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再びの温泉

 下手くそな仮病を使ってお部屋に入ると、懐かしの旅装束に着替え、髪の色も変えて髪飾り装備。そして館を抜け出した。


 久しぶりの旅だ。なんか懐かしいぞ。お留守番? のおっさんには悪いけど、ちょっとうれしい。

 これが、何の憂いもなく行ける旅だったら良かったんだけどねえ。まあ贅沢は言うまい。おっさんも頑張っていることだし。私に出来ることが有るなら、できるだけ力になるって決めたしね。ええ。自分の身がかわいいのですよ。おっさんに失脚されては困る。悪いか。平穏な明日のために! 私は全力で努力する! がんばるぞ。

 おっさんからは、くれぐれもやらかすなと釘をさされたけど、やだなー、私も自らトラブルなんてごめんなんですよ。もちろんです!


 師匠と落ち合って、連れていかれた先は、馬車だった。

 馬車だ! 初めて! なんか金持ちっぽい!

「カイロスは金持ちですから。目立たない馬車を出させました。時間が惜しいですからね」

 しれっと「出させた」とか言っちゃうカイル師匠もなんかセレブっぽいですね……。


「せっかくですから授業です。この馬車は私たちの行き先を知られないように御者を置きません。目眩ましの仮の御者の置き方と、馬車の自動運転の魔術のかけ方を……」

 はい。師匠は師匠でした。スパルタだった。いきなり実地だよ。相変わらずだ。


 でも馬車は凄いね! あっという間に着いたよ。昼前に出て夕方には着くって、徒歩の時とは大違いだ。


 温泉! 入るぞ! 美味しいご飯もね!


「部屋は2部屋隣同士です。でも私が例のものを探る時にはこちらに来てもらいますよ」

 もちろんです! お供しますとも~。

「あ、あとこの前のあなたの話にあった『龍の巣亭』での行いを見る限り、必要かと思いましたので、部屋に温泉を用意しました。思う存分この周辺の土地を探ってください」


 ……はーい。なんだろう、このわくわくしているところに仕事を突っ込まれた感じ。温泉には身も心もリラックスして入りたかったよね……。

 まあ、人の金で泊まるのに、文句は言えません。はい。ここの逗留費用は全部シュターフ領主持ちなんですよ。師匠が立て替えて後から請求するらしいです。師匠、前から思っていたけど、実は結構お金にうるさいよね。他人の金だと思ってこんな豪華な部屋をとったな、きっと。金持ちって、こんな部屋に泊まるんだーという雰囲気満々なお部屋ですよ。やったね!

 来れない上に金だけ請求されるおっさん、ちょっと可哀想。しょうがない、お土産でも買っていってあげようか。ここキーホルダーとかあるのかな?


 まあ、夕飯までは自由時間になったので、さっそくお部屋のお風呂に入りますよ! ああ……お風呂……なんて素敵な響き。

 お部屋のお風呂は露天ではなかったけれど、大きな窓から見える風景は美しく絶景です。すばらしい。お湯は透明で、滑らかで、濃厚。ああ……極楽。


 でもやっぱりあの『龍の巣亭』の露天風呂にあったようなキラキラは見えないんだね。ということは、あれはやはり魔力もしくは何らかのエネルギーだったということが確定か。


 あれはたまたまエネルギーの流れと温泉が重なっていたんだよね。ここには無いのかー。残念。あれがあると本当に満たされる感じで天国なんだけどなあ。

 この近くには無いのかな、エネルギーの流れ。噂の叔父さんが近くに別荘を建てているということは、この近くを流れているってことだよね?


 んー?

 探してみる?


 温泉の湯を伝って、この周辺の土地を眺めてみる。

 現地で直接水脈に触れているせいか、周りの土地の細かい感じがよくわかるよ。

 噂の叔父さんの別荘があそこ。その近くにエネルギーの流れの本流があって、別荘を起点に曲がって行く。けっこう近いじゃないか。別荘から先の本来の流れがあったところも大体わかった。なんとなく土地に余韻が残っている感じ。今は来なくて寂しいね。


 ふーん?


 別荘の下へ流れる本流が思ったより近くに感じたので、イケナイ考えが浮かんじゃったよ?


 ちょびっとならいいかな? ちょびっとよ、ちょびっと。ほんの少ーーし。

 なんていうの? 水脈が流れるところのまわりの土にすこーし水が染み込んじゃうくらいのレベル。いわゆる誤差ってやつ。そう。誤差ならいいよね? 全体に影響? 大丈夫ないない。


 ふふっ。


 私はエネルギーの本流の一番近くを流れている水脈まで行って、そこからエネルギーの太い流れに手を伸ばしてみた。凄い大量のエネルギーが太く太く流れている。その一番端っこの、水しぶき程度のエネルギーを掴んでみた。よし、一本つーかめた!

 ゆっくりその流れをこっちに持ってきてみる。ぐいいー。そう、こっちよ、こっち。この全体に比べたら糸より細い支流をゆっくり剥がしてこちらに誘導する。少しずつ。少しずつ。そして。

 ここに繋がる水脈まで持って来ることができた。

 エネルギーと水脈が合流する。エネルギーは土の中は流れづらそうだったけど、水脈に乗ると息を吹き返したかのようにするすると流れ始めた。

 よし! 来い!

 そのまま軽やかにこのお風呂まで誘導する。そして言い聞かす。ここにいて?


 そして私の入っているお風呂に、キラキラの光が漂い始めたのだった。


 ああ……! 極楽! 最高! 頑張ったかいがあったというもの!


 そうそう、このキラキラがもっと来やすいように、水脈を限りなくエネルギーの本流に近づけることは出来るかしら? 進みづらい土の中の道は出来るだけ短くしてあげたいよね。

 水脈を探り、一番近いところを通る水の流れを、真っ直ぐから、少し湾曲するようにエネルギーの本流に向かって押してみた。ちょーっと寄り道しましょうかー。


 ぐいぐいー。ぐいぐいー。


 あっ!


 ……接触しちゃった……。やり過ぎた?

 んんー?


 でもどちらの流れも影響はなさそうだから、まあいいか。

 おお! お風呂のキラキラが増えた~。

 うれしい~。


 いいんじゃない? 結果オーライだ! よね?


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