第1ー6話 燃えるヘイン邸・後編
西に向かい始めた俺は、村から離れた約7km程来た所で2人を担ぎ、馬を走らせる「炎の奇術師」と思われる男を発見した。
俺はh知らせる脚を、更に加速させ徐々に馬との距離を詰めていくが、ある一定の距離まで行くと急に離される。
…何故だ
「あははは、君凄いねぇ!走って馬に追いつくなんて。身体能力も凄いけど、それ以上に保有する魔力量も桁違いだ」
一本の木の上に座り、此方に拍手をし笑う仮面の男。とても不気味な雰囲気に加え、俺は驚いた。
何もなかった平原なのに、急に木が現れたのだ。それに先程までこの男は、あの目の前の馬に乗っていたはずなのだ。
「ん~?驚いてるねぇ~。いいよ、その反応凄くそそっちゃうよ」
「奇術師…ということは、どうやら俺は一杯食わされたらしいな…」
「そっ!ここは僕の世界さ。君がどんなに強くても、この世界じゃ僕には勝ち目は無いんだよ~ん。うひゃひゃヒャヒャヒャ」
奇術師は人が変わったように、奇声のような笑い声を上げる、木の上で脚をバタバタと動かし今にも落ちそうだ。
「勝ち目がない…そう豪語しても何か必ず、何か穴はあるはずだろ?プレイヤーを考慮してないクソゲーならいざしらずな」
「まぁ僕にはそのクソゲーどうのは解らないけど…、僕は知ってるよ君の事をね。ね?「アカイワ ジュン」」
「!? 何故俺の名を知っている」
俺の驚愕した姿に奇術師は、笑い転げ木の上から落ちてしまう、と思った時ワイヤーの様な物に吊られ空中で静止する。
「なら教えてあげよう。君は僕の「奇術」で面白い反応をしてくれたからね。僕等のバックアップをしてくれた「ロザミア」って女がね~、進言してくれたんだよ。王国派に強力な戦士が加入するってね」
「んで…それが俺だと?」
「そう!それに今回は僕・「稲妻の狂戦士」・「疾風の舞踏者」・「氷鬼の処刑人」がこの戦争に集結するから、王国派には勝ち目はないよ」
「ふぅん…でもお前馬鹿か?もし俺が王国派だとして、そこまでご丁寧に自分の戦力を説明するか?普通」
「うふふ~僕はおしゃべり大好きでね、す~ぐに喋りたくなるんだ。でも外部にバレることは無いよ。だって君「ここで死ぬもん」」
そう言うと奇術師は姿を消し、代わりにロープで縛られた「シュリ」と「ヘイン」が姿を表した。下にはマグマが煮えたぎっており、落ちてしまうと2人は確実に「死ぬ」!
だが奴をぶっ倒してから…などと悠長な事も言ってられない、2人の方角からは燃える匂い、すなわち「一酸化炭素」が発生している、このまま時間を掛けてしまうと2人は「一酸化炭素中毒」により死んでしまう、よって救出までの時間は「5分」!
