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放置された花嫁は、ただ平穏に旅がしたい  作者: 吉高 花 (Hana)
第一部

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26/119

形勢逆転?

 

「お前さあ、やっぱりオレの嫁にこない? その才能、ほしいわー」

「私は物じゃあありません。それに今の『だんなさま』がいいんだって言ってるでしょー?」

 何言い出しているんだ。しつこいよ。


「くそー、お前が結婚する前に知ってさえいたら、だまくらかしてでも結婚に持ち込んだのになー。悔しいなーもー! あの旦那もそれを知っていたからいきなり求婚したんだな。くそー出遅れた」


 って、だから! そんな愛のない結婚絶対にお断りなの! 私の意思! 無視しない!

 おっさん、あの「だんなさま」の百分の一も私にそういう愛情はないだろうが。

 よかった、あのとき私頷いておいて! グッジョブ過去の私。



「でもな? 別に神父の前で誓ったわけじゃあないんだろ? じゃあ破棄できるかもしれねえぞ、その結婚」


 だから、しーまーせーんー!

 どんだけしつこいんだ。


 え、でも破棄出来ちゃう可能性もあるの?

 それは……嫌だな。

 神父の前で誓わないと結婚にならないの?


「知らないのかよ。神父の前で誓うか、王様の前で誓うか、聖魔術師の前で誓うか、だな。神父と王様は証人も認めないといけない。聖魔術師の場合は結婚の契約が結ばれたら。ただこの契約って、昔の王朝のやり方だから、今その契約を結べるような聖魔術師なんて居ない。ことになっている」


 うーん、「だんなさま」が正式って言っていたから、大丈夫だとは思うんだけど……。



「確かにこの前あの影が『結婚の契約を結んだ』とは言っていたがな、それがこの正式な聖魔術師の契約かどうかはいまいちわかんねえんだよな。今それができるやつなんて居ないはずなんだよ」


 でもやり方としては残っているんだ? 不思議。


「それが、たまーにその契約で結婚しているやつが見つかるんだよ。何十年に一組とか。で、国としては認めたくはないが、その契約を覆すことも誰にも出来なくて、なのに認めないとそいつらが結婚も離婚もできなくなって宙ぶらりんになっちまうだろ? で、渋々認めている。国が目を皿のようにしてその契約を結んだ人間を探しているが、今まで見つかったためしがない。その夫婦に聞いても全く覚えていないらしいからな」


 うーん、凄くレアケースなのか。契約での結婚は。

 私の場合はどうなんだろう。ちょっと心配になる。

 その契約でもいいからちゃんとなっていて欲しいな。

 早く起きないかな、「だんなさま」


「まあ今んとこお前にさわれるやつがいないから、指輪の交換もできねえな。もしくは自分ではめるかだ。オレの指輪はめない? シエル」


「いやです」

 早く起きてー!だんなさまー!


「ところで、その契約ってどんなのなの? 見えるの?」

「ああ、それは……実はオレは知ってるんだが、言っちゃいけないんだよな。どんなんだか知られると、真似して勝手するやつが出るからな。で、オレはそれを発見したら報告しないといけないから知らされている」


 へえ。それもお仕事なんだね。


「じゃあ確かめる方法も知っているの?」

「知っているけどお前、さわれないからなー。そうなると確かめようがないな」


 そうか……。残念だな。

「一応どうするの?」

「ああ、例えばお前だったら、他の男と結婚しようとするとわかる。契約が阻止するからな」

 それは一歩間違えると本当に他の人と結婚しちゃうやつですね? 確かめなんて理由で出来るやつじゃなかった。あぶねえ。


「オレと結婚式あげてみる?」

「結構です!」


 そんなことしたら、あの「だんなさま」がとっても悲しい顔をしそうじゃないか。

 そんな顔は見たくないです。

 見えない尻尾をブンブン振って、キラキラデレデレした目で私を見ている「だんなさま」が好きなんです。


「……まあ、あの旦那、怒らせたら怖そうだからなー……やるなら十分に準備しないと」

 って、やりませんってば。

 このおっさんもある意味怖いよねえ……。



「お前、『海の女神』の再来って言われたの、結構的を射ているかもしれねえぞ。魔術の規模がどうやら半端ねえからなあ。単に記憶が無くて使えねえだけで、じつはもっといろいろ出来そうだよな」


 ニタニタしないで欲しい。


「私は楽しく平穏に旅がしたいだけなんです。厄介事はいらないんです! 美味しく食べて楽しく観光! それ以外には興味ないんですー」


 わかって! この思い! 世界に向かって叫んじゃうよ。


「そーんな事言ったって、どうせまた今回みたいな事になるぜえ? 今回は小物の狸だったからいいが、この先は知らねえぞ~? どっかで寝ている旦那より、オレにしとけってー」


 お断りです! しつこい!




