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監禁?

 なんだかんだ長かったよね。うん。なにしろおっさんが言い出したのが『龍の巣亭』だったからね。あの時は、まさか自分がお尋ね者になるなんて思ってもいなかったよね。


 でも、着いたよシュターフ! やたら大きな街だったよ! てか、領か。


 美味しいご飯! かわいいお菓子! そして素敵なキラキラのお店たち! ビバ都会! 宿は豪華だしベッドはふかふかだ! 堪能するぞ! 

 なにやら忙しそうなおっさんも不機嫌でだんまりな師匠も放っておこう!


 私のご機嫌は最高潮です! 

 これは食べ歩きにも観光にも期待が持てますよ!




 ……なーんて浮かれていたのは、ええ、ついさっきですよ。

 どうしてこうなった。


 シュターフ領というところは、この国で一番大きな領だった。しかも王都に近い。大きな領なのに、馬車で王都まで三日らしい。まあ馬車なんて乗ったことないけど。

 そこの領主なんて、本当に大物だったんだね? 知らないで寝室に侵入しちゃったよ、私。勝手に結界とか張っちゃったし。どうりで館が宮殿のように大きかったわけだ。


 怒られなくてよかった。


「はあ? 怒んねーよ。むしろありがとうだろう。なにビクビクしてんだよ」

 おっさんは相変わらずです。いやちょっと遠慮しようよ。

 なにしろ、目の前には、シュターフ領主さまがいらっしゃいますよ。お願い、お行儀よくして……。


「いやいや、本当に貴女のお陰で助かりました。いやあ私としたことが、呪いなんぞに負けるとは。危うく死にかけましたわ。はっはっは」

 にこにこ好好爺という感じの領主さまです。真っ白い髪とお髭が素敵ね。

 もちろん私は 最高潮に 緊張しております。


 でもね? やっぱり自分がかけた結界は確認しておきたいしね? 送った水晶玉の様子も気になったのよ。だからちょっとおっさんに聞いてみたの。ちょっとした出来心だったの。なのに。


「ん? 恒例のご当地食べ歩きはいいのか? まあ、何時でも行けるか。よし! じゃあ行こう。今から行こう。そうしよう。逃げるなよ?」

 と言われて即刻連行されました。シュターフの領に入って数日、中央の街シュターフに入ってすぐのことでございました。ちーん。聞くんじゃなかった。せめて明日にすればよかった。私の食べ歩き……。


 聞いただけなのよー! 大丈夫って言われたかっただけなのよー。まさか乗り込むとは! 一人で行ってくれ。


 ちなみにカイル師匠はずっと黙っておっさんに従ってます。珍しい。喋らない師匠。


「まあ、これが『再来』の本物だ。井戸堀の時もその前からも一緒にいたから間違いねえよ。王都のほうが偽物だな。なんでそんなのがまだ『再来』だと言い張っているのか疑問だが。オレの膝の呪いを解いたのもこいつらしい」

 おっさん! 言葉遣い! 礼は欠いちゃだめ! もーハラハラする……。


「ああ、いいんですよ。カイロスは昔からこうですからね。久しぶりに会えて、変わっていないようで安心しました。元気だったみたいだな? 20年ぶりか」

「そうですね。ちょっと時間がかかってしまって、おやじどのにも心配かけて申し訳ない。いやあ何とかなってよかった。シエルありがとうよ。膝の呪いを解いてくれて」

 ん? 膝の呪い? 何の関係が?

「カイロスは、シュターフ領に入ると発動する呪いを膝にかけられていたのです。なので呪いにかかっていたこの20年というもの、なかなか会えなかったのですよ。私はあまりここから動けませんからね」


 おお! そんな呪いだったのか! 


「そうじゃなくても普段から痛むから、ほんと辛かったわ。まあ、おやじどのが死ぬ前に帰って来れてよかったよ。危うく間に合わないかと思ったぜ。これからはオレが働くからな!」

「そうだな、頼んだぞ。私ももう年だからな。呪いに負けるとは本当にモウロクしたわ」

「ほんとだな。これからは楽しい余生を送ってくれ」

 ちょっと。失礼じゃない? 勝手に引退させないのーもう。


「いやいや、引退ですよ、もう。大病もしましたしねえ?」

「おう、ゆっくりすればいいよ」

「じゃあ、後は任せたぞ」

「まかせろ」


 はい?


 あと?


 …………?


 ま さ か



「じゃ、出来るだけ早く継承の準備をしないとな」

「もう出来ているよ。いつでも出来る。明日にでもするか」

「王都への申請は? いいのか? 勝手にやって」

「私が死にかけたからな、起き上がれるようになって真っ先にしておいたからもう許可はとってある。王都もさすがに死にかけに続けろと言うわけにはいかないからな。跡継ぎが帰ってくるとなったらもう反対なんて出来んだろ」

「なるほど、さすがおやじどの」

 うっひゃっひゃっひゃっひゃ……って……。



 え……………………?


 私はびっくりしすぎてしばらくその場で固まっていた。おめめが飛び出すとはこういうこと?

 え? だって、びっくりするよね? す る よ ね ?


 カイル師匠、なんでしれっとしているの?

 ……あんた、知ってたな? そして黙ってたな!


「じゃあシエルとカイルは部屋用意してあるからな? これからはそっちに住めよ。特にシエル、お外は危ないぞ? 勝手に出ていくとまず真っ先に誘拐されると思った方がいいぞ? お前、自分で思っているより有名人だからな? だからちょっとここにいて、しばらく大人しくしてくれ。たのむから」


 え、それってソフトな監禁では? しかもなんか脅迫も入っている気がしますけど?

 宿に置いてある私の荷物……は、このおっさんがどうせ抜かりなく移動させているんだろうな。うん。知ってた。そういう人だって。


 逃げるなよ? って言われた時に、とりあえず逃げておいた方が良かったのか? あ、でも逃げてどこに行くって話だ……いかん、混乱しているわ。


 だれかー。説明してー?

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