隅に置けない図書館
図書館に張り紙がありました。
『近頃、置き引きが発生しています。お荷物は必ず目の届くところに置いてください』
近所に住む中学生の男の子は、それを読んで物騒になったなあと、小さい頃から住んでいる町が変わっていくのを感じて、勝手に青春に浸っていました。
すると、向こうから友達が慌てて走ってきました、図書館で走るなんて言語道断なので、男の子は会話をする前に一発デコピンを食らわせました。
痛そうにする友達でしたが、我に返って走ってきた事情を話します。
「お前の鞄って、お前の座ってた所に置いてあったよね?」
「そうだけど、まさかなくなったの?」
「でなきゃ、図書館を全速力で走るなんて馬鹿な真似しないだろ」
「とりあえず見に行こう」
そんなわけで現場を見てみると、物の見事に鞄はなくなっていました。
さらに明確に言えば、盗まれていました。
「ごめんな、居眠りしてたらいつの間に……」
「うーん。机の隅っこの下に置いたのが間違いだったね」
男の子は唸った後、しみじみつぶやきました。
「やっぱり、大切な鞄は、どこにいたって隅に置けないなあ」
そんな図書館での話です。
館長とその部下らしき二人が、ひそひそと話していました。
「館長、こんな大事なものをそんな適当な隅におけるわけがないでしょう」
「だからってどこに隠せば良いんだよ。私の机に隠して、バレたら私に全ての罪をいずれ着せるつもりか」
「そんなことはありませんけど、ほら、普通にここ人が着ますよ」
「心配いらん。一年間ここで館長を務めてきたが、客はこんなマイナーな辞書コーナーなんてほとんどが素通りだよ」
「万が一見つかったらどうするんですか!」
「何が見つかると、どうなるんですか?」
突然の乱入者に驚く二人の前には、図書館の従業員がいました。
眼鏡をかけた凛々しそうで、かつ読めない人でした。
「君か、全く脅かさないでくれ」
「何の話をしていらっしゃったんですか?」
「仕方ない。ここで君も館長と私の話を聞いた以上、連帯責任で共犯になってもらおう」
「連帯責任の意味が間違っている気がしますが、何ですか」
「全く、君は隅に置けない人間だね。いいかい? 我々は図書館の本に、上手いこと裏で売り買いしてる麻薬を隠しているのだよ」
所員は目を少しぎょっとさせただけで、後は驚いた様子を見せませんでした。
とても冷静でした。
「だけど最近客入りがやけに増えたから、場所を改めて考え直そうとしているわけだ」
「君もあんな隅に置いたら絶対にバレると思うよな? 絶対にあんな隅には置けないよ!!」
館長は、ハゲた頭に流れる汗をハンカチで拭くと、そこからあるものを取り出しました。
「あー、君もうるさいね。大体君は、隠したヤクを勝手に売りさばいたり使ったりしてるの、知らないと思ってるの?」
「ど、どうしてそれを……」
「いつも私に媚びへつらっていた癖に、隅に置けない男だよ」
乾いた音とともに、館長とさっきまであれだけ争論していた部下が、赤い液体を流しながら倒れました。
簡単に言えば、彼は銃で撃たれて死んでしまいました。
「さて、君はさらに共犯が増えたわけだ。これから私と秘密の共用だ」
「あなたも隅に置けない人ですね。よくそんなものを手に入れたものです」
「ヤクがあるならこれだってね。当然だろう?」
館長は、まるで暗闇の中で、下から顔を懐中電灯で照らしてお化けの真似をする子どものような、不気味な笑顔を見せました。
「アナタも十分隅に置けませんね」
「さあどうする。勿論秘密を共用してくれるね」
その質問に対する答えは、とてもストレートでした。
「館長さん、アナタを逮捕します」
「……は?」
「実を言うと私、潜入捜査官でして。麻薬密売の証拠を洗いざらい聞いて録音しちゃいました。これであなたはもう大罪人です」
「君……!! なんてこった……」
そして捜査官は、手錠を館長にかけようとしましたが、止める前に一歩止まりました。
「でも、実は私麻薬中毒で、最近お金なくて買えないで禁断症状に苦しんでるんです。もし私にその麻薬、全てタダくれるなら今回の件は全て見逃しますよ」
「ほ、本当かい? き、君って本当に、隅に置けないねえ」
「恐縮です」
そういって館長は、銃を机のうえに置いて一息つくと、机の引き出しから今度はナイフを取り出して捜査官に襲い掛かりました。
捜査官は、あっという間にナイフを奪い取って、逆にそれで館長さんを殺しました。
「でもあなたには負けますよ。本当に隅に置けないんだから」
早速捜査官は、隠されていた麻薬を全て回収しました。
ずっと禁断症状に悩まされていた彼に、欲望を止める術は無く、早速麻薬を取り出して、躊躇無くすい始めました。
すると捜査官は、いきなり血をゲッと吐き出しました。
「毒粉……? あのピカハゲ、相棒に横取りされた時のことを考えてこんな細工をしてたのか……?」
捜査官の視界は突然広がり、綺麗な天上窓が彼に光を注いでいるのに気づきました。
「本当、隅に置けないよ……この図書館」
その翌日、麻薬事件は無事解決の日の目を見ました。
「ヤク中捜査官に仕事任せて正解だったな。釣り餌のおかげですぐに食いついた上に、この不祥事ももみ消しだ」
「警部。警部って本当に隅に置けない人ですね」
隅に置けないの意味が途中間違ってそうな気がするけど隅に置けない話。これで自ブログからの転載は最後です。これを良い機会として、ブログ閉じようかと思ってます。




