プロローグ1
更新頻度は適当です。
よろしくお願いします。
私の心は荒れていた。
中学3年生の受験前でもあり、反抗期でもあり、思春期であったのが原因だ。いや、何よりも何をやっても、ダメな自分自身に憤りを感じていたのであった。
私の名前は時空院トキコ。どこにでもいる普通の14歳の女子中学生だ。いや、普通より全てが劣っているのだ。なぜなら、身長は平均よりも低く、腫れぼったい一重の目で、分厚い眼鏡を掛けているので、常に睨んでいるように見られる。
なので、男子からも女子からも、可愛いと言われたことは当然ない。それを補う取り柄があればいいのだが、勉強は死ぬほど嫌いであり、運動神経も死んでいるという苦行な人生を強いられている。
一応所属している部活は美術部であり、漫画やドラマだと儚い美少女が所属するイメージだ。だが、実際はオタクの集まりであるので、スクールカーストではもちろん陰キャラの位置に属する。だが、学校でいじめられているポジションでもない。
それは幼馴染で親友の二階堂ユキ、通称ユキちゃんの存在があるからである。
ユキちゃんはショートカットの美少女であり、更にソフトボール部の部長である。更に更にテストの順位が学年で10位より下に落ちたことはない。
つまり、スポーツ万能で勉強も出来て、明るい性格であるので、女子のスクールカーストの頂点にいる存在である。いわゆる、陽キャラグループの人間だ。だから、学校ではユキちゃんを中心に、全ての物事が動いていくことが多い。
あのさぁ、神様はさぁ、何でこんなに人間の能力に差をつけてしまうのですか? 私が死ぬほど努力しても、ユキちゃんのようになる事は出来ない。この年でどうにもならない事を知ってしまう辛さが大人に分かるだろうか?
しかも、ユキちゃんのママは元キャビンアテンダントで、パパは弁護士というドラマみたいな家族だ。この2人から優秀な子供が生まれない方が難しいだろう。
こうなると努力など意味がなく、もはや人生とは遺伝子の問題であり、パパとママが優秀なユキちゃんは、前からずるいと感じていた。ずるい、ずるい、ずるすぎるよ……。
でも、私のママの遺伝子は悪くない。
私のママはリコという可愛い名前である。スレンダー美人であり、仕事は看護婦さんであるので頭は良い方だと思う。スポーツも万能なので、大型バイクを軽々と乗り回しており、同性から見てもカッコいいのだ。
しかし残念な事にママの遺伝子は1ミリも、私に引き継がれる事はなかった。チビだし、バカだし、自転車の運転さえも危ないのだ。うぅ、死にたいよ。
ところで、諸君はこんな通説をよくテレビやネットで聞いた頃があるはずだ。そう、娘は父親に似ることが多い。私はこのパターンに100%当てはまってしまった。
パパの名前はテッペイ。身長は165センチであり、男性で言えばチビに入ってしまう。職業は売れないライトノベル作家であり、オタク向けの作品を執筆している。
作家といえば、村上春樹、東野圭吾、伊坂幸太郎など映画化されて、沢山のファンに囲まれて、世間でも憧れのイメージが強い職業だ。いわゆる天才と呼ばれる先生達である。しかし、ライトノベル作家は別である。
オタクの世界では教祖のように崇拝されているが、普通の世間から見るとあまり評価されていない。それに作品の内容も似たようなものばかりである。例えば、モテなくて努力も出来ない主人公の少年が、才色兼備の美少女に一方的に愛されるという都合が良すぎる展開ばかりだ。
テレビ番組で映画のランキングでライトノベル作品が入っても、ワイプの芸能人はなんも言えない歯に何かが詰まったような表情をしているのだ。おそらく、女の芸能人は心の中でドン引きしているに違いない。つまり、オタクには受けても、世間の人は気持ち悪いと思っているのだ。
なので、同級生には父親の仕事はフリーライターという形にしている。私のパパもママの両親にはフリーライターと言っているのだ。そうやって、誤魔化して結婚しやがったのだ。だって私に娘がいて、結婚相手がライトノベル作家だったらどうするか?
おそらく、こんな感じになるに違いない。
「僕の職業はライトノベル作家です。娘さんをください」
「あら、作家さんなの? 私も若い頃は太宰治を読んでいたのよ。あなたはどんな作品を書いているのかしら?」
「僕の作品も太宰治の影響を受けています。最新作は無職の主人公が、アイドル、女子高生、モデル、女優から一方的に愛される作品です。主人公は天才で自分から努力や行動をすることは絶対にありません。そもそも、イケメンで喧嘩が強くて……ぐだぐだ」
「………」
私だったら、バールのようなもので殴って殺してしまうかもしれない。いや、一般家庭のお父さんなら絶対に反対するに決まっている。おそらく、芸人や物書きなど安定しない仕事は親としては不安なのだ。まあ、トップレベルなら話は別だろうが……。