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誘拐

 作戦会議ふたたび。

 だってあの二人、何を言ってるの?

 なんとなく想像できるものが怖いんだけど。


「取り急ぎカイロスに報告しましょう。人が、それも報告されていない人がいるのは問題です。未成年のようですし」

 そう言って師匠が笛を吹いた。といっても音はしない。なんだ? 犬笛?


 なんて思っていたら、すごい勢いで火の鳥イカロスらしき光球が飛び込んできた。イカロスすごいな! そして相変わらず聖獣だの魔獣だの呼びながら使いっぱ……。

『きいい! うるさいわね! 小娘の役にたつ気はないわよ! カイロスの頼みだからよ! で、何?』


 うん、元気そうでなにより。

 師匠がかくかくしかじかと説明する。

『なにそれ! 私燃やしてこようか? ぜーんぶ綺麗になるわよ?』


 いやいいから。殺人になっちゃうから。

 そしてバビューンとまた凄い勢いで帰って行ったのでした。イカロスは多分どんな通信手段より早そうだな。便利な子だ。


 私もそんな子がいたらなあ……。

 ん? 師匠のその目付きはなんでしょう?


「気づいていないのかもしれませんが、以前に偽『再来』に啖呵を切ったときのように、その場に行って姿を現して、報告するだけでいいのではないですか? あなたの場合。今もやってもらえばよかったですね?」


 あ、なるほど。気付かなかったわ。

 こんどやってみよう。


 そんなことを話していたらまたイカロスがバビューンとやって来た。

『確保してこっちに送れって』

 ええ!? 簡単に言ってくれちゃってるじゃないのー。

 まあ、保護するのは大事だとは思うけどさ。


「了解」

 って師匠、簡単にお返事してるし!?

「そんなことも出来ないで、『セシルの再来』は名乗れませんよね?」

 って、こっちに丸投げしないで! どうやるんだよー。そんな犯罪やったことないよ。

 そしてイカロスは、師匠の返事だけを持ってまたバビューンと帰って行った。


「でも早めに対処しないと、あの二人、どんどん魔力をあのトゲの魔術に注ぎ込んで、どんどんやっかいになって行くばかりなんですよ。早めに止めさせないと」

 そうなんだよね。

 でもちょっと新興宗教っぽくなっているんだよ。無理矢理連れて行くのも洗脳が抜けないとやっかいだし、そして洗脳を解くのはもっとやっかいそう。


「そこは『再来』とまで言われる人の出番でしょう? うまくやってくださいね」

 あっ! 丸投げした上に自分は高みの見物だ! ズルいズルい!


 くっそうどうすれば。

 とりあえず、情報収集するか。一体どういう話を信じ込まされているんだ。


 他に何も思い付かないので、私は適当な器に水を汲んできて、指を浸けて二人の近くの水に行くことにした。

 祭壇といえば、水がある確率が高い?


 お水確保ー。よかった。お水が置いてあった。

 ボソボソ声がする。しばらく聞いて、そして水の記憶も探る。でもこれだけでは情報が足りないな。

 仕方がないので、次の日は一日中私はこの二人を見つめることになった。ついでにちょっと記憶も見せてね、悪いけど。印象の強いところだけにするからね。



 で、結論。

 この兄妹、見事に騙されている。見事というのは、やり口が見事に胸くそ悪いということよ?

 どうやら幼い時に誘拐されて、そのままここに監禁生活。情報は一切与えられず、ただひたすら(いにしえ)のセシルを復活させるために魔力を注ぐ日々。兄の方は復活したセシルに弟子にしてもらうんだそうで。世話をするのは家政婦らしき人のみ。だからこの二人が超なついているね。わかるわ。お母さん代わりなんだね。この女の人も可愛がっている様子。それはよかった。


 ならばこの人もまとめて三人保護しないとか。

 しかし洗脳どうするよ……。

 洗脳を解くかとりあえず確保か。

 でも、三人が居なくなったらあの噂の叔父さんが怪しまない?


「まあカイロスが送れと言っていますからね、言う通りにしましょう。彼にも考えがあるのでしょう」

 そうか、了解。


 じゃあ、作戦会議ですね、師匠。もちろん巻き込むよ?



 その日の深夜、作戦決行。

 まずはあの家政婦さんのところへ意識を飛ばす。そして、暗示。

 今後の指示を与える。


 そして二人の元へ。さあ、茶番の始まりだ。何度目だ、まったくもう。


 真っ白の姿の私が寝室に姿を現す。

 今回知ったけど、白い影って、省エネルギーのたまものなんだね。一番楽なのよ。色をつけるのにも魔力がいるのだ。

 シャドウさん、省エネの「だんなさま」の姿だったのね。本当に弱っていたんだな。今は元気になってきているんだろうか?


 まあ、それはおいておいて。


「おきなさーい、二人とも」

 ……。

「おきなさーい」

 …………。


「ちょっと! 起きなさいよ! 若いからって力一杯寝ているんじゃないの!」

「おーい! 起きろ!」

 こいつらちょっと叩いていい? 「盾」で。

「起きなさい!」


「……ぅーん?」

 やっと起きたか。ゼエゼエ。


「起きなさい。二人とも。アダムとイヴですね?」

 なんとも突っ込みどころのある名前だけど、叔父さんのやる気の無さの現れなのかなんなのか。


「! お兄ちゃん! アダム! 起きて!」

 うん、イヴちゃんいい子ね。そのまま叩き起こして。


「んん……なんだよ、うるさいぞ……ああっ!?」


 あら、お兄ちゃん、腰が抜けた? 飛び起きてそのままへたりこんだよ?


「私はセシル。あなたたちの呼び掛けが聞こえました。私を呼んだのはあなたたちですね?」


「! そうです! 僕たちです! あなたを復活させるために、魔力を注いできました! ぼ、ぼくを弟子にしてください! あなたと一緒に行かせてください!」

「わたしも! わたしも頑張りました! 私も連れて行ってください!」


 はーい脱出希望いただきましたー。了解ー。


「私はここにはいないのです。今の私は私の姿を映像として見せているにすぎません。私の居るところまで来てくれますか?」


「「 はい! 」」


 うん、良い返事だね!

「では、彼女と一緒に来てください。私のところまで。他言は無用です。私は復活したことを知られたくないのです。いいですね? 内緒にするのですよ」


「「 はい! 」」

 うん、良い子たちだ。

 そして家政婦さん入室。念の為に監視魔術を避けるための目眩ましの魔術を三人にかけて。

 さあ、二人を外へ!



 外には師匠が隠密の結界を施した馬車を準備しているので、そこに乗り込ませる。

 ドアを閉めたら厳重に封印。悪いけど、洗脳が解けるまでは慎重にいかせてね。

 そして、さあ、「眠れ」。


 馬車が静かに走り出す。

 護衛に火の鳥イカロスをつけて道中も安全に。

 カイロスのおっさん、後は頼んだよー。


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