 あ、そうだ! この前思い出したんだった。

 よし奥の手を使おう。


「ねえねえ、それよりカイロスさん。そういえば、あの膝の呪いを解いたら、一生何でもお願いを聞くって言ってたよね? 忠誠を尽くすって。別に今まではどうでもいいかなーと思っていたんだけど、あれ、私思い出したんだよねぇ~?」


「えー? お前嫌な事思い出したな……。このまま忘れてくれるかと思ってたのによー。お前の旦那に忠誠とか、うっかりしたよなー……あん時ゃオレも必死だったからなぁー……むうー」


 あ、すごーく嫌な顔をしている。よしよし。

 でも認めたね? 認めましたね?


 もうね、ここまでいろいろバレると、自棄だよね。いまさら呪い解呪の1つや2つ、誤差だよね?

 もはや大したことないよね!?


 言っちゃってもいいよね!?


「実は、あの膝の呪い、解いたのはわたしでーす!」

 言ってやった! 言ってやったぞー。


「は? んなわけ…………、え?」


 あれ? 戸惑われてる?


「ちょっと待て? あの呪いはなぁ、オレが、解ける人間を20年も探しまわってずっと見つけられなかった呪いなんだぞ? もう国中の魔術師を探しまわって探し尽きていたんだぞ? 魔術師団長レベルでもダメだったんだぞっ? それを、百歩譲って"末裔"が解いたってんなら伝説すげえでまだ納得できるが、おまえ? あのどっからどうみてもひよっこだった、お前?」


 あら、なんか、ひよっこ呼ばわりだった。

 ていうか20年も苦しんでいたんだ。それは大変だったんだね。だからあんなにしつこかったのかー。そして確かにやたら喜んでいたなー。


「いや…………でもあのブローチもあっさり結界張ってたよな、たしか」

 頑張りました!あの時は必死だったよー。2度目はまあ、普通に?


「……まさか?」

「うん。わたし。ちょっとシャドウさんに教えてもらったけど」


 あっ。なんかこの世の終わりみたいな顔をしてる。

「えー!? それは勘弁してくれよー! ウソだ! オレは信じないぞ! 嫁じゃなくて主とか……嫌だ……! オレは信じないからな!」

 だから嫁にはなんねーよ。


「『お願い何でも聞く』って」

「言った! 確かに言った! 嘘はつかねえよ! でも! まさかお前がやるとは思わなかったんだよ! 普通あの影がやると思うだろ! 普通そう思うだろ!」


 うわー、本当に嫌そうだなー。うふふー。

 今日一日の恨みが溶けていくわあ。


「……いや、やっぱり信じないぞ。証拠を見せろよ証拠を。そうだ! そのブローチの呪いを解いてみせろよ」


「あ、これ? まあ出来ると思うけど、これ、解呪したら呪いをかけた人にバレるんじゃないかと心配しているんだよね。逆恨みとかされない?」


「あ? 誰がかけたかなんてわかんねーんだから、そんなこと心配してもしょーがねーだろ」

「いや、わかったんだけど、なんか凄く嫌な感じの人みたいだから、出来たらかかわり合いたくないなって」

「はっ?」


 いやだから、凄く陰険そうなおじさんだから、って、なに? また私おかしなこと言ってる?


「おーまーえー……。何で見えるんだよ。もうおじさん泣いちゃうよ? 昨日も言ったろ。それ、すっげえ高度な呪いだって! オレには何にも見えなかったって! オレ、これでも一応すっごい魔術師なんだよ! 世間では! なんだよ!」


 あ、はい。そういえばそう言っていたね。

 そして呪いを掛けた人の話はしていなかったかーうっかりうっかり。


「まあ、もしかしたら感知するかもしれねぇけど、どうせあの町長が捕まったしな、その関係でブローチが壊されたとでも思うんじゃねえか?」


 そうかなー。欠片もリスクは負いたくないんだよなー。

「これ結界張ったまま、ここに置いて行っちゃダメかな?」

「オレは見たいなー呪い解くところ。じゃないとお前がやったって認めないからな? あ、あと、もしも誰かがお前の結界を偶然にでも解いたら、またややこしい事になるぞ」


 ニヤニヤしてこっちを見てる。うぬー。たしかに。この先この呪いで被害者が出たら後悔しそう。


 しょうがない、やるか。

 気を付けるのは瞳の色を見せないように。さすがにこれはトップシークレットだろう。シャドウさんにも注意されたしね。


 ブローチを机の上に置く。あれ、おっさんの部屋でやって良いのかな? まあ、いいか。おっさんが言い出しっぺだ。責任とってもらおう。


 まずは部屋に結界を。何にも出さないよ。

「カチリ」

 そしてブローチの結界を解く。解除。

「カチャ」


 とたんに黒い煙がもうもうとあがった。

 いつ見ても禍禍しいなーもう。


 カイロスさんも「やっぱりすげーなこれ……」と呟いている。どうやらカイロスさんも、ただならぬ雰囲気を感じているらしい。


 さて、始めますか。

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