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第1話 つまらない大人になりたくないよ

私は教室の中にいた。


夏休み前のクーラーのない教室は暑苦しく、窓を開けても生温かい風しか入らず、なんとか暑さを誤魔化しながら授業を受けていた。


私はクラスメイト達がノートに黒板を書き写している中で、ノートの端に理想の彼氏のイラストを描きながら時間を潰していた。どうせ、聞いても聞かなくても、授業の内容なんて理解出来ないのだから……。


それにしても、高校の受験前なので教室の空気がピリピリしているのが分かる。私はバカだと思うが、志望高校に入れなかったら自殺するって言う子もいるくらいだ。それくらい、中学3年生にとって高校受験は大イベントなのだ。


でも、私はさほど受験に興味もなく、この授業が終われば放課後は帰るだけだと考えていた。それでも、今はクソつまらない数学の授業を耐えなければならない。


2次方程式、証明、因数分解など意味不明な単語は右耳から入り、すぐに左耳から抜けていく。まあ、どうでもいいけどさぁ、学校の勉強って本当につまらないよね。社会に出て本当に役立つのかと、毎年100万人以上の中学生が考えていそうな事だけどさ。


だけど、あと1週間で夏休みに入るから楽しみでたまらない。新しいゲームでも買って夜通しでやろうかな? それとも溜まっていたアニメを一気に見るのもいいなあ。


でも、来年は高校受験なので少しは怖い。もし志望校に落ちたら、クラスメイトに見下されるのかな? 私は志望校に行けないより、人から憐みの目で見られる方が辛い。そう考えると、夏休みの全てを遊ぶのは止めるべきだ。


やはり勉強もするべきだと思うけど、私の頭で受かる高校なんかあるのだろうか?

もともと勉強が向いてないし、高校に行く意味なんかあるのかな?


そうだよ、好きな事を仕事にすればいいんじゃないの。これも全国の中学生が考えている事だ。しかし、中学生にもなると、現実を見なければいけない時期であるのだ。そうだよ、小学校とはもう状況が違うし、3年後には働いているかもしれないのだ。


となると、自分に向いている仕事を探さないといけない。私が人より優れているのは絵の上手さくらいだろうか? 確かに絵を描くのが好きだけど、職業にして食べて行くのは不可能に近い。


画家になるには画力が足りないし、それに画家で食べている日本人なんて100人もいないだろう。他にはアニメーターは給料が低すぎると聞くし、可能性としては漫画家が一番現実的である。


絵が下手でも、内容で売れている人は沢山いるし、頑張れば何とかなりそうな気がする。しかし、現実は甘くないのだ。パパいわく、漫画家になるには芸能人になるくらい難しいらしい。


そこで、ネットで情報をたくさん集めた。そうしている内に、私は素人が描いたWEB漫画を見て落胆した。プロじゃなくても、こんなに絵が上手く、内容も面白く作れる人間が大勢いることを知ってしまったからだ。私の画力とアイデアだと絶望的に難しい。正直、どっちも人並み以下だ……。


クラスメイトの中で一番イラストが上手くても、社会に出たらそんなのは通用しない。それに漫画家になる人は中学時代から投稿している。今からじゃ遅いのだ。


私はやりたくない仕事なら、家でゲームをずっとしていたい。しかし、私のママは絶対にニート生活を許してくれない。だから、嫌でも働くしかない人生だ。となると、結局は勉強して就職するしかないのだ。


つまり、どうでもいい高校に行って、やりたくない仕事をして、お見合いをして、おそらく、28歳くらいで結婚する。更に子供産んで、大変な育児をこなして……、いろんな事を我慢して、我慢して……。ああ、嫌だ。ずっと子供でいたいよ。


つまらない大人なんかになりたいよ。そうだよ、クラスのみんなは不安じゃないのかな? 私だけがこんなに悩んでいるのだろうか?

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