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出会い
はじめへ。ありがとうの気持ちを込めて。捧げたい。君の成長を見守っていきたかった。
僕にとって、あいつにとって初めての子どもで、一月の初めに生まれて、一月生きて、死にました。僕にとって、あいつにとって、人を殺す選択をしたのは初めてだった。
途方のないミスをしてしまったときの浮遊感。失恋したときの締め付け感。世の中に悲しいことや、絶望的なことはたくさんあって、それは僕らの気持ちを激しく打つけれど、それは幸せなことだと僕は思った。はじめが死んだとき僕の心は穏やかなものだった。
僕のこころを水を張った水槽に例えると、こころが穏やかだと感じたのは水面が波打たなかっただけで、水の色はじわじわと濁っていたのだというのが、なんとなくしっくりくる状態かと、振り返って思う。
はじめのことを、僕は白日の下に晒したくなかった。はじめの生を誰にも貶されたくないと思ったからだ。
でも、間違いなくはじめは生きていたんだということや、愛されていたことの足跡を残したいと思った。
これから書くのは聖人君子であれなかった僕やあいつと、はじめとのことだ。