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盾は鈍器

「まあ、なんだ。要は攻撃されなければダメージは無いんだから、とりあえず防御が出来るようにしようか」


 おっさんが新たな提案をしてくれた。


 ああ! あれですね? バリアー! みたいなやつ。

「あ? ばりあ? なんだそれ。とりあえずお前、結界は張れるんだから、自分に結界をはってみろ」


 はーい。って、え? バリアー知らないの? あんな便利なやつを? 子供の基本だと思っていたよ。

 おっさん真面目な子供だったのかな。


「おい、結界」

 あ、はーい。

 どういう結界がいいんだろう?


「なんにも通さないよ」

 シュン。


 あれ?

「なんか吸い込まれちゃった気がする」

「はあ? ……ああ、もしかしたらお前の旦那がおんなじような魔術をもうかけているのかもな。っていうか、お前の結界の張り方、ずいぶんいい加減だな! ちょっと呆れたぞ」


 あれディスられた。いいじゃんちゃんと掛かるんだから。じゃあ普通はどうやって結界張るんだよ。知らないんだよ。


 ちょっとムッとしたので、そうだ、と、おっさんを実験台にすることにした。

 人にかけるのは初めてだけど、筋肉の塊で丈夫そうだから、まあ大丈夫でしょう。


「なんにも通さないよ」

「カチリ」


「あっ、今オレにかけたな!? 承諾なしでいきなりかよ! ……まあ、無事に掛けることは出来たみたいだな」

 気分は大丈夫?

「ん? 大丈夫大丈夫。なんにも変わらねえから安心しろ。あ、せっかくだから解除しなくていいからな! いやーいいもん掛けてもらったぜ」


 あ、喜んでる! なんか悔しいのは何故だろう?


「いやいや、私の未熟な結界よりもですね? カイロスさんがご自分でかけた方がよっぽど満足のいく成果が出ると思いますよ? と、いうことで、どうぞご自分でやってくださいな。じゃあはずすよー」と、言うと。


「いやいや! ストップ! 解除しないで!」

 おっさんが慌てて叫んだ。


「お前なー、自分で出来るならもう既にやってると思わないか? そりゃあ多少ダメージ軽減魔術はかけているけどな? でも『何も通さない』は掛けられてなかったんだよ! 出来なかったの! じっさい今かかっちゃっただろ? 今まで無かったってことなの! ……だから、もったいないからこのままにしといて?」


 あれー? そうなの?


「オレはどっちかってえと攻撃の方が得意なんだよ……」

 とちょっとしょんぼりしているのが、まあちょっとかわいかったので、そのままにしておく事にした。



「ただなあ、それだけだと大勢に攻撃された時とかは逃げられねえんだよなあ」

 たしかにね。山ほど襲ってきたら重くて潰れちゃう。



 あ、じゃあ本当にバリアー張ればいいんじゃない?

 イメージとしては空間に結界張る魔術の応用で。


「盾」

 ここで「バリアー!」とか叫ぶ自分を想像したら、ちょっと痛い人になったのでやめた。


 お、巨大なコンタクトレンズ出現。

 おっさんが、? っていう顔をしているから、色をつけよう。

「結界具現」

 光る巨大コンタクトレンズ~。


「おおっ!?」

 とおっさんもびっくりだ!


 これ、動かせるかな?

 右手を、巨大コンタクトを意識して右に振ってみた。

 そうしたら、コンタクトが右に吹っ飛んで、そのまま右手にあった木にぶつかった。


 ヒュン、ゴスッ!


「おおお~、なかなかの衝撃ー。いいんじゃない? これ。多分大きさも変えられるし、ちょっと練習したら形も変えられるかも」


 左手でも動かしてみる。そして拡大。縮小。湾曲ではなくて、一枚板の形にしてみたり、ぐるっと自分の周りを囲ってみたり。最後にボール状にして木に軽く押し付けてみた。


 ミシッ。


 おお、なかなかの威力じゃないですかーふっふっふ。

 これ、使えるよね? ボールにして振り回したら、立派な凶器じゃない? 円盤型だったらもっと危険そう。見えなかったらもっと怖いよね~。


 と期待の目でカイロスのおっさんの方を見てみたら。


「まあー簡単にやってくれちゃって……」

 とジト目とあきれ顔をされてしまった。

 えーいいじゃん出来たんだから、褒めてよー。


「それが出来れば十分お前が凶器だな。別に火や雷を出す必要なかったか。……じゃあいいか! 今度何かあったらそれ使えよー。んじゃあ先を急ぎますか」


 といって、自分の身を守ろう講習会は終了されてしまった。

 えー他にもいいアイデアがあったらやってみたかったのに……。


 しかし、やっぱりバリアーすごい便利だね!

 え?ちょっと違う?

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後はせっかく手に入れた技なので、周りに人が居ないときは、ちょこちょこ練習して加減を覚えていった。


 ヒュンヒュンヒュン、ゴスッ。ズサッ。ザクッ。


 なんか見えないとおっさんが怯えるので、キラッキラに光らせて振り回す。ボールにしたり、円盤にしたり。どうやらこの二つの形が扱いやすいかな。


 いや~綺麗だねえ。


 ヒュンヒュン、ゴスッ。ザクッ。ヒュン。


 加減を間違えてうっかり不本意に殺しちゃったなんて死んでも御免だ。細かい狙いもつけられないと。


 ヒュン、ゴスッ。ヒュン、ズサッ。ヒュン。パラッ。


「……オレ、なんか間違えた気がするわ。ヤバいものを解き放っちまった気分……」


 とかなんとか聞こえてきたけど、何をおっしゃいます、私は感謝しているのよ?

 これで襲われても大丈夫! 全力で抵抗出来る。ありがとうおっさん!


 ヒュン、ベキッ。

 あ、力入れすぎたか。ごめんね、木さん。折っちゃって……。やっぱりもっと練習しないと……。


 おっさんが怯えた目で私を見るんだけど、何でだろうね? おっさんには当てないよ? スレスレは狙うけどね? だってコントロールの練習だから。


 カイロスさんに「なんにも通さないよ」の結界を張っておいてよかったー。

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