表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/119

吐かされました

 原因はわかった。

 だけど、これをどう伝えるのか。それが問題だ。

 なにしろ『龍の巣亭』とその後の出来事を避けて説明なんて出来ないからだ。

 でもあれを言うということは、今まで黙って誤魔化してきた、あーんな事やこーんな事が全て明るみに出てしまうということなのだ! あんなに必死に隠してきたのにー。え、今さら?


 どうしよう?


 いっそ、他のエネルギーの出口を探して、そっちにお引っ越ししてもらうというのでも良いのでは?

 あ、火龍の存在が……。火龍がここに住んでいたんだっけ。


 今はどこにいるんだろう。もうすでにお引っ越しした後とかないのかな。

 でもそしたら何処にいるのか知っているはずなのか。


 一応聞いてみるか。

 一人で豪華な執務室にいるおっさんを捕まえてみた。すごい書類だな、そこ。部屋の豪華さととっても不釣り合いな殺伐とした書類たち……。うんちょっと聞いたら即退散しよう。邪魔してごめんね?


「おっさん、火龍って、お引っ越しできるもの? えーと、他の魔力の強い土地に」


 ん? という顔で顔を上げながら答えてくれる。

「それはオレたちではどうにも出来ないな。龍に命令できる人間はいない。火龍が嫌なら無理だな。そして龍はもう少なくとも千年以上はここにいるぞ、たぶん」

 うわー、じゃあ嫌がるだろうねえ。お引っ越し案は没か。まあそんな土地が都合良くみつかる可能性もあんまりないんだろうけど。


 なるほどーありがとうー、と、引っ込もうとしたところ。


「なんだどうした? もしかして、この土地がもう駄目とか言うなよ? 頼むから」

「あー……いや……大丈夫」

 あ、おっさんの眉がピクッとした。ヤバい。何か感づかれたか?


「なんだ? 何が見えた? 何を見つけた?」

 エー? ナンノコトカナー?


「そうかそうか。お前の目、流石だな。じゃあ時間空けるから、今からカイルの所に行こうな? お前も行くんだぞ? 時間どれくらいいるか? 一時間じゃ足りないか?」

 ガタッ。

 あー、立っちゃったよ……。どうしよう、ここからどう誤魔化せばいいのでしょうか……。

 刻々と断罪の時間が迫っている気がするのは何故かしら?

 凄いやぶ蛇だっよ! しくしくしくしく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「なるほど、それは思っていたより厄介ですね」

 師匠の眉間にシワがよる。



 ええ! ゲロゲロ吐きました。もう何も残ってません。洗いざらい全て吐かされました。

 だって、全部繋がっているからね? ちょうどいい区切りなんて私には見えなかったのよ。私の残念な頭では、もうどうにも誤魔化しようがありませんでした。しくしくしくしく。


 おっさんの目が座っていてとっても怖いです!


「お前……よくも黙っていたな?」

 ひぃー! って、最近も聞いたなその台詞……。


「なんだよ! あれもこれも全部お前か! 全部! おまえか! 逆にあの"末裔"がやったことは何かあんのか!? ええ!?」

 え? 膝の呪い?

「あれか……一番余計なことじゃねーか」

 あらがっくりしてる。


「他に奴がやったことは無いのかよ?」

 え? あったかな? 私に魔術かけてたくらい?

 あ、でもやり方は教えてくれたんだよね。だから別にシャドウさんも全部出来ると思う。


「なんだこの最強夫婦……」

「さすがあの一族の長ですねえ。流石です。今寝ているのでなければ是非ともご挨拶したいところです」

「あっ! カイル! お前オレを見捨ててあっちの味方につくつもりか? 裏切り者!」

「何を言っているんです。私とあなたは友達ですが、その人が王を継いでいたなら、私の主君ですよ。私は聖魔術師ですから」

「お前……ブレないね」

「そういう教育を受けて来ましたからね。代々」

「王都に聞かれたら即刻逮捕だぞ」

「だから、ここだけの話です」


 へえ。「だんなさま」すごいねー。


「お前……あっさりしてるな?」

 え? だって、私にはあれが普通のシャドウさんだったし、多分きっと「だんなさま」でもあるんだろうなーと。今さらよ? いまさら。私に何をびっくりしろと?



 それより、これからを考えた方がいいよ?

 あの巨大なトゲを抜かないと、ここにエネルギーは流れて来ない。でもあの大きさと刺さっている流れの太さを考えると、抜いたら影響が天災レベルになるかもしれない。まず気候は大変動するだろう。死人が大量に出るとか嫌でしょ。

 トゲが刺さってから変わって来たことに、年単位で適応してきたのを突然抜くのは、出来たとしても危険すぎる。やってくれと言われても私は今はお断りです。そして出来るかどうかもわからないよ? あの大きさだもの。


「彼女も薄々わかっているとは思いますが多分、そのトゲ状の魔術ははじめは小さかったものを年月をかけて大きくしていったのだと思います。そして大きくなって今や広範囲に多大な影響力を持つようになっていると思われます。確かに今すぐに抜くのは危険でしょう。まずはその影響を把握しないと」


「わかった。大至急調べるようにする。前領主のおやじどのにも報告するぞ?」

 もちろん。判断と対策はやってもらわないと。

「20年か……オレが離れていた期間が長すぎたな」

「たぶんそれくらいかけているかもしれませんね。そしてその過程で、魔力が不足した火龍が動けなくなっている可能性があります」

「魔力を補充できればいいんだが……」

 補充かー。どうやるんだろう? 今は地下にも流れていないしなあ……。


「それよりシエル、そのトゲは、何処に刺さっていた? 場所はわかるか?」


 うーん、あっちの方?

「おい!」

 だよねえ? でも土地勘なんてないんだよー。しょうがない。一緒に行けばいいんじゃないかな?


 チャンネルを通して二人の意識をつかんで、上がる。慎重にね? 髪の色とかいろいろあるからね!


 一度感知したエネルギーは上空からも感じられるようになるので、その流れにそって遡る。そして黒い点を探す。

 ……あった。あそこ。

 そこの上にやってきて見下ろす。なかなか大きくて豪奢な建物が建っていた。あの中で魔術をかけていたんだろう。


「……叔父の別荘だな。オレが呪いにかかる前に建ててたやつだ。そんな頃からこんなことやってたのかよ。ったく!」

 まあ、そうだろうね。うん、20年分の魔術か……重いなあ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このお話はBKブックスさんから書籍化されました!

「放置された花嫁は、ただ平穏に旅がしたい 」

放置された花嫁は、ただ平穏に旅がしたい 表紙
紙の書籍は一巻のみですが、電子書籍として最後の三巻まで出ています!(完結)
読み放題にも入っているので、ぜひお気軽にお読みください!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