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第1ー8話 大・失・恋!!!

~~~ロキアナの村~~~

 豊かな自然に囲まれ、木製の家屋の密集する村人約60人程の小さな村だ。

 馬車は馬小屋に預けられ、俺達3人は宿で一泊する事となった。


 何故ここで一泊するかというと、ここで食料・水・日用品の補充、それに加え一度に長距離移動すれば、道中での敵襲、思わぬ場所での野宿と良い事がない故、村や町を通過する際は一泊して行くのが定石だ。

 ミアさんとシュリは自分達の部屋へ、俺も荷物等たいしてないが部屋へ。


 傷自体は胸にある「魔核コア」の中の魔力のお陰で、ほぼ完治しつつ有るので、体に巻いた包帯は逆に邪魔になっている。

「ダメだ、蒸れて痒い…」

 あまりにも痒いので、服を上だけ脱ぎベットに放り投げ包帯を外していく。


~~~ミア・シュリの部屋~~~

「良い?ミア、この村を過ぎればもう王城まで目と鼻の先よ。それにジュンさんは、城で働く事はあまり乗り気じゃないみたい…」

「そっそうですね…」

「私が言いたいのは、ミア!ジュンさんを誘って今からデートしてきなさい!」

「…!?そっそんないきなり!」

「何を言ってるの!チャンスはもう無いかも知れないのよ!思い立ったらスグに行動しなくちゃ!」


 どうあっても2人をくっつけたいシュリは、狼狽えるミアの背中を押し部屋から締め出してしまう。

「おっお嬢様!!ちょっと!!開けてくださいよ!」

 あまりの突然の出来事に、ミアは混乱し戸を叩いてシュリに空けるように促すが、どうやら答えは「NO」らしい。鍵を空けるきは微塵もない。


 すると横の扉から、上半身半裸のジュンが姿を表した。

「ん?ミアさんどうかしました?」

「じゅっジュンさん!服!服はどうしたんですか!?」

「…!いやーすみませんお見苦しいものを。スグに着てきます」

 普段服に包まれ、露わになっていない筋肉、石の彫刻の様にギッシリと詰まっているが、体の線は少し細く暑苦しさを与えさせない。発達した筋肉は色の白い肌と肌の間に、深い溝を作り見事な陰影を作り出している。

 男性の肌自体は見ることはアレど、意識してしまった男性の筋肉はミアにとって、電撃よりも激しい衝撃となり、顔の紅潮も限界寸前、頭の思考もまとまらずパニックだ。



 5分程すると、ジュンは服を着直しミアと合流し共に買い物へと出発する。

「ミアさん、今日は何の買い物するんですか?」

「えっあっいや…日用品や、食料等を少々」

「それじゃ、荷物は持ちますんで、気にせず買い物しててくださいよ」


 小規模だが市場を見て回り、日用品を買い食料・水を調達したら、もう既に夕暮れを迎えていた。

「すみません…ジュンさん、結局荷物持ってもらって…」

「気にすること無いですよ!それにこの位なんてことないですって!」

 2人の足が宿に向かい、歩き出した時何処からか、甘い小麦の焼ける匂い、ほんのり香る果物の甘酸っぱい匂い、それらが鼻孔をくすぐりジュンがふと目をやると、「イーニャ焼き」と書かれた看板をぶら下げる、一台の屋台が。

「うわぁ~いい匂い。それにしてもお腹空いたな…」

「ジュンさんって結構食いしん坊なんですね。ちょっと待っててください…」


 ミアは屋台へと小走りで駆け寄り、屋台の親父と2・3言交わすと、クレープの様な温かい洋菓子を「3つ」買ってきた。

「はい、ジュンさん。これは今日買い物に付き合ってくれたお礼です!」

「あっありがとう、ございます」


 2人は近くのベンチに腰掛け、厚い生地に生クリーム・果物数種が包まれた「イーニャ焼き」を頬張っていく。

「…うめぇっ!生クリームの後を引かない甘さに、口の中で弾ける果物の食感に、ちょっと酸っぱいこの味が病みつきになる!」

「ふふっ、ジュンさん甘い物好きだったんですね。よかった喜んでもらえて」

「まっまぁ…ミアさんってさ、あの…何ていうんでしょ、あのーあれ…(あーーーーー!何で俺はこんな大事な所でヘタれるんだぁぁぁぁっ!普通に「彼氏居るんですか?」って聞くだけじゃん!!なんで声が出ねぇぇんだぁぁぁ)」

「もったいぶらずに聞いてくださいよ、濁されると気になるじゃないですか」

 微笑む様に笑う彼女は、少しだけジュンを困らせる様に質問をする。


「その…ミアさんは…お付き合いしてる…と言うか…あー…あれ「特別な男性」って…居るんですか?」

「特別な男性ですか…「居ますよ」」

 この答えには、予想していたとは言えジュンの恋心に大きく深刻な爪痕を残し、平静を装うジュンであったが、もう今にも泣き出しそうな状態で「そうですか」と返すのが精一杯、イーニャ焼きを頬張ると、ほんのちょっぴり塩っぱかった。



~~~宿・ジュンの部屋~~~

「あー…まぁそりゃ居るよな…アレだけ良い人なんだもん。こんな住所不定無職なんか相手になんねぇよな…、いくつになっても失恋の辛さって…やっぱ慣れないな」

 これでもかと言う程、自分を卑下しベットでうなだれるジュン。

「あら、そんな事は無いと思いますわよ。魔王様」

 突然一人しか居ない部屋に、艶っぽい女の声。紫のローブを着た女が、枕元に立っていた。熱くもないのに何故か汗が出る、激しい運動をしてもないのに鼓動が早まる、俺はこの目の前の女に「ビビった」、何かとてつもないオーラの様な物を五感で感じた…


「うふふ…そう、大声を出さないのは偉いですよ魔王様。あの小娘が来れば流石に面倒くさいですから」

 「出さない」んじゃない…「出せない」んだ…、口が金魚の様にパクパクと動き、唇が乾く。


 目の前の不気味な女は、ミアさんよりも豊満かもしれない、その妖艶なバストの谷間から黄色の結晶を取り出し、人差し指と親指で砕くと俺達は部屋から姿を消した…


~~~村周辺・草原~~~

 俺はあの結晶が砕けた瞬間に、何処からか引力を感じ眩いばかりの光に包まれた。そして気が付くと岩に鎖で固定されている、目眩がし猛烈な眠気が体を包んでいた、そうこれは「魔力の使いすぎ」た時の症状と全く同じだ。

「魔王様、これからあなたに特別な術を掛けさせて頂きますわ。魔王様としてふさわしい精神を確立する為の。」

 何を言いてるんだこのサイコパス女は、それよりどんな攻撃が来るのか解らないのに動けないのは不味い、非常に不味い!!

「魔王様もがいても無駄ですわよ。その鎖は貴方の体の魔力を狂わせ、魔法を使えなくする代物、そして何より魔核が大きければ大きいほど作用する。すなわち今の貴方にはその鎖を引きちぎるなんて、出来やしませんわ」


 彼女は俺がここに転生する時に見た、あの魔法陣を左手に作り上げ、徐々に徐々に歩み寄ってくる。

「(駄目だ…やられる…)」


TO BE CONTINUED

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