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第1‐7話 西へ

~~~コロラッドの村・宿「野良犬ワイルド・ドック


 俺は「炎の奇術師」と名乗る男との戦闘が終わると、とてつもない眠気に襲われ眠っていた様だ。駆けつけたミアさんに、村まで連れられ宿で治療を受け、起きると辺はもうすっかり夜になっていた。

 屋敷が全焼したヘインは、怪我人や死者への冥福を済ませ、今回の出来事を文にし伝書鳩で国王へと連絡をする為、宿の一室に一人籠りきりらしい。

「ジュンさん、もう傷は大丈夫ですか?かなりの深手でしたが…」

「大丈夫ですよ、治療のお陰で血は止まりましたし、動くには不自由しませんよ!」


 心配し声を掛けてくれるミアさんを安心させる為、俺は力いっぱい笑顔で返事をするが、一人食事にすら手を付けず落ち込むシュリが居た。

「すみません、ジュンさん…私のせいで怪我を…」

「気にすること無いよシュリちゃん。俺もこっちで2人に助けて貰わなかったら、どうなっていたか想像すら出来ないしさ。それに荒事は「傭兵」の仕事でしょ?」


 妹は居なかった俺だが、彼女を元気付け心配させないため、彼女の頭をポンポンを優しく撫でると、潤んだ瞳ながらも此方に笑みを向けてくれる。

「んじゃ俺は食事も終わりましたし、部屋に戻りますね。シュリちゃん、ミアさんまた明日」

「はい、おやすみなさいジュンさん」

「ありがとうございます、それではまた明日ね。ジュンさん」

 ミアさんとシュリちゃんに挨拶をし、階段を登り自分の部屋へと戻る途中、普段なら躓いたりしない所で脚をぶつける。傷の痛みを我慢してたあまり注意散漫になっていた様だ、脛をぶつけいい年して泣きそうになる。

「…ってぇ、明日早いからもうさっさと寝るか。」

 涙目になりながらも、部屋に入りった後上着をラックに掛け、布団に入り眠る準備へと入っていく。


