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魔道具

「マジか! マジなのかっ!! くっそう! くっそう!! やられた!」

 カイロスさんがまだ叫んでいる。どうしたどうした!?


 おっさん、「だんなさま」を知っていたってこと?

 私には何にも見えないんですけど……?


 そんな私の様子を見て、カイルさんが怪訝そうにたずねる。

「彼女は何で不思議そうな顔をしているんです?」


「こいつは記憶が無いんだよ! 自分が何処の誰かもわからないの。騙された!」


 失礼な……。


「なるほど……では何も知らないということですか」

「そう! こいつにとっては全てが他人ごと! 当事者意識ゼロ! お陰ですっかり騙された……」


 おーい、置いてかないでー? 私の話題なのに、何にも見えないよ?


「どうりであいつ、シュターフ行きを渋ったわけだ。あれからだよ、こいつにベタベタ見せつけるようにくっつき始めたの。ちょっとは危機感があったってことか」

 おっさんがガシガシ頭を掻き回している。


 そういえばそうだったかな……? うん、そんなだったかも。デレた「だんなさま」が頭をよぎる。


「で、どういうこと?」

 そろそろ痺れをきらしても良い頃よね? 私よく我慢したよね?


 でも。

「…………シュターフについてから教えるわ。今はダメだ。どうせ納得いかねぇだろうよ。しかも長くなる。シュターフに着いたら記録があるから、それ見せながら説明してやるよ。来るよな?」

 おっさんは力一杯ジト目をしながら言ったのだった。


 記録? じゃあ私はシュターフと何か関連があるのね?

 と、思ったけど。


「ごめん……じいちゃん……オレ、しくじったよ……くっそうー……どうりで……くっそう、どうりで!」

 と言って頭を抱えてしまったので、なんだか、聞けなかった。




 カイロスさんがしばらく浮上しなさそうなので、カイルさんがお茶を出してくれた。

 あ、おいしい、このお茶。


「本当に記憶が無いのですね?」

「はい。全然。」

「では、ご主人とはどこで会っていつ結婚されたのですか?」

 なにこれ尋問?

「あー気づいたら目の前にいまして。で、結婚式をしようと言われて承諾したらその場で……。あれが何処だかはわかりません」

「なるほど」


 なんだか、カイルさんはそんなにショックを受けているようには見えない。

 カイルさんはにっこりして続けた。


「私は魔道具屋をやっておりまして。あ、表の店はカモフラージュなんです。この部屋が本当の店でして。あなたとはぜひ末永いお付き合いをしていただきたいですね。ここには何でもありますよ? 何かご入り用のものがありましたら、何時でも何なりと言ってください。ご希望はございませんか?」


 おお、商人になった。

 魔道具かー。憧れの。見てみたかったやつだ!

 ここにあるもの全部? 見せてもらおう!


 あ、その前に。

「そういえば、お聞きしてもいいですか? カイロスさんがあなたを聖魔術師と言っていましたが、聖魔術師ってもういないと聞いていました。実は他にもいらっしゃるものなんですか?」


 まあ言ったのもカイロスさんなんですがね?


「ああ、そうですねえ。表向きはいないことになっています。私も逮捕されたくはありませんからね? 他にもいるかどうかは、私は知らないんですが、今まで聞いたことはありませんね」

 逮捕されたくない仲間、みーつけた! わーい親近感!


「なるほどー。とっても希少な方なんですねえ」

 なんて感心していたら。

「貴女ほどではありませんよ」

 と返されてしまった。



 まあね? 私も鈍感ではないので、なんとなーく予想はついているんですよ。


 ただ実感がね……無いのよね。ぜんぜん。


 お陰でカイロスさんの言っていた通り、気持ちが他人事なのよ、どうしても……。


 しかも、カイロスさんとシュターフが、セシルとどう関係しているのかはさっぱりなのよねえ。想像もしていなかった。なんか、……どうも因縁ちっく?


 まあ、いいや。シュターフに着いたら説明してくれるらしいし。今の私に出来ることなんて無さそうだ。聞きたいことも聞いた。よし。


 憧れの魔道具! 見せてもらおう!



 私は一通りの魔道具の説明をしてもらった。

 なにこれ楽しい! 色んなのがある! 中には想像もつかなかったような用途のものまであって面白い。

 告白石やら後ろが見える鏡やらの可愛らしいものから、絶対に出られない檻とか人に触れると雷が出て火傷もさせる剣とか物騒なものまで。

 小さなものから大きなものまで、出てくる出てくるいろいろなもの。どうやら奥には倉庫もあるみたいだ。


「全て私が作っているんですよ。だからご希望があれば、お作りすることも出来るかもしれません。何かご希望はありませんか?」


 ほうほう? 作っている? 凄いね! 作れるんだ。

 私が目をキラキラさせていたら、カイルさんが

「貴女も多分、作れますよ。やってみます?」

 と、言ってくれた。


 やる! やるやる~面白そう!


「基本は、自分が出来る魔術を道具に込める感じです。なので自分が使える魔術のものしか作れません。例えば貴女が今ご自分にかけている隠密の結界を、込めてみましょうか?」


 おお、気配を消すやつ。隠密。なるほどね?


 差し出された黒い石を持ってみる。キラキラしていて可愛いね。

 カイルさんの説明にしたがって、石に魔力を込めて、その魔力に言い聞かせる。


 見えないよ。誰にも見えないよ。

「カチリ」


「お見事です。流石ですね」

 カイルさんに褒めてもらったー嬉しい。


「……おい、さりげなくやらせてんじゃねーよ。無知につけこんで世界初のものを作らせるんじゃねえ。しかも物騒過ぎるだろそれ。値段高そうだな! いくらだ?」


 え? なに?

 ていうかカイロスさん復活した?


「カイロス、まだ落ち込んでいて良いですよ? では、この石でもやってみましょうか?」


 えっと、やっていいのかな!? 世界初とか言っている人がいるんだけど。


「気にしないでください。どんな物でも最初はあるものです」

 にっこり。


 カイルさん、結構しっかり商売人だね……。

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