1
新作始めてみました
良かったら読んでみて下さい
豪奢な造りの宮殿らしき建物に誂えられた、玉座の間。
何処とも知れぬその場所にて、『俺』こと滝川 響は困惑の極致にあった。
右に視線をずらせば、俺の事を憎々しげに睨み付け、悪意の類いを垂れ流しにしながらも、武装している兵士や騎士によって妨げられ、寸前まで玉座の左右に侍っていた見るからに高位の騎士と言った出で立ちの二人から首筋へと刃を添えられている為に、こちらへと手出し出来ないでいるクラスの中心人物である深谷 雅人と、直前までその周辺に居た取り巻きグループがベースとなった『戦闘系スキル』のみで全ての枠を固めたガチガチの『戦闘系ビルド』のクラスメイト……いや、『元』クラスメイト達の姿。
左に視線をずらせば、そこには俺の友人である加田屋 清治を筆頭に、クラスの中でも地味であまり目立たずに居た者達と、クラスのアイドル的存在であった桐谷 花怜によって構成されている、主に『非戦闘系』のスキル構成で構成し、その上で余った枠に戦闘系のスキルを差し込んだ、所謂『生産系ビルド』の『元』クラスメイト達が、安堵や感嘆、称賛と言った色の見える視線を向けて来ている。
……ここまででも、十二分に混沌とした状況を作り出すに相応しいだけの要素であるのに、残りの方向にいる連中が、その濃度を飛躍的に高めてくれているといっても良いだろう。間違い無く、だ。
そんな事を内心で考えながら、俺自身の正面側へと視線を向ける。
するとそこには、豪奢な玉座に始まる絢爛な装飾品によって飾られた謁見の間と、そこに並び立つこの国の重臣とこの国その物を治める王とその伴侶、そしてその娘である王女がこちらへと視線を向けて来ていた。…………ほんの少し前までは。
だが、今現在そこにいた、この国でも上から数えた方が早い程に高位に在ったハズの者達は、皆一様に床へと膝を突き、俺へと目掛けてその頭を垂れている。
……そこに、一切の例外は無く、ほんの少し前まで玉座に腰掛けていたハズの国王ですら、同じく膝を突いているのだ。
中には、俺の背後に在る、俺のスキル構成を写した器具を目にするだけで、滂沱の涙を流しながら拝んでいる者すら存在していた。
そんな彼らに対し、内心にてどん引いていると、つい先程まで玉座に腰掛け、頭に王冠を乗せていたこの国の王と思わしき中年(中々に渋みの走ったロマンスグレー)が、涙を湛えた瞳にて、懇願する様な表情を浮かべながら言葉を放つのであった。
「…………ようこそ、ようこそ我らの召喚に応じて下さいました!どうか、どうか我らをお救い下さい!『救世主』様!!」
「「「「「どうかお願い致します!我らをお救い下さい!『救世主』様!!!」」」」」
―――――なんでこんな事になっているのだろうか?
獣顔のお姉さんに抱えられ、頭頂へと鼻先を突っ込まれてフガフガと匂いを堪能されながら俺の心の内側に励起した疑問に答えを出すには、少し時を巻き戻す必要が在るだろう。
……まぁ、巻き戻したからと言って、答えが出るとは思えないけど。
一応物語の感じが掴めるまでは連続で投稿する予定です
読んでも良いかな?と思って頂けたのでしたらブックマークをお願いしますm(_ _)m