第2話 いつも私だけ怒られる人生
そんな事を考えていると、後ろの席のユキちゃんが指で背中を突っついてきた。
私の幼馴染の女の子で、歯並びのいい笑顔が太陽のようで眩しい。
「ねえねえ、トキコ。さっきから何を描いているの?」
「ふん、私の理想の彼氏だよ。付き合うとしたら、背が高くてイケメンが絶対条件だよ。将来は働きたくないからね。私は専業主婦で生きていくよ」
そう言うと、ユキちゃんは吹きそうになり、顔を机に伏せて声を出すのをプルプル震えながら耐えていた。
そして、耳に顔を近づけ囁く。
「アハハ、前にも理想の彼氏シリーズを描いていたよね? 前回は芸能人のアイドルだっけ? かなり設定に無理があったよね。今回のどんな彼氏なの? ちょっと見せてよ」
「嫌だ、恥ずかしくて無理だから。どうせ、またバカにするし……」
「いいじゃん、いいじゃん。絶対にバカにしないよ」
「嫌だもん」
そこで、担任の真木先生に注意をされた。
「時空院、ちゃんと聞いているのか? 数学の証明は絶対に受験に出るし、今のうちに理解をしてないと大変な目に合うぞ。だいたい、お前は前回のテスト赤点だったろう。自分の立場を分かっているのか?」
その言葉にクラスメイトの数名がクスクスと笑い声を出した。
うるさいな、好きで赤点を取る奴がいるわけがないでしょ? そう言って席を立って、教室から出て行ければ気分が晴れるに違いない。しかし、スクールカースト底辺の人間なのでそんなマネは出来ない。そんな事をしたら、教室に居場所がなくなってしまうのだ。
だから、小声でオドオドと謝るしかない。
「すっ、すっ……、すいません。いっ、いっ……、以後は気をつけます」
「まあ、分かればよろしい。みんなも来週から夏休みだけど気を抜くなよ。この夏をどう過ごすかで将来が決まるぞ」
何が将来だ、くそったれが! この世の中には、中卒でも成功した人は大勢いるし、学歴なんて関係ないって、ネットにも書いてあったし……。おそらく、人生の負け組の書き込みだけどさぁ。
そもそも、何で私だけ怒られなければならないのだ。最初にユキちゃんが声をかけてきたのに……。そのユキちゃんは知らんふりで、真木先生に怒られる事はなかった。ユキちゃんはいつも神様に好かれている人生な気がする。
まあ、そういう星の下に生まれた人間なのだ。逆に私は神様にいつも嫌われている人生なのだ。そんな事を考えている内に授業が終わった。