ファーストコンタクト
急に、周りの空気がひんやりと冷たくなったような気がした。
その直後。
部屋の入口の方から、
ドス……
ドス……
とゆっくりと引きずるような重たい足音が聞こえてきた。
体は動かないから見たわけではないのに、何故かその気配だけで、私は直感的にこれが足音だと確信した。
次第にそれは近づいてきて、私の足元の方から横を通って頭の上を回り、反対を通ってまた足元の方へ。
私の周りをドシッ、ドシッ、と床を踏み鳴らしながら円を描くように回っていく。
足音に合わせてわずかに床が振動する。
それは次第にスピードを上げ、円の直径が小さくなる。
少しずつ私の体の方に近づいてきた。
先ほどまでは床から感じていた足音が、今ではもう自分が寝ているすぐ横の辺りから聞こえてくる。
何かが通過している風さえも感じることができた。
徐々にスピードが上がっていき、音も大きく、激しくなっていく。
それは普通では考えられないような速さで円を描き、私との距離はもうほとんどない。
踏まれる!と身構えた瞬間、足音がピタッと止まった。
静まり返る部屋の中。それまで感じていた気配が一瞬で消えた。
金縛りが解けて、ふっと体が楽になる。
緊張から解放されたせいか、体の自由が戻ると同時に激しい睡魔が襲ってきて、私のそのまま抵抗することもできずに眠りの世界へ引きずり込まれていった。
朝になって目が覚めて周りを見回してみても、いつもと何も変わらなかった。
昨晩寝た時と同じ状態の部屋がそこにある。
その不気味な出来事があまりにも鮮明に記憶に残っていて気味が悪かった。
しかし、出勤の時間も迫っていたので気を取り直して出かける支度を始めた。
あれは夢だったのだと自分に言い聞かせて。