それまでにこの「世界」の秘密を暴き、奴をぶっ倒さなければならない。
~~~コロラッドの村・宿「野良犬~~~
ミアの休む宿、あれから即座に治療を施されたミアは目を覚ますも、そこにはジュンもシュリも居ない。
「おぉっ!戦乙女様、目を覚まされましたか!」
この宿の女将だろうか、中年頃で体はかなり膨らんだ「THE・おばちゃん}の様な人物は、ミアにお辞儀をしている。
「女将さん…私が気絶してどれ程たちましたか」
「治療班の方の話も入れると、約1時間位かと…でもまだ傷は癒えてません、動かれないほうがよろしいかと」
「そんなゆっくりは出来ません、すでに戦いは始まっているので。…!女将さんこのコートの持ち主は?」
「いえ…ここに運ばれてきた時は、戦乙女様一人でしたので」
「そう…ですか、すみません。もう行きます、お代は後で必ずお支払します」
痛む体を抑え、いつものメイド服に袖を通し手甲をはめる。そして手を握ったり開いたりし、仕込刀の正常起動を確認すると、ミアは直ぐ様宿の中を駆け抜けていく。
出た先には屋敷跡の回りにいる、守備兵に事情を確認しに行く。
「そこの守備兵、今の状況の報告を」
「はっ!屋敷は全焼、被害人数はまだ捜査中ですが現在4名負傷1名死亡、身柄は全てここの使用人のものです」
「でしたらシュリ様とヘイン様はどうなったか足取りは」
「そちらでしたら只今、傭兵殿がシュリ様とヘイン様の奪還に向かわれました!それと戦乙女様こちらを…」
ミアは守備兵から1枚の封書を預かると、即座に目を通していく、ジュンも目を通した内容だ。
「痴れ者が…、馬を1頭此方へ。あなた達、守備兵隊はこのまま村や屋敷周辺家屋の被害状況を急ぎなさい!私はこのまま奪還に向け追撃に行きます!」
彼女の指示の元、守備兵隊は迅速かつ的確に班分けされて動いていく。
「戦乙女様!馬をお持ちしました!」
「感謝します。…(ジュンさん、何故貴方は私達にここまで。今助けにいきますから…)」
彼女は馬を走らせ、ジュンの居る西の平原へと向かい村を出発してゆく
~~~村周辺・西の平原~~~
「はぁ…はぁ…はぁ…」
滝の様に顔から汗を流し、疲弊を顔に滲ませるジュン。先程から胸を貫こうとも、顔を撃ち抜こうとも、何をしようとも、全く効いていない。
それにこの気温、まだ春先の様に感じた気温だったのに今では、砂漠の真ん中に居るような暑さだ、40度は越えていよう。
そして何よりも解らないのが、奴が増えていると言う事、2人が4人に、4人が8人に…一体どれが本物だ
「あはは違う違う本物はぼくさぁ~~」
「いいやこっちの僕だよ~~」
「あれれ~もうバテちゃった~?」
そしてそれに加え、連続で消費した魔力のせいか、体がダルイ、それに瞼も重い
鋭い痛みが背中に走る、短剣が左の背中に突き刺さってる、白いシャツに真っ赤な血のシミがジワリと滲んでいく。
その次は太もも、そして右肩、脇腹、と多方向からナイフが投擲され、俺は膝を折り地面に突っ伏してしまう。
「(いってぇ…、それにこの出血量…ヤバイな、かなり。あぁ景色も揺らいできた…揺らぎ…?熱…揺らぎ…幻覚…気温…はっ!!)」
ジュンはふと何かを閃き、激痛の走る体を起こしていく、血反吐を吐き、握った拳からは血が滴り落ちる。
「ん~~もうトドメにしちゃおっと。このまま遊ぶと後の作戦に遅れちゃうし」
奇術師が一本のナイフをジュンの眉間に向け、投擲したその時、ジュンは左手を犠牲にしナイフを受け止める。
「くくく…奇術師、お前の世界をぶっ壊す方法そして2人を助ける方法思いつたぜ。」
ジュンは天に向かい、屋敷で放ったような流水を発射した。すると水は豪雨の様に降り注ぎ、辺の気温を一気に下げていく。
「なっ何!僕の世界を破る方法だと!」
雨が辺の気温を下げたことにより、奇術師の分身は姿を消していく、それにシュリとヘインの下にあったマグマも姿を消した。
今までのは全て蜃気楼だったのだ、熱により空間がゆらぎあたかもソコに有るよう、幻覚を見せる奇術師の策に絡められたジュンだったが、とっさの機転によりその世界を打ち破ったのだ。
ジュンは奇術師に寄り詰めるように、ゆっくりと歩を勧める。
「まっ待て、僕は格闘術は苦手なんだ!ぬっ抜ける!貴族院から抜けるから!なんなら他の奴の事も全部喋っちゃう!もう出血大サービス!やめて…殺さないで…」
「やかましいぃっ!」
本体のみで勝てないと見込んだ奇術師は、必死に命乞いをするが、願いは届かずジュンに頬を拳で撃たれ、数m飛んだ所で気絶する。
「ジュンさーーーん!」
遠くからミアさんの声がする、でも今は立つのすら辛い…
座り込みその場に座り込み、馬に乗ったミアにグッと親指を立てて勝利を報告する。
貴族院所属「炎の奇術師」・ オズ・ピクトロジカ 気絶により 敗北及び、謀反によって逮捕