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罪過の魔術師  作者: 汐崎 昂稀
第一章 記憶の狭間
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第五話 初めての召喚魔法

やっとの思いで学校に着いた時には既に2時限目が終わる頃だった。けど僕が参加したかった召喚魔法の授業は3時限目だからギリギリ間に合うことが出来た。



「よう、やあっと来たかよ。柊さんよぉ。まったく待ちくたびれたぜ?てめぇが居ねぇと他にいじりがいのある奴が居ねぇからよぉ。これでやっと楽しめるぜ。」


くそ、いきなり来たか……もう少し来るのは遅いと思ったんだけど予想以上に早かったな。


「やぁ、おはよう。ちょっと面倒事に巻き込まれちゃってね。でも、もうチャイムも鳴るしまた後でね。」

「ああ、そうだな。楽しみは取っておかなきゃな。お前の気づかい感謝するぜ。」


なんとかこの場は切り抜けたけど後で絡まれるのが決まってるのが嫌だな

まぁ、とりあえず3時限目の召喚魔法の授業に参加できるから良しとしよう


――――――――――――――――――――――



「はい。では、これからは召喚魔法についての授業を始めます。」


この人は外部から来てくれている講師の立花薫(たちばなかおる)、中央魔法学園から来てくれている人だ。

立花先生は中学魔法学園で召喚魔法について研究をしているからこの魔法の事についてはこの学校の誰よりも召喚魔法のことに通じている。


「では、今から全員に召喚魔法をやってもらいます。それでは、出席番号が一番の人からこちらの陣の上に来てください。」


出席番号かぁ……それなら僕は"ひ"だからまだまだ先だな。それなら他の人の魔法を見てどんな感じか見学するかな。


――――――――――――――――――――――――



今、僕の一個前の子がやってるけど結果から言うとみんな変わんないな。

みんなの召喚魔法は動物系や武器系しか今のところ出てきてない。まぁ、立花先生も人型は高位の使い魔らしいからそれを使役している人はこの学校にはいないみたいだ。


「はい。では、次の人こっちに来て!」


おっと、僕の番になったみたいだ。それじゃあちょっとやってみるかな。


「おい、見ろよ。無能のカイが今からやるみたいだぜ。今日はどんな結果になるか楽しみだな!」


クラスのみんながクスクス笑ってる。


「静かにしなさい!柊君が上手くいないなんて根拠は何も無いでしょう!それをやる前から否定する行為は私が一番嫌いなことです。人にも得手不得手があるんですからどうなるかなんて分からないでしょう?わかったなら、静かにしてなさい。」


立花先生がクラスのみんなを叱った。まさか、この学校の先生が僕に対してのみんなの態度を注意するなんて思ってなかった。まぁ、立花先生はこの学校の先生じゃないんだけど。


「それじゃあ、柊君。今からこの陣の上に立って召喚魔法をやってみて。この魔法に必要な文言は陣の上に立てば頭の中に思い浮かぶと思うから。」


立花先生はそんな風に言うけど何故だろう。僕はこの魔法失敗するなんて思えない。何時もなら失敗しない様にしているけどこの魔法は昔使ったことがある?いやそんな訳ない、僕は今日初めてこの魔法を使うんだから。


「よし!じゃあやってみます。あ、一応失敗したらどうなるのか聞いてもいいですか?もし、爆発とかしたら嫌じゃないですか。」

「はぁ、まったく柊君は……まぁ、いいでしょう。召喚魔法は失敗したからといって爆発はしないわ。それに、失敗したら何も起こらないわよ。だから安心しなさい。」

「はい。では、今度こそやってみますね。」


そう言って陣の上に立って魔力を陣に流し込む。


やっぱり……この感覚、僕はこの魔法を使ったことがあるな。でも、何時だ?この魔法なんて使ったら絶対に覚えているはずなのに……僕の記憶がおかしいのか?それにアレイさんと会ってから、一年前からの記憶が怪しい……

いや、今はこんな事気にする必要なんて無い。この魔法を成功させるんだ。

頭に文言が浮かぶって言ってたけど全然浮かばないな?何でだ?もう少し送る魔力を増やした方がいいのかな?


?ああ、これがその文言か……ちょっと長いな。少し省略するか。


「一人の少女、一羽の烏。其の姿二振りの刃となりて我が元に現れよ。来い!小烏丸!!」


あ、やべ。省略しすぎたかも……というかほぼのオリジナルの文言になってたな。まぁ、この感じからしたら失敗じゃないから結果オーライだな。


ほんの僅かな時間を置いて陣の上に現れたのは一羽の烏と黒髪黒目の身長百六十cm位の可愛らしい(どちらかと言うと綺麗な)少女が立っていた。


「貴方が私とこの子を呼んだのですか?」


第一声がこれだったがまぁ、向こうからしたらそりゃあ気になるよな。いくら使い魔と契約者が魔力のゲートで繋がっていたとしても。ん?僕はなんでこんな事知ってたんだっけ?たぶんさっき立花先生が言ってたのかな?僕は聞き流していたから覚えてないだけかな。