~~~宿・食堂~~~

 ジュンが食器を下げ、部屋に戻っていった頃のミアとシュリ。

「…ア…ミア!」

「はっはい!何でしょうかお嬢様」

「珍しいね、ミアがぼうっとするなんて。いや明日はいつ出発するのかなって」

「予定では日入りから準備をして、朝一番の出発になるかと」

 ミアの顔を覗き込んだシュリは、少し悪戯風に笑う、そしてミアに一つの質問を投げた。

「ミア…もしかして、ジュンさんに惚れちゃった?」

「…!!!そっそんな事…、それにお嬢様その言葉遣いは下品ですよ!少しは謹んでください!」

「え~、今は良いでしょ2人だけ何だし。でも驚いたな、ミアが恋愛なんて」

「ちょっちょっとお嬢様!!」

「ふふっ。ねっミアジュンさんの何処が良いの?」

「そっそれは…」


 耳まで真っ赤にしたミアは、照れくさそうに髪を指先でクルクル回し口を開く。

「ジュンさんは、礼儀正しいですし、格好いいですし、強い方ですし…それに」

「それに?」

「それに…凄い優しい方で、英雄伝説の「勇者」様にそっくりです、そこが、もしかしたら「好き」なのかも…しれません」

「ふふふ、本当にミアはジュンさんの事好きなんだね。私は応援するよ?」

「もうっ!お嬢様!からかわないで下さいよぉ…」

「からかってないよ、うーん…それなら、ジュンさんに近衛兵として、私専属の騎士に…」

「そっそれはダメです!」

「何でダメなの?」

「だっ…だって、ジュンさんにこれ以上無理強いする事は出来ませんし…」

「私に取られると思っちゃった?」


 先程より顔を赤くし、頭から湯気が出そうなほど赤面するミア。それをからかいながらも、応援するシュリ。

彼女たちも、翌朝が早いため部屋に戻り床に着く。


~~~翌朝~~~

 ジュン・ミア・シュリの三人は、王城へ向かうため馬車へと乗り込み、ヘイン達と別れの挨拶をしていた。

「昨日は大変お世話になりました。あの件は伝書鳩で国王に連絡しましたので、」

「はい。ヘイン様有難うございます。では私たちはこれで。」

 シュリが頭を下げ、それを合図にミアの操る馬は西へ向かいゆっくりと進んでいく。


 馬車の中ではシュリは勉強、ジュンはシュリの教科書の様な専門書を読み、ある程度理解しシュリに勉強を教えていた。

「そうそう…ここは、この文の例題から引っ張ってきて…そう、それでこの出題者の言いたい事が解るでしょ」

「そっか!それじゃここも同じ方法で解けるかな」

「ふんふん…、OKそれで大丈夫だね。そろそろ休憩しよっか」

「そうだね、ジュンさん教えるの上手だね、ミアと同じくらい頭いいよ」

「そっそうかな。」


 照れながらも、側のカップに手を伸ばし、ジュンはコーヒをチビリチビリと飲んでいく。

「ねっジュンさんって、ミアの事どう思う?」

 唐突な質問にジュンは、飲んでいたコーヒーを鼻から吹き出し、激痛に無言で身悶える。

「なっ何をいきなり言うんだよシュリちゃん。まぁ…綺麗だし、笑顔が可愛いなぁって…それに料理すっごい上手だしね」

「(もしや…これは両思いでは!!!!)」

「…シュリちゃん…すっごい不気味な笑いしてるけど…」

「あっいえ、何でも無いですよ」

「…そっか。まぁでもお城に着くと、俺達お別れだねぇ。ありがとうね、助けてくれて」

「ふふっジュンさんお礼、昨日も言ってましたね。でも何故お別れになるんですか?」

「え?だって城に着くと、シュリちゃんもミアさんもバタバタするでしょ。それに無関係の俺がいつまでも2人の側には居れないよ。」

「それなら私から父様に、城で働けるよう進言しましょうか?ジュンさんなら騎士としても、かなり上の方まで行けるかと…」

「いやいや…そこまで面倒頼めないさ。気持ちだけ有難く頂戴するよ。」


 残念そうな顔をしたシュリに、ジュンは少々困るが馬車が静止する、窓を開け外を見ると、次の村に入るまでの検問が目に入った。

「お二人とも、検問官が来ますので、馬車の中少し片付けてくださいね」

 運転手側の小窓から、ミアの声が聞こえ2人は片付けを始める。


 検問を各馬車済ませた、検問官が此方に歩み寄り、事前に手渡された名簿と共に確認と、

「すみませんお待たせして。馬車の登録は王族の専用車、それでは馬車内を見せていただいても?」

「はい、構いませんよ」

「では…乗車されてるのは、シュリ様と…すみません、戦乙女ヴァルキリー様こちらの殿方の届け出がされていませんが…」

「そちらの殿方は、現地判断で雇った傭兵です。身元は私が保証しましょう」

「そう…ですか。すみませんお兄さんお名前を一筆頂いてもよろしいですか?」


 ジュンは手渡された羽ペンと紙に自分の名前を、イーリアの文字で描いていく。

「アカイワ ジュン…えーと、どちらが姓でしょうか」

「アカイワが姓で、名がジュンです」

「ふーむ…すみません国籍と種族をお願いします。」

「えーと…(シュリちゃんミアさん助けて!わからん!)」

 戸惑いながら、シュリに助けを求めたジュン。運転席からミアが、検問官に説明をしていく。

「その方は純人種、国籍は不明です。これ以上の詮索はおやめしていただいていいですか、早く城へ戻らねばなりませんので」

「はっはい…失礼しました」


 検問官はミアの一声と共に、後ろへ一歩下がり敬礼をする。


~~~西の村・ロキアナの村、到着~~~


「あぁ…やっと…やっと見つけましたわ。魔王様…今晩、お迎えに上がりますわぁっ!!」

太陽を背にし、空中でジュンを見つめる紫のローブを着た謎の女。表情は恍惚とし、フードからは一本の角が見え隠れする。



TO BE CONTINUED

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