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放置された花嫁は、ただ平穏に旅がしたい  作者: 吉高 花 (Hana)
第三部

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龍がつくということ

 

 それは初代の「黒の魔術師」がなんか魔術でもかけてぼんやりさせているんじゃないの? あれ、でもそれって世代を越えて魔術が効かないといけなくなる?


「さすがに魔術をかけた人間が死んでしまったら、その魔術は引き継がれたりはしないはずですが?」

 師匠がちらりと旦那さまをうかがった。


「うーん、私も聞いたことがないねえ。でも今回の魔力の流れを変えたり他国へ流したりする魔術は私も知らなかったから、どうだろうね? でもあの王には魔術は感じなかったな」


 へええ、旦那さまでも知らない事があるんだ。

 もうそれじゃあ直接本人に聞いてみるとかできないのかな。ああ、でも感情が読めないのか。記憶を探るのも出来ない?


「お前、プライバシーとか言っていたのはいいのかよ……変わったな、お前」

 おっさんが意外そうな顔をした。おっとー。そうでした。でもさすがにコトがコトではありませんかね? 相手は魔力泥棒ですよ? しかも最高権力者ですよ?


「そういうことになるから、アトラの時代は一番魔力があるものが王になったんだよね……」

 と、旦那さまが呟いた。


 なるほど。読まれない、操られない人か。そうじゃない人が王になっても、結局は魔力が一番強い人が王を操ってしまう世界? うーん、ある意味容赦ない世界だな。それ、悪意のある人が王になったら大変そう。


「でも龍は、何故か野心の大きい人にはつかないと言われていてね。だから龍がつかないと王になれない決まりができた」


『……野心があるとな~、ワシらが苦労するんじゃよ~昔から~。やたらと命令されたうえに、罵られたりするからの~~そういうのは嫌いなんじゃよ~~。だからそういうのが見えたらワシらは離れることにしているんじゃよ~~』


 なるほど。

 じゃあ私が実際に、言いなりにならないからムカツク! この国を滅ぼして! って頼んだら、離れちゃうのかな?

 と思ったら。


『セシルの頼みならいつでも聞いちゃうよ~~』

 って、あれ?


「まあ、お前に野心とか野望とかは無さそうだからな。今のソレだって、ただ怒っただけだ。……むしろ本当に怒ったら勢いでやりそうなのが怖いが」

 おい。やらないよ。でもまあうん、無いね、野心。そこか、ポイントは。


「本当にやらないでくださいよ? 龍の喧嘩だけでも多くの人が迷惑するんですからね? 気を付けてくださいよ」

 はい……師匠。ガンバリマス。


「だからこのやる気のない男が龍に選ばれたってわけか。で、その初代の『黒の魔術師』には野心があったんだな、きっと」


「……やる気がなかったのは認めるが、一応魔力も多かったんだよ私の方が」

 旦那さまが少々不満げだが、うん、やる気の無さは認めるんだね。


『ほっほっほ~~』

 なんか水龍セレンが意味深に笑ってるけど。

 …………まあ、セレンに説明する気は無さそうだな。まあいいか。結果的に旦那さまが王になった。その過去の事実は変わらない。


「その初代の『黒の魔術師』が何らかの方法で今も王族を魔術で操っているってことはないのか? それが一番簡単だろう、ソイツには」

 私もそう思った。一番お手軽に好き勝手にできる。


「彼は私が寝ていること知っていたからね。いつか私が起きれば彼の魔術が破られるのはわかっていただろう。だから、自分の意思で王位を掴みに行く意思のある若者が必要だったんだろうね。そしてその若者も、この魔術の国では無敵な道具を手に入れられてお互いに好都合だったのかな。それに」


 旦那さまはちょっと思いだした風に付け足した。

「やっぱり、今のあの王に魔術は何もかかっていなかった」

 さっきも言っていたね。いつの間に調べるんだ一体。


「魔術の世界の権力者がまず最初にする基本行動だよ。操られているかいないかの違いは大切だからね」

 あらまあ、常識が違った。じゃああの王妃と王子王女の金髪の魔術も知っていたのかな?


「あの第三王女は近くに来たときに視て知っていたけれど、他の人には会ったことがないからね」

 あら、知っていたのね~。


「じゃあ魔力を他国に流しているのはトゥールカ王の意思ということだな?」


「そこがわからないんだよね。その仕組みをあの王がどこまで知っているのか。全く知らないとは思わないが、どこまで重要性を認識しているのかがね……。なにしろ魔力には関心が無さそうだ。記憶を探るのが早いかも知れないが、なにかの拍子にそれで敵対することになると面倒だな……」


 まあ確かにバレたら怒りそうな事はしたくないか。って、ねえみんな、なんで探る事ばかり考えているのかな。だったら聞いてみればいいんじゃない? とりあえず会話をするのは基本では?


「は? 会話? あの王と? 本当の事を言っているとは限らないぜ?」

 まあおっさんはそう思うでしょうよ。知ってる。あなたは積極的に騙しにいく人。


 でもね、お互いの気持ちなんて、普通に魔力の無い人にはもとから正確に読めないもんでしょう。そうなると、会話して探っていくしかないんじゃない?


 記憶を探らないなら会話で探る。会話で理解を深めるのはあっちの世界の基本です。多分。記憶は無いけどそういう考えが常識だと思っていたから、きっとそう!


 私が会話で相互理解を深める意義についてどこまで説明するか悩んでいたちょうどその時、部屋のドアがノックされた。


 誰? だんまり会談の時は誰も来ないはずでは?

 と思ったら。


 慌てた様子でシュターフ領主の秘書アルドさんが入って来た。


「今入った情報ですが、王宮にて、『月の王』が王付きの、『海の女神』が王妃付きの専属魔術師に就任するとの発表がありました。また王宮からはエヴィル様とセシル様は王宮へ登城するように、との伝令が来ました」


 はああぁあ? なにそれ!?


 私、断ったよね? 受けてないよね? 旦那さまにもそんな話が行っていたの?


 と思って旦那さまを見てみたら、旦那さまも寝耳に水だったらしく非常に、ええ、非っ常に心外という顔をしていましたよ。うわあすごい顔だ。心底嫌そうな顔だった……。


 なんでそんなことになっているの?


「これが広まると、『月の王』と『海の女神』がトゥールカ王に下ったと認識されますね。王が二人を支配下に置いたことになります。まずいですね」


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