「うん。そうだよ。これから宜しくね小烏丸……とそっちの子は名前はあるのかな?あるんだったら教えて欲しいかな。」

「分かりました。ご主人マスター。この子は羅天です。それと貴方は私達のご主人マスターなのですからそんなに気を使わなくて結構ですよ?」

「マスターって。まぁ、いいや。これは普段からこんなんだから気にしなくていいよ。それにしても羅天か……いい名前だね。あ、羅天は僕の言う事を聞くのかな?」


正直召喚成功してからこのことは凄い気になってた。

なにせ使い魔として呼んだのが"小烏丸"でそれがどこまでを言うのかが全くわからなかったからだ。


「はい。もちろん聞きますよ。私と羅天は二人で一つなので。あの、ご主人マスター周りの皆さんが固まっていますけどこのままで宜しいのですか?私は気にしませんが。」


あ、そういえば忘れてたな。それにクラスのみんなが固まってるのはまぁいいとして、立花先生も固まってるのおかしいな。


「立花先生?どうして固まっているんですか?まさか、これで失敗なんて言わないですよね?」


立花先生がハッとして勢いよくカイの肩をつかんだ。


「ちょっと!柊君!今のは何!確かに文言は頭に浮かぶって言ったけど、あれは短すぎるわよ!それに、この子が柊君が召喚した使い魔なの?今まで召喚魔法の研究をずっとしてたけど直で人型の使い魔の召喚なんて初めて見たわよ!」

「ちょっと先生!落ち着いてくださいよ!そんなに興奮することですか?これ?まぁ、文言については略し過ぎたかなと思いましたけど。」

「あ、ご主人マスターあの文言てすが、ほとんどオリジナルですよね?それもご主人マスターがあの時作った即興の文言ですよね。さすが私のご主人マスターです。」


興奮して生徒に宥められている教師。

興奮している教師に呆れる生徒。

その生徒に尊敬の眼差しを向ける少女。


傍から見るとこの異常な光景だが立花薫が興奮するのは無理もないことだった。なにせ、今柊カイが行った事は世界中の魔法士の中でも高位の者しか出来ないと言われている詠唱短縮にオリジナルの詠唱を二つ同時に行ったのだから。現在柊カイと同じことが出来る人間は百人に満たない少数しか行えない技術である。


「カイ君、今貴方がやったことは魔法士の中でも高位のものしか出来ない詠唱短縮とオリジナルの詠唱を即興で作ってそれをやったのよ!?カイ君がやった事と同じことが出来るのなんて私が思いつく限りだと、魔法学園のソロン校長と柊家の"守護のアヤ"位しか思いつかないわよ。それに、この二人は世界でも有数のトップクラスの魔法士なのよ。それと同じことが出来る貴方は何者なの?」


何者なの?か、今の()にはわからないな……

()は何者なんだろな。案外今までの記憶も偽りだって言われても信じるかもしれないな……

「何者っていわれても、俺は俺ですよ?この結果もたまたま運が良かっただけでしょうしね。」

「そう……よね。ごめんなさい。変なことを言ったわ。」

「あの……私と羅天はどうすればいいでしょうか?ご主人(マスター)


ああ、俺と立花先生が話をずっとしていて小烏丸がどうすればいいのか指示を待ってたみたいだけど周りの視線が気になったか居心地が悪くなったみたいでカイにどうすればいいのが声を掛けてきた。


「ん?ああ、召喚してすぐに放置しちゃってごめんね?とりあえず一回俺の魔力の中に戻ってくれるかな。このまま居ても周りの視線があって居心地悪いだろ?」

「了解しました。ご主人(マスター)、それでは一度魔力の中に戻らせてもらいます。」

「ちょっとまて!!カイ!てめぇみたいのがそんな良い使い魔を従えるなんてのは納得出来ねぇんだよ!俺の使い魔と交換しやがれ!」


まったく意味が分からないな。交換だと?ふざけてんのか。実力も無い雑魚がいきがりやがって。


「交換?なんでそんな事しなくちゃいけないのかな?こっちにはなんのメリットも無いじゃないか。それに、俺のパートナーがそんな事許可するはずないだろう?なあ、小烏丸?」

「はい。もちろんです。私がご主人(マスター)以外の人間に従うつもりはありません。」


それでこそ俺の使い魔だ。


「そうかよ!だったら決闘だ!決闘で白黒決めようじゃねぇか!この決闘の勝者の命令を一つ聞くってのでやろうじゃねぇか!」

「あ?決闘だ?そんなの受けるわけねぇだろ。……いや、これは小烏丸の実力を知るには丁度いい機会かもしれないな。よし、その決闘受けようじゃないか。」

「いいのですか?ご主人(マスター)そのような決闘など受けなくてもいいのではないですか?」

「いや、俺はまだ小烏丸の実力を知らないからな。これで小烏丸の実力を知れるだろうからな。それに、万が一にも負けることはないだろう?なぁ、小烏丸?」


この言葉を聞いた小烏丸は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情になり自信に満ち溢れた声で宣言した。


「はい!おまかせください!私の実力をご主人(マスター)にお見せしましょう!」



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