肌な人達ばかりであった為に、どう反応して良いものか少々戸惑ってしまう。



 ……と、言うよりも、一応は異性である俺に対して、王女殿下がこんなにも接近して良いのかね?

 護衛の人達も、ソレを防ぐ為にこうして着いているんじゃないの?




「……今日の姫様、なんだか生き生きしてる気がするなぁ……」


「あぁ、そうだな。珍しい」


「ああやって、年相応にはしゃいでいらっしゃるのって、俺初めて見た気がするんだけど?」


「奇遇ですね。僕も初めてです」


「……ん?確かに、珍しい。

 ……もしかして、これは、もしかすると……?

 自覚は……無さそう、かな……?」



 ……何やら、ララさんを含めた護衛の人達の会話が聞こえて来た様な気がするけど、多分気のせいだろう。……気のせいだと、思いたい……。


 直視したくない現実から逃れる為に、その現実の発生源たるレティシア第二王女へと向き直る。



「それで?次はどうすれば?まさか、三種類同時に使って見せろ、なんて言いませんよね?」


「流石に、それは『無理』と言うモノですよ。そんな事出来た人はいませんし、する必要も無いですからね。

 では、実際に[スキル]を使ってみましょうか。

 取り敢えず、貴方が使える[スキル]の中で、好きなモノを一つ選んで思い浮かべてみて下さい」


「……ふむ……?

 ……あぁ、成る程、そう言う事ですか……」



 言われるがままに、習得した[スキル]の一覧の中で、もしかしたら、との期待も込めて選んでいたモノの一つである[探査]へと強く意識を集中させる。

 すると、本能的になのか、それとも[スキル]を扱う為の補助的なシステムでもこの世界に組み込まれているのかは定かでは無いが、脳裏に[マナ]をどれへと変換して使用すれば良いのかが降りて(?)来た。


 どの種類をどれだけ使えば良いのかを教えてくれたソレが何なのかは分からないし、そもそもそれが教えてくれている事が合っているのかすら定かでは無い。

 でも、特にソレに対して彼女も言及していなかったし、何より詳しい説明は不要、とのスタンスを取っている以上、恐らくはこの情報は合っているのだろう。

 試しに、[探査]と同じく目を付けていた[修復]や[整備]に意識を移しても、同じ様に反応して情報が降りて来ている以上、恐らくは大丈夫なのだろう。多分だけど。



「その様子では、大丈夫だった様ですね?」


「えぇ、まぁ。でも、アレって何ですかね?」


「さぁ?何なんでしょうね?」


「………………いや、なんで正体も知らないモノを勧めたんですか……?」


「なんで、と言われましても、私達が生まれる遥か以前から存在する、この世界の仕組みの一つですので、正体が不明でも『ソコに在る何か』として利用している、と言うのが偽らない心情ですね。

 さて、何か分からないモノに関してはここまでにしておいて、問題なく使えそうなのであれば試しに使ってみましょう。[スキル]を実際に行使する際は、先程の手順に加えて『[スキル]を使う』と言う事を意識した上で[マナ]を変換し、ソレを消費すれば発現します。

 まぁ、慣れていない最初は、行使したい[スキル]を口に出すのも分かり易くて良いかも知れませんが、慣れてくれば口にしなくても容易に発動出来る様になるでしょう。

 やってみますか?」


「そうですね、やってみましょうか」



 促されるままに、取り敢えず[探査]を使ってみるべく体内の[マナ]へと意識を傾ける。

 そして、[マナ]の循環を前にして使用する[スキル]として[探査]を強く意識する。


 すると、自動的に使用するのが周囲の空間へと干渉する為の[マギ]だと言う事と、行使するのに必要な量が理解出来た。

 そして、それに従い必要な量の[マナ]を、[マギ]へと変換する為にある程度緩く生地を捏ねるイメージにて加工して行く。


 ある程度捏ねた処で身体の外へと放出し、それと同時に行使する対象を俺本人に指定した上で[スキル]の発動を宣言する!



「[探査(サーチ)]!」



 すると、放出した[マギ]が変化すると同時に俺の身体へと入り込み、頭の先から爪先迄を駆け抜けて行く。


 若干くすぐったい様な感覚を堪えていると、僅か数秒程度にて終わりを迎え、再び俺の身体から抜け出してくると今度はタブレット端末の画面の様なモノへと変化し、物理的な存在として顕現した。


 その画面には、[探査]を使用した俺の全体図が中央付近に写っており、端の方には様々なバロメーターや俺が習得した[スキル]の一覧等が表示されていた。

 流石に、昨日の今日で全部忘れる程にボケてはいないつもりだが、それでもそうそう容易く覚えてはいられない程度には多くの[スキル]を習得しているので、後で何を取っていたのかを確認するのに便利そうだ。


 とは言え、今回こうして[探査]を使ったのは、そちらが主な目的、と言う訳ではない。

 しかし、狙いの通りであれば、何処かに項目の一つも出ていて良いハズのモノが表示されていなかった。


 なので俺は、自身の勘に従い、表示されていた俺の全体図をタッチする。


 すると、表示されていた他のバロメーター等が画面から無くなり、その代わりに表示されている俺の全体図の各所から線引きされた吹き出しの様なモノが表示され始め、そのどれもが赤く染まり、見ているだけで危機感を煽られる様に思えた。


 ものの試しに右腕と線引きされて繋がっていた吹き出しの一つに触れてみれば、ソコにはビッシリと俺の身体に掛かっている過負荷や損傷、人工的に置換された部分の損耗等が詳細に記されていた。


 ソレを目の当たりにした俺は、小さくガッツポーズを取る。

 半ば狙っていたとは言え、予想通りの[スキル]が、予想通りの効果を発揮してくれたのだから。


 ならば、こいつらはどうだろうか?

 そんな思いから、[探査]の発動を止める事無く、追加で[整備]と[修復]の[スキル]を同時に発動させて行く。


 幸い、両方共に[オド]によって行使されるタイプだったらしく、単純に変換する[マナ]の量を多くすれば普通に対処出来た。


 そして、目の前の画面に写る赤く表示された吹き出し群へと意識を向けながら、準備を終えた[整備]と[修復]を発動させる。



「[整備(メンテナンス)]![修復(リペア)]!」



 すると、一瞬で俺の身体へと光が走り、その次の瞬間から画面に表示されている俺の全体図から、赤く染まって表示されていた吹き出し群が、次々にその色を黄色を経由して緑や青へと変化させて行く。

 それと同時に、ソレまでは常に身体へとまとわり着いていた重苦しい倦怠感や、全身の骨から発せられる痛みや軋みと言った危険信号がピタリと止み、ソレだけでなく動作も比較にならない程にスムーズかつ俊敏に行える様になったのだ。



 ……そう、かつて、部隊に居た時と同じく、不自由無く動いてくれる身体を、俺は再び手に入れる事に成功したのであった。

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