解放
気を抜けば何故か瞼を開いてしまいそうになる。
私は必死でそれに抗って頑なに瞼を閉じていた。
本能が、見てはいけないと警鐘を鳴らしていた。
いったいどれほどの時間が経ったのだろう。
わからないが、とにかく私は息を殺し、ただ時が過ぎるのを待っていた。
ふっと瞼の裏で視界が明るさを取り戻し、顔にかかる風がやんだ。
それと同時に体にのしかかっていた圧迫感からも解放されて「何か」の気配が消えていった。
体が自由を取り戻し、確認するように一本ずつ指を動かしていく。
ゆっくりと手を握り締めて、また開く。
恐る恐る瞼を開けると、枕元に置いていた時計が四時四五分を示していた。
いつの間にか、テレビからは早朝のニュース番組の音がしている。
体を起こして辺りを見回すが、いつもと変わらない私の部屋がそこにあった。
そこまで確認すると、やっと生きた心地がして肩の力が一気に抜けた。
今頃になって体が震えだして止まらない。
私は両腕で自分の体をぎゅっと抱きしめた。
私はその日のうちに別の家に引っ越すこと決め、すぐに新しい家を探し始めた。
引っ越すまでに2か月ほどかかったが、それまでの出来事が嘘かのように、その後は一切何も起こらなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。