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遠見

「あ! カイルーそれ言っちゃダメなんだよー。そういうこと言っちゃうと、こいつ隠すからな? そこはしれっと黙っておかないと、裏でこそこそやり始めるんだぞ。そっちの方が危険だろうがよ。だからお前もポーカーフェイス頑張れ」


  って、危険じゃあないから! 私!

  もう隠すのやめたってばー。しっかしカイロスさんがそんな風に思っていたとは……。


  カイルさん? ジト目でこっち見るのヤメテ?


  で、その「王の領域」って、どういう意味なんです?


「なるほど……無自覚なんですねそうなんですね。わかりました。なんかもう自分のプライドが馬鹿らしくなってきました。昔の聖魔術師だった祖先の気持ちがよおっくわかりました。なるほど、こういうことなのかと。いまもケロッと歩いてますしねえ。今回のことを経験していろいろ今までの謎が解けましたよ。ありがとうございます」


  え? 何にお礼を言われているのかちょっとわからないんですが……。

  それよりも、王のなんちゃらをね?


「……『遠見』はかつて、『月の王』にしか出来ませんでした。思いが通じ合った後のセシルも出来るようになったという話もありますが、そちらは定かではありません。つまり、さっきあなたが当たり前のようにやったことは、本当はこの世に最高でも二人しか出来なかったことで、そして今は出来る人はいないはずの魔術ですよ」


  ん? あれ? そうなの? でもシャドウさんもやってたよ? 千里眼便利だね?

  魔術としては、遠見っていうんだ?

  っていうことは、これ言わない方が平和なやつだね! もちろん言わないよ。くわばらくわばら。


「まあ、やり方を先程体験させていただいたので、私も頑張れば出来るようになるかもしれません。魔道具を用意して、魔力を注ぎ込んで、何日も準備すればね。ええ、出来るかもしれませんね。いつかやってみせますとも! でもそれが精一杯なのが非常に悔しいですね! 遠見した先で結界を張るのも、念入りに準備したらいつか出来るかもしれません。もういっそ私のテーマとして研究したいくらいです。それが出来るようになったら、私はご先祖さまに胸を張れますし、間違いなく魔術師の中でもトップクラス、名実ともに聖魔術師ですよ」


  一気にジト目で言われたんですけど。

  えと……頑張れー?


「おお!? カイルやる気だなー」

  おっさんは呑気すぎだろう……。


  うーん、それにしても、またやっちゃったのか私。

  どうもそこらへんの加減がよくわからないよね。普通って難しいね?



  なんて考えていたら、私、いま気づいたんだけど。

「そういえば私、さっき、毒殺の予防していなかった。何かやった方がいい? 毒を入れない結界とか?」

「お前、それやってくれって言ったら、またあっち飛ぶつもりか?」

「え、うん。ちょっと行ってくるよ? もう場所もわかったし。でも毒を防ごうとしたら、薬もお部屋に入れられなくなるかな? どっちも同じようなものだもんね。あと、今の状態だとあの部屋を出るとまずいよ。そこも考えないとね」

「うーん、見分けがつけばいいんだがなー。セイレーンのじいさんが見てくれたら一番いいんだが……」

「セレン?」

『ほいほい~~。どうせついでだから見とくよ~?』

「あっ! セレン! ありがとう~!」

「おおすげえ! じいさん助かる! ありがとうよ。領主のおやじさんが元気になったら、あっちに出来ることなら何でも言ってくれ」

『ほいほい~まあ乗りかかった船じゃて、お前さんたちが来るまでは守ってやるから安心するがいいよ~』


 すごい! セレン、かっこいい!

『じゃろじゃろ~~?』

  聞こえるのは声だけだけど、きっとお部屋でウネウネしているな。


「なんで水龍を手のひらで転がしているんですか……。あなた、再来どころか本人なんじゃあないんですかね、もう」


  ぎっくーん。


「あ、カイルそれ言っちゃダメ! ますます嫁に来てくれなくなるじゃねーか。やめろ。ややこしくするな」

「だから行きませんってば!」


  なんなの? もうこれ、漫才なの!? 様式美?



 その日の夜。

 おっさんとカイルさんのお部屋で。


「まあシュターフ領主の容態は落ち着いているらしいから、当分は大丈夫だろう。水龍もついてくれているし」

 どうやらちょこちょこ火の鳥イカロスを飛ばして、報告をしてもらっていたらしいです。使い走りにされる火の鳥。いいのか? 畏怖の対象とか言っていなかったか?


「イカロスはもともとシュターフ領主の鳥だったんだからいいんだよ。その後オレが譲り受けたの。だから今回の件はイカロスも怒っている」

『そうよ! 失礼なことしてくれちゃって! 私のお気に入りに手を出すなんて許せないんだから!』

 ほんとだ、怒ってるわ。見た目もボーボー燃え上がっていて可愛い~。よしよし。

『きいー! 触ったら焼くからね! あんたでも容赦しないわよ!』

 なんか嫌われてる……最初からだけど。しくしく。

「ああー、まあお前、水属性だからな。イカロスは水属性は何でも嫌うから気にするな。むしろ無言で焼き払われてないだけマシだ。よかったな?」

 相変わらず激しい性格ですね、イカロスさん……。


 ところで水属性ってなんぞや?

 と思ったらカイルさんにギョッとされてしまった。


「あなた、そんなことも知らないであの唯一無二の水龍を……。ほんっと無知って恐ろしいですねえ。全国の水属性の魔術師から刺されても知りませんよ? 魔術師は、火、水、風、地、木のどれかに性質が片寄るんですよ。片寄れば片寄るほど魔術師としての力が強くなるんです。なのでカイロスは火、あなたは水に片寄っているので強い魔術が出せるのです」


 へえぇー、じゃあ師匠はどちらなんです?

「あなたに師匠と言われるのは非常に不本意ですが、まあそれは置いておいて。私はどれも同じくらいに扱えるのですが、その分カイロスの炎のような大きな魔術がほとんど使えないのです。私は5つ全てを扱えますが、小さなものばかりです」

 おおー、それって凄いんじゃないの?


「カイルはすげえ珍しいやつなんだよ。お陰で大抵の魔術なら自由自在だ。だからあの大量の魔道具を作れるんだよ。ただ、ちょーっと広範囲な魔術は苦手なんだな。お前がオレの火を出す魔術が全然できなかったの、あれが普通なんだよ、水属性ならな。オレも水はさっぱりだ。だがカイルはどちらも出来る」

 ほおぉ~、なるほど。師匠は希少なのね、能力も。

「その嫌みったらしく師匠と呼ぶのはどうにかなりませんかね。持ち上げとけば上機嫌なんていう簡単な人間ではないんですよ私は」


 ええー、でもその方が短くて呼びやすいし、物知りだから勉強になるしで、つい……。何でも知ってるんだよ? 凄いよね!

 あ! それに、表向きは私はカイルさんの助手もしくは弟子なんですよー呼ばれ慣れていた方が自然よ? ね? あ、「先生」の方がいい?

「……どちらでもいいです」

 わかりました! では師匠で! そして私は弟子! 助手じゃないよ? 弟子の方がなんかカッコいいよね!


「はあ……」

 あれ? なんでため息?

 おっさん、何で慰めてんの?

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