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師匠の指導

「そういえば、師匠に回復の魔術も教わったから、完全じゃあないかもしれないけど、定期的にあっちに行って回復の魔術をかけた方がいいかな? 重ねがけって、できるもの?」

 ん? 何か変なこと言ってる? 師匠の目がちょっと怖いんですが?


「そんなしょっちゅう出来るのか? あれ」

「え? うん。今やってもいいよ? 師匠がやめろって言うならやめるけど」

「そこで何で私の判断が必要なんですか……」

「え? だって、出来るけど、やっていいのかは私わからないから。師匠なら判断できるかなーって」


 だって、また勝手に良かれと思ってやって、知らない落とし穴にはまるのはもう嫌なのよー。私は学習したの。落とし穴はどこにでもある!


「私が例えばこっそり回復させるとね、誰がやったんだどうやったんだ逮捕だ捕獲だってすぐ大騒ぎになるんだよー今までのことを思い出すと。私は学んだの!」

「……へえ? そんな事が今まで何かあったんデスネ? オレは井戸の件くらいしか知らねえぞ?」

 あっ! アレー? ドウダッタカナー?


「……まあ、他にも何かやってそうだなとは思っていたけどな。ただ今回はやってくれると助かる。でも確かに信じてもらえるかは別問題だな。予想外の事態は今は避けたい。まだカイルがやってることにした方が信憑性はあるんだが、そうすると今後が面倒になるしな……」

 うーむと考え込んでしまった。

「私は嫌ですよ、そんな出来もしないことをやったなんて言いたくありません」

「まあそうだよな……」


 うーん……あ、もしかして、回復の魔術を込めた魔道具を火の鳥イカロスに運んでもらえばそれでも回復できる? イカロスって物を運べる?

「ああ、軽いものなら運べる。な? イカロス?」

『まあいいわよ? この小娘のアイデアっていうのが気にくわないけど、しょうがないわね』

「ただ問題は効果ですね。どうしても直接かけるよりは弱くなりますから……。ああ! そこの私の弟子にやらせましょう。きっと良い働きをしてくれますよ」


 え? わたし?


「ああ、そうだな、いいかもな」

 おっさんも? え、でもここは魔道具作成のプロたる師匠の方がよくない?

「いえいえ、せっかくですから教えてさしあげます。練習だと思えばいいんですよ」

「そうだな、もし失敗したらカイルにやり直してもらえばいいしな」

「ええ、いいですよ? まあそんな事にはならないと思いますけどね。あなたも私を師匠と呼ぶのなら、もちろん私に従いますよね?」

 あれ? なんだろう、この何かを失敗しちゃった気分。首根っこを押さえられている感じ……。


 ま、まあやってみるのはいいけど?

 今日のお粗末なざっくりした魔術しかできませんけど? あ、教えてくれるのか。じゃあ勉強するんだと思えば……かりにも領主様を練習に巻き込んでいいのかな?

「領主のおやじどのはちょっとでも回復出来たらもうけもんの状態なんだから気にするな」

 あ、はーい。


「ではチャンネルとやらを繋げたまま、私がお手本をしますから、魔力の動きを感じてください」

 そう言って、師匠が取り出した小さな黒い石に詠唱とともに回復の魔術をかけ始めた。


 ほうほう……なるほど。これを、こうして、こう。あの魔力をこっちにね? ふむ。


「ではこの石に重ねがけしてみましょう」


 はーい。

 では、魔力入れまーす!

 ピキ。


 あれ? ヒビ入っちゃった? いやん、失敗!?

 師匠がジト目でこっち見てる……え、ごめんなさい。えっと。許して? え、弁償?


「……そうですね。ハジメテですからね、加減も難しいですね?」

 うんうんうん。なにしろハジメテだから……よくわからなくて~。

「……次はもっとでかくて丈夫なものにでもするか、カイル」

「そうですね、この石程度では彼女の魔力を受け止めきれないみたいですし? ええ、今まで私は困ったことはありませんでしたけどね?」ジトー。


 え? あれ?

 またやり過ぎたってこと……?


「一気に魔力を入れすぎです。少しずつ加減して入れていってください。たいていのものは、あのアトラスの守護魔術より脆いんですよ。とりあえず何かそこらへんの軽いものでもう一度やりましょう。それでも、明日ちゃんと作った物を届けるまでの繋ぎにはなるでしょう」


 なるほど。一気にやってはいけないのね。了解。

 そして私は次に、おっさんの服についていた金属製のボタンに慎重に回復の魔術を込めたのでした。


 でも、ほんのちょっとだったよ? ちょびっとだけ。効くの? これ。


「まあ普通は金属には魔力は入れられないんですけどね。もしやと思ったけれど、やっぱりあなただと出来るんですねえ、へえ」


 あ! 実験台にされた! ひどい! 抗議だ! 私の人権を守れ!


「でも視たところそれなりに効果も出そうですから、明日までの繋ぎにはいいんじゃないんですか? どうせ今、他に鉱石の手持ちもありませんし。なんならもう少し個数を増やしますか?」


 あら。じゃあおっさんボタン全部ちょうだい?

「きゃーハダカにされるうぅ」

 とか言ってないで。はい、ちゃっちゃと脱ぐ!


 容赦なく脱がせてボタンを回収し、5個全部に魔術を込めたのでした。

 塵も積もれば……ちょっと大きな塵になりました。うーん。

 まああんまり作ってもイカロスの負担が増えるだけだしねえ。


 明日に期待!

 じゃあボタンはおっさんに預けておやすみ~。と部屋を出たら。


「ほんとあいつ何者なんだ……しれっとやりやがったぞ。金属に。しかも5個も」

「しかもこれ、一般的な魔道具より回復量が随分優秀ですね」

 とか、聞こえてますけど!?

 ま、いいものが出来たなら結果オーライ?

 じゃあいいか。


 今回は落とし穴にははまらない予感がする!

 やったね!


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