足音
次の晩は明かりをつけたまま寝ることにした。
昨日のことを思い出して悪寒が走り、思わず身震いをする。
布団を肩までしっかりと被って目を閉じる。
とはいえ恐怖心は拭いきれず、眠れる気がしなかった。
一度起き上がってテレビをつけ、家じゅうの電気も全てつけてから布団に戻った。
テレビの音を聞いているうちに、だんだん眠気がやってきて、そのまま静かに眠りに堕ちていった。
そして、私はこの日もしっかり意識を取り戻した。
今日は体がうつ伏せで、相変わらず指一本動かせない。
耳にはテレビの砂嵐の音が聞こえていた。
普通なら今どきの民放は深夜になっても番組をやっているし、砂嵐が映ることなんて滅多にない。
それなのに私の耳には、ザーというあの独特の音が聞こえている。
明かりがついていることには変わりがないようで、光が瞼に透けて視界はうっすらと白っぽい。
この時はまだ何の気配も感じられなかった。
息を潜めて再び眠ろうとするのだが、頭が冴えてしまってうまく寝付けない。
そうこうしているうちに部屋の入り口の方からまた
ドス……
ドス……
と足音が近づいてきた。
おそらく昨日と同じ。
私の横を通って頭の近くまで来ると、
ダンダンダンダンッ
ダンダンダンダンッ
と布団をたたくような大きな音がする。
足で踏み鳴らしているようなそれは、まるで私のことを起こそうとしているようだった。
心臓が激しく脈を打ち、全身からじっとりと気持ち悪い汗が噴き出した。
そして足音がピタッと止まる。
途端に首から上だけが軽くなった。
どうやら顔だけが動かせるようになったらしい。
思わず目を開けようとした次の瞬間、ズシンッ、と全身に何かがのしかかっているような、ひどい圧迫感に襲われた。
私は再び固く瞼を閉じた。
すると今まで瞼の裏で少しだけ明るかった視界が突然真っ暗になった。
顔にかかるわずかな風。
生温かく湿り気を帯び、フー、フー、と規則的で。
それはまるで何かの息遣いのようだった。
顔を、覗き込まれている。
光を遮られ、息遣いを感じるほどの、至近距離で。