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呪いを視てみよう

 

「シエルさん、一体何に結界を張っていたんですかねえ?」

 町長の家からの帰り道、おっさんが早速聞いてくる。


 ホント目ざといな!


 しかし、さすがに私としても初めての事態、相談するべきか否か迷うところではある。が。


「いや~ちょっとここでは、ね~」

 思わず誤魔化してしまった。


 一度、じっくり視てみたい。

 だって、どんな呪いか知りたいじゃない?

 やってみたくない? やりたいよね!


 でもカイロスさんが言うには、そんな簡単には出来ないことらしいので、呪いを視てみたいなんて言ったらまた何を言われるか。


 こっそりやろう。


「なんだよ。じゃあ宿に帰ったら……」

「いやもう寝るから! もう遅いし! 明日以降で!」

「おい! なんだよ気になるだろーが!」

「やだよどうせ長くなるじゃんかー。寝させて!」


 ここは譲らないよ!


 ーーーーーーーーーーー


 食い下がるおっさんを締め出して、何とか部屋に鍵をかけた。よし、勝った。


 おっさんを完全に閉め出すために、部屋に結界もしっかりかけましょう。


 何にも出さない、入れないよ。

「カチリ」


 では早速。


 最初の状態を見る限り、結界が無くても突然襲って来ることはないだろうと思う。


 一応慎重に机の上に置いてから、身構えつつ、結界を消す。解除。

「カチャ」


 とたんに黒煙がモワモワとあがった。

 うわあ、禍禍しい……。


 さて、どうするか。

 とりあえず、手をかざしてみる。


 うへえ、冷たー。

 おっさんの膝の呪いの時は、力ずくで消しちゃったけど、今回は集中して呪いを感じてみる。


 なんて言ってる?

 どうしたいの?


 すると、聞こえてきたのは


『オレノイウコトヲキケ』

『ゼッタイフクジュウ』


 うーん、人を操る系かな?

 このブローチを着けたら、誰かの言いなりになっちゃうのかな。

 って、誰の?


 もう少し深く視てみる。

 今誰がこのブローチを気にかけている?


 すると、映像が見えてきた。

 懐かしいな、シャドウさんの千里眼だ、これ。



「あとは着けさせるだけだったのに! くそっ。何だあの魔術!忌々しい」


 悪態をついているのは、町長だった。

 まあそうかなとは思ったけどね。


「まあまあ、女性ならあんな綺麗で高価な宝石を、一度も着けないなんて出来ませんよ。宿に帰って一人になったら、絶対に着けてみるに決まってます! あなたは明日彼女に会って、私が主人だと言えばいいんですよ」


 夫人もグルかー。


 何をさせたいんだ、私に。


「彼女が本当にセシルと同じ能力なら、地下水も雨も風も自由自在だ。これは凄いぞ。あんな宝石だって山ほど作れるし、呪いの種類も何でもござれ。暗殺だって恐喝だって、彼女なら簡単だ! 何でもやってもらえるな。

 俺は、こんな小さな町の町長なんかで終わる男じゃあないんだよ!はあっはっはっはー!」


 って、悪代官かよ。

 不愉快だわー。


 しっかし、その昔のセシルさん、凄い人だね。

 長い間に盛大に尾ヒレがついたんじゃないの?

 偉人にどんどん人間離れしたエピソードが追加されていくみたいなやつ。


 まあいいや。あっちは放っておこう。害はなさそうだから。


 問題はこの呪いよね。


 触っていてわかったのは、多分、これ、消せる。

 蹴散らせばイケると思う。


 だけど。


 呪いをかけた人の気配を探したら、誰がかけたかわかるかな?

 んー……。

 ぼんやり? あ、でも視えても、どのみち知らない人だったー。てへー。


 でも、視えたのは、ずる賢そうなおじさんだ。

 悪意が服を来ているような。うわあ、嫌だ……。


 まあ呪い自体も古そうだし、掛けた人ももういないかもね。この世に。辿ってみる? 繋がりを……遡って……


 あらやだ、生きてるっぽい。

 うへえ、一生会いませんように。なむー。


 やっぱり危険には変わりないから、消しておいた方が良さそうか?


 あ、でも掛けた魔術師が生きているなら、これ、消したら向こうにバレるのかな!?

 だとしたら危険じゃない?

 報復なんで絶対にゴメンだ。


 どうしよう。わからんー!

 困った。


 これは……カイロスさんの良心を信じて相談するべきか……?


 厄介そうな魔術師なんて、絶対に敵に回したくない。

 性格がネジ曲がった人となんて、絶対に絶対にかかわり合いたくない。


 でもカイロスさんと、どっちが厄介だろう?

 大喜びで「これくれよー」とか言いそうなんだけど……。


 と、とりあえず、また結界張って、今日は寝ようかな。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結局、朝一でおっさんの部屋をノックした。


 やっぱり考えたんですが、暗殺だの恐喝だの本気で言っている人や、そんな人に呪いを提供しちゃう人よりかはカイロスさんの方が安全ではないかと。


 おっさんは私利私欲で人を殺したりする人ではない……と思う……。

 平気で脅したりはしそうだけどね!


 そして今にも町長が私を操ろうと押し掛けて来る気がして、気が気じゃない。

 そんなことになったら面倒だ。

 おっさんの部屋に避難も兼ねる。


 寝ぼけ眼で出てくるかと思ったけれど、おっさんは朝からシャッキリ元気だった。


 ニヤリとしてから部屋に入れてくれる。

「昨日の件だろう? 一人では手に余ったか?」


 くそう。でもその通りです。


 おっさんが部屋に結界を張る。


 さて、どこまで話すのが良いでしょうか。


 この期に及んでも、私はまだ出来るだけ大人しく平穏に暮らしたいのだ。そしてそのためには何も知らないフリが一番だとも思っている。


 とりあえずブローチを取り出して机に置く。

 そして結界を、オフ。

「カチャ」


 煙の勢いは相変わらずだ。


「なんか妙に迫力のあるルビーだな。魔術がかかってるのか」


 おっさんは手に乗せてしげしげと見つめる。


「呪いがかかっているのよ。それはもう黒々と。どうやら人を操る系のやつみたい」


 おっさんが私を見る目が怖い。

「いつわかった?」


「呪いだなと思ったのは、ブローチを見た時。内容は部屋に帰ってから」

 まあ、呪いが見えるのは知っているからね、この人。


「呪いの内容がわかったってことは、誰が首謀者なのかもわかるのか?」


「町長と夫人」


「夫人もかよ! どうしてわかった?」


「……見た」


「…………相変わらず良い目してるじゃねえか」


 ふーっと、おっさんが溜め息をついた。


「多分今日、私が呪いに掛かっていると思っているから、町長が言うことをきけって言いに来ると思う。めんどくさい」


「嫌がる理由それかよ。相変わらずだな」

 あれ、なんかガックリしちゃった。

 私は真剣なのよ?


 そんなことを言っていたら、早速。


 コンコンコンコン。

「シエルさん、申し訳ありませんが、折り入ってお願いがございまして。お話があるのですが」


 来たよー町長!

 この時間の早さが強欲さを際立たせている気がするよ!


 はっはっは! 残念だったな!

 その部屋は空だ!


 とか言っている場合じゃあないかー。

 しくしくしく。

 めんどくさいよー。